2004年9月19日(日)「しんぶん赤旗」
自民党旧橋本派の会計責任者を起訴。派閥幹部の刑事責任は問わず――。強制捜査から七カ月にわたった日本歯科医師連盟(日歯連)の事件にたいする東京地検特捜部の捜査は十八日、政界中枢に切り込むことなく事実上終結しました。二〇〇一年七月、橋本龍太郎元首相に小切手で渡された一億円のヤミ献金は一体、何のために、どう使われたのか…。国民が知りたい核心はなにひとつ解明されていません。
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〇一年七月二日、東京・赤坂の高級料亭「口悦」。日歯連側から一億円の小切手を受け取ったのは橋本元首相。青木幹雄参院議員会長と野中広務元幹事長も同席していました。
一億円授受の現場への同席について、青木氏は「記憶がない」、野中氏は否定していましたが、東京地検特捜部は捜査の結果、両氏が同席していたと判断しました。これにより、ウソをついていた疑惑が濃くなった両氏の責任はますます重大になってきました。
幹部三人が巨額の献金を受けた理由は何か。それもヤミのなかです。
橋本元首相から一億円小切手を渡された会計責任者の滝川俊行容疑者(55)は、現金に換金し、金庫に保管しました。
これを政治資金収支報告書に記載せず、政治資金規正法違反で起訴された滝川容疑者は、「自分一人の判断」で記載しなかったという幹部をかばう供述に終始しました。また、派閥の真の金の流れを示す帳簿も発見されませんでした。証拠隠しがおこなわれたとすればこれも重大です。
一億円ものカネの処理を幹部に相談することもなく、裏金に回すことは考えられず、捜査当局は、橋本元首相はじめ、野中、青木両氏ら同派幹部を徹底して追及したのかどうか、厳しく問われます。
滝川容疑者は、一億円の会計処理について自民党本部の事務局長に相談。事務局長は自民党の政治資金団体である国民政治協会名で領収書を出すとのべたことも報道されています。これは、疑惑の金を国民政治協会、自民党本部を経由させることで“洗浄する”「迂回(うかい)献金」をたくらんだことを意味しています。これを追及するためには、自民党本部への捜査が必要ですが、捜査当局はこれに手をつけませんでした。
なぜ、裏金処理したのか、一億円の使途・行方を徹底的に明らかにする必要があります。
自民党関係者は、本紙に「一億円の一部は年末のもち代にあてることになった」と語っています。ほかに、〇一年七月の参院選にあてたり、表に出せない使途もあったと指摘されています。
同派の政治資金収支報告書で、〇一年年末の「もち代」を受け取ったとされた議員は別表のとおりで、総額は約一億五千万円にのぼります。受け取ったのは、石破茂防衛庁長官、茂木敏充科学技術担当相はじめ旧橋本派の七十六人で、現職五十三人(衆院三十二人、参院二十一人)、前・元議員など二十三人。旧橋本派は一億円の使途を進んで明らかにする責任があります。