2004年8月17日(火)「しんぶん赤旗」
球界に衝撃が走った巨人・渡辺恒雄オーナーの辞任と球団トップの解任劇。13日の記者会見では今年のドラフトの目玉といわれた明治大学の一場靖弘投手に、巨人スカウトが約200万円を渡していた不正行為が明らかにされました。
これまでもうわさが絶えなかった「裏金」の存在。しかし球団幹部の解任という事態に発展したのは初めてのことです。
「裏金」の横行は、大学生以上のアマチュア選手が球団を選ぶことができる「逆指名」権をドラフトに導入したのがきっかけでした。
ドラフトは1965年、自由競争の激化から契約金を抑え「戦力の均衡」をはかることを目指して導入されました。それが93年の「逆指名」の導入で形がい化。事実上の自由競争となりました。
各球団は獲得に躍起になり、選手に「いくらでも使っていい」とクレジットカードを渡したり、周囲の関係者や親類にまで金を配ったという話も聞きました。契約金の中からスカウトや監督に相当額の「謝礼金」を渡していたことを告白した元選手もいます。
選手会側は以前から、最も勝率が低いチームから新人選択権を得られる完全ウエーバー制の導入を訴えてきました。「裏金」をなくすためにも、こうした提案を経営者側は検討すべきでしょう。
また、根来コミッショナーは過去にさかのぼっての調査には消極的な考えを示しています。しかし、いま問われているのはプロ側のモラルです。「裏金」の実態が明らかになった以上、この問題に厳しい態度で臨んでこそ、アマ球界との信頼関係も生まれるはずです。
一場投手は13日、悲痛な表情で記者会見に臨みました。「初めは断ったが、(握らせるような感じで)こう。もらった自分も悪かった」と話しました。しかし、本人の軽率さはあったとしても、現金を握らせ、入団交渉を有利に進めようとした巨人側に重い責任があるのは当然です。
今回の件で一場選手には今後も不正なイメージが付きまとうでしょう。その意味では彼もプロ野球の悪弊の被害者です。二度と彼のような選手を出さないためにも、「裏金」の実態を明らかにするとともに、ドラフト制度そのものの見直しが欠かせないでしょう。
栗原千鶴記者