日本共産党

2004年10月18日(月)「しんぶん赤旗」

農業 農民

BSE 全頭検査緩和に不安の声

米国の圧力に屈し信頼崩すのか


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「アメリカのためBSE全頭検査見直しはおかしい」という井口洋介さん(右)と森島倫生さん(中)、息子の宏昌さん=14日、静岡県三ケ日町

 小泉内閣のBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の全頭検査体制緩和の方針にたいし、消費者とともに肉牛肥育農家から批判の声があがっています。肥育農家は「アメリカの圧力に屈して、せっかく築いた牛肉の信頼を崩すのか」と不安を隠しません。農家は全頭検査の継続を切実に望んでいます。

肉牛肥育農家が批判

 厚生労働省と農水省がBSE検査から外す諮問をした対象は二十カ月以下の牛です。この月齢の牛を食肉市場に出荷するのは、乳牛用ホルスタイン種のオス牛(乳オス)を肉牛として飼育する農家がほとんどです。

風評被害心配

 静岡県三ケ日町で乳オスを百頭あまり肥育する井口洋介さん(26)は全頭検査の緩和について、「検査する牛としない牛がいると間違いなく混乱する。国内でBSEが発生したときは牛肉もほかの作物も風評被害が出た」と心配します。同地域の飼育月齢は平均二十二カ月程度といいますが、二十カ月以下の出荷もあります。

 井口家の乳オス肥育は洋介さんで三代目となります。温州ミカンで有名な静岡県ですが、乳オス肥育も奨励されてきました。「国内のBSEの影響がようやくおさまりかけてきたのに、また大変になるのか」と井口さん。

 消費者の牛肉離れに不安をもつのは乳オス農家だけではありません。同県富士宮市で和牛とホルスタイン種の交雑種(F1)を千頭ほど肥育する竹川満康さん(50)は「いままで苦労して全頭検査をやってきたが、その意味がなくなる」と声を強めます。「アメリカは牛肉輸入解禁をいうけど、BSE検査もろくにしてないし、われわれのように牛の生年月日が識別できる耳標もなく二十カ月の根拠もない。そんなのが入ったら消費者が牛肉を信頼しなくなり、F1の牛も値段が下がってしまう」と心配します。

 同県浜北市の養豚農家で畜産農民全国協議会の会長を務める森島倫生さんは、「輸入ものを国産と混ぜる食肉偽装事件もあったし、あくまでBSE全頭検査の継続を求める」といいます。

 一方、牛肉の自給率は39%、豚肉は53%に落ちています。輸入依存の弊害があらわれている中、森島さんたちは国内畜産の振興にむけた研究・講演会を二十九日に浜北市で予定しています。「消費者に信頼される品質をつくることが必要だ。農民連ふるさとネットワークでの流通も視野にいれた体制を考えたい」と話しました。

アメリカでは

 同地域にはアメリカの牧場に二年間研修してきた畜産農家の後継者(25)がいます。そこで見たアメリカの牧場の姿を次のように話します。

 「牧場内には何万頭もいて生まれた月もわからない。病気で死にそうな牛は射殺して近くで埋める。処理場がないからしようがない。日本のように検査はしないからBSEにかかった牛がいても分からない」

 そして今回の緩和方針について「アメリカの圧力にあわせて、何か帳尻をあわせているようでおかしい。これからどうなるのか」と不安を語りました。

党静岡県委員会 全頭検査堅持農水省に要請

 日本共産党静岡県委員会はこのほど、県民要求をまとめ農水省と交渉しました。

 三方原用水の維持対策とともに、BSE対策として、「全頭検査を堅持し同等の検査を日本向けの牛肉輸出国に求めること。これらをクリアしない牛肉を輸入しないこと」を要請しています。



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