日本共産党

2004年8月23日(月)「しんぶん赤旗」

農業 農民

米価 昨年の4割安

早場米の値崩れ放置

千葉・野栄町 生産者が政府に怒り


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 関東地方の早場米地帯は、黄金色の稲穂が揺れています。しかし生産者の顔には不安と怒りがあります。八月出荷分の新米価格が昨年の四割安、一昨年の二割安の水準だからです。主力のコシヒカリは九月出荷ですが、農協が示した生産者仮渡し価格は、暴落予想から千葉、茨城両県とも低額となっています。「米づくりをやめさせる気か」。怒りは、値崩れを放置する政府に向けられています。

 千葉県の太平洋側の九十九里浜に近い野栄(のさか)町。同県の奨励品種で、八月中に出荷できる「ふさおとめ」の刈り取りが始まっています。

 ふさおとめの収穫に真っ最中の野栄町営農組合(及川重幸組合長)は、百戸近い農家から委託を受け、八十ヘクタールで稲作をします。忙しい調整作業のなかで及川組合長は「うちは、効率的な経営をやっているほうだが、今年の金額を三年もやられたら運営が維持できなくなる」と話します。

60キロ1万1千円

 ことしの金額とは、千葉県の全農(全国農協連合会)が提示した八月のふさおとめ買い取り価格です。一等の品質で六十キロ一万一千円。二等は一万円、三等八千八百円です。

 昨年は冷害に乗じた大手卸売会社などが買い占めたため、一等で一万八千円以上でした。「昨年は別だが、一昨年の一万五千円台と比べても低すぎる」と及川組合長は心配します。

 同営農組合は、兼業農家や野菜複合農家の計六人が運営します。野菜が主力という堀澄洋実さん(53)は「米だけで生活できない」といいます。政府がとなえる“規模拡大で競争力強化”の議論については、「農機具、肥料コストもかかるんだ。WTO交渉で関税を下げて八千円米価になるか分からないのに、規模拡大はできない」と語ります。

在庫抱える業者

 六条刈りのコンバインで、ふさおとめを刈り取る作業を分担する伊藤秀雄さん(53)は、兼業農家です。豊作の手ごたえは感じながら「この低米価では、農家が作業料金を払うのが負担となり、委託面積が減るのではないか」といい、“一万一千円の米価”を心配します。

 伊藤さんは、九日にあった農協の組合員懇談会に出席し、「なぜこの低価格なのか。全体の相場になってしまう」と質問しました。農協担当者は“業者が古い米の在庫を抱えていて新米の動きが少ない”と答えるだけでした。

 伊藤さんは、農民運動千葉県連合会の執行委員も務めます。機関紙「農民」を見ていて在庫を抱える業者の実情を知っていました。

 伊藤さんは「農水省が米の備蓄水準百万トンを守らないで、七、八年前の政府古米を業者の要求で安く売りすぎたからではないか。輸入米も流通している。『米を買い戻し、適正な米備蓄をせよ』と農協がなぜいえないのか。農業委員会の建議、議会の意見書も出せるはずだ」と訴えたといいます。

 「安全、安心、おいしい米は消費者のニーズだ。おいしい新米を食べて消費拡大にするのが本当だ」と伊藤さんは声を強めました。


国は買取りの緊急措置とれ

 流通事情に詳しい農民連米対策部・横山昭三事務局長の話

 政府が大手米卸会社の利益を奨励する自由流通方式によって、生産者も中小業者も苦しめられている。昨年の秋に大手グループが、冷害に乗じて思惑買いをし、国産米の品薄時期があったため、中小卸売会社は「お客さんに米を供給しないわけにはいかない」と高くても買い入れた。

 そこに農水省が七、八年前のエサに予定していた米を含め、百万トンを超える在庫を放出した。大手は、この政府米を利用して利益をあげた。「複数原料米」と表示すればどんな原料も自由に使えるブレンド米だ。消費がおちて、農協や業者は在庫を抱え、それが安売り競争になっている。

 国は適正備蓄を百万トンとしているが六十万トンを切っている。それなのにまだ九五年産を放出している。流通在庫を含め買い取る緊急措置をとらないと大変なことになる。



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