日本共産党

2004年10月20日(水)「しんぶん赤旗」

主張

野村証券訴訟和解

差別是正は企業の社会的責任


 野村証券の女性社員ら十三人が同社を相手に訴えた男女差別訴訟が東京高裁で和解しました。

 和解内容は、在職する原告三人全員(残る十人は定年退職)を、一般職から総合職に転換させ課長代理に昇格させるというものです。会社は原告全員に和解金を支払います。

実質的差別なくせ

 一九九三年十二月の提訴以来十一年、一審の東京地裁判決(二〇〇二年二月)には盛り込まれなかった総合職への転換、昇格が実現したことは、大きな意味があります。

 裁判で争点となったのは、男性は「総合職」、女性は「一般職」とするコース別人事管理制度による男女差別の是正です。野村証券では、総合職の場合、部長などへの昇格の道が開かれますが、一般職では昇格は主任相当職までで、課長代理になることはできない仕組みです。

 こうしたコース別人事管理制度は、一九八六年の男女雇用機会均等法施行以降、大企業を中心に広がったのが特徴です。均等法制定により、男女別の賃金表など露骨な女性差別を行うことができなくなった企業が、実質的に差別を続けるために新たな方法としてつくりました。

 九九年には改正均等法が施行され、それまで是正が企業の努力義務だった募集・採用、配置・昇進の差別が禁止されました。しかし、野村証券はコース別人事を維持しました。

 東京地裁の判決は、改正均等法の施行以降も続けられたコース別人事管理制度について、均等法違反と認定しました。コース別人事の違法性に初めて司法のメスが入り、注目されました。同時に、改正均等法以前の差別については憲法違反としながらも労基法違反ではないとして総合職の地位を認めませんでした。

 今回の和解内容が、一九六三―六五年入社の原告の総合職への転換、課長代理への昇格を認めたことは、改正均等法以前の差別についても是正に踏み込んだもので、女性差別撤廃にむけ貴重な前進を刻みました。

 裁判所は、「国内外において男女差別の撤廃に向けた取り組みが進められている」ことを踏まえた和解であるとしています。

 日本政府は、女性にたいする雇用差別でたびたび国際的な批判を受けてきました。〇一年九月の国連・人権規約委員会の最終見解は、「多くの企業では、女性には専門的な仕事に昇進する機会がほとんどないという雇用管理が続いていることに懸念を表明する」とのべています。また、昨年八月には、国連女性差別撤廃委員会が、日本政府にたいし、コース別人事制度など実質的な女性差別をなくす法整備を勧告しています。

 和解を機に、政府が実質的な女性差別を是正するとりくみを強めるべきです。

海外からの批判

 野村証券グループは、この四月、役員をはじめすべての社員が順守すべき「倫理規程」をつくりました。そのなかで人権の尊重、性別などを理由とした差別やハラスメント(いやがらせ)をいっさい行わないこと、平等な雇用機会を確保し、健全で働きやすい職場環境を維持することを明示しました。欧州の投資適格評価会社が、野村証券の女性差別を理由にグループ企業を投資不適格にするなど海外からの批判も高まったことも影響しています。

 女性差別の是正は、企業の社会的責任が問われる問題でもあります。

 すべての企業が姿勢を正して、雇用の女性差別をなくすとりくみを本格的に進めなければなりません。



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