日本共産党

2004年7月14日(水)「しんぶん赤旗」

「二大政党」に対抗する国民中心の新しい政治を

NHKスペシャル徹底討論 志位委員長の発言

(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は十二日夜、NHKスペシャル「徹底討論 有権者の審判にどうこたえるか」に出演し、各党代表と討論しました。出演はほかに、安倍晋三・自民党幹事長、岡田克也・民主党代表、神崎武法・公明党代表、福島瑞穂・社民党党首。司会は山本孝解説委員。


年金・増税・改憲問題日本共産党のがんばりどころ

選挙結果――残念な結果だが、期待の重みをかみしめてがんばりたい

 参院選の結果について、司会の山本氏から「二大政党の流れに抗し切れなかったのか」と問われ、志位氏は次のようにのべました。

 志位 選挙の全体は大変に残念な結果で、申し訳ない思いです。

 ただ、その難しい選挙のなかでも、比例代表で四百三十六万人、選挙区で五百五十二万人の方々が日本共産党に投じてくださった。この期待の重みをしっかりかみしめて、がんばっていきたいと思います。

 私たちは「二大政党」といわれる勢力が、年金の問題、消費税の値上げ、あるいは憲法九条の改定、こういう問題で一つの同じ流れだと。これに対抗する国民中心の新しい政治を起こしていくことが大事だと(訴えてきたが)、この訴えそのものは、私は正しかったと思っていますし、自信を持っています。

 ただ、かなり「自民か、民主か」という動きが強力に起こって、国民のみなさんの世論を大きく動かすにいたらなかった。

 しかし、選挙後の情勢を考えますと、憲法にしても消費税にしても、大争点になってきますから、ここからががんばりどころだと思っています。

「二大政党」――悪政競い合う流れへの批判は公党としての責任はたしたもの

 悪政を競い合う「二大政党」への批判と、野党共闘のありかたについて問われ、志位氏は次のようにのべました。

 志位 与党が無理筋のことを押し通してきたような場合に、国会でいろいろな共闘関係があるということは、今後もありうると思います。

 ただ、たとえば消費税の問題についていいますと、(党首討論で)どちらかというと岡田さん(民主党代表)のほうから、積極的に値上げの話が出て、小泉さん(首相)のほうがそれに応じるという場面が多かったですね。

 憲法の問題だと、小泉さんから九条改憲論が出て、岡田さんもそれに応じる。どちらも、そういう基本問題で、同じ流れだということは、私たちは率直に批判しました。

 やはり、「そういう流れの競い合いで、日本の未来をたくせるのだろうか」という批判をやったことは、公党として責任を果たしたと思います。

 今後は、この立場がいよいよ大事になってくる。とくに二〇〇七年まで、消費税と憲法の問題で、大きな動きが起こりますから、この立場に立って憲法を守る、消費税増税に反対するという立場を貫いてがんばっていきたいと思います。

年金問題――二つの「やむなし」論でなく、消費税にたよらず充実をはかる道を

 年金問題について、冒頭、視聴者の「ぜひ年金改革法の見直しをしてほしい。消費税増税はとんでもない」「年金では生活できない」などの声が紹介されました。

 与党側は、国民の厳しい審判を受けた年金改悪法について「国民に理解していただいた」(自民・安倍氏)と開き直りの発言。今後は、社会保障財源を口実に消費税増税に道を開いた自民、公明、民主の「三党合意」にもとづき、国会のなかに小委員会をつくって議論していきたいとのべました。

 民主党の岡田氏は、年金「一元化」、消費税増税について「(与党が)方向性を明確にしないと、議論しても結果は出ない」とのべ、年金財源を理由に消費税増税を迫りました。

 志位氏は次のようにのべました。

 志位 年金の問題についていいますと、(小泉政権に)ああいう厳しい結果が出たわけですから、審判を受けとめて、年金改悪法は白紙に戻す。それを、今後の議論をしていく出発点にすべきだとまずいいたいですね。

 そのうえで、今後いろいろな協議をしていく―国会でも、政党間でもおおいに協議していくことは当然重要だと思いますが、そのさい二つの立場があると思います。

 一つは、(自民、公明、民主の)「三党合意」に示された立場です。「三党合意」というのは、“高齢化だから負担は増やす、給付は減らすのはやむを得ないんだ”“消費税を上げるのはやむを得ないんだ”と。結局、二つの「やむなし」論に立っていると思います。

 私たちはそうではなくて、歳出の浪費の一掃、あるいは大企業に応分の負担を求めるということで、消費税に頼らず、(社会保障の)充実をはかれるという立場で、おおいに議論していきたいと思います。

社会保険庁――保険料流用禁止、サービス抜本改善など中身の改革を

 番組では、社会保険庁の改革が議論になり「社会保険庁と国税庁と一緒にして歳入庁にすべき」(岡田氏)、「民営化も含めて徹底的な組織改革をやるべき」(公明・神崎氏)などの主張が、与野党から出されました。

 志位氏は次のようにのべました。

 志位 私は、看板のかけ替えをやってみたり、他の省庁とくっつけてみたりしても、中身が変わらなければしょうがないと思います。

 二つの改革が必要だと思います。

 一つは、保険料の流用を禁止する。いま、みなさんの大事な保険料を、長官の交際費に使う、あるいは公用車の購入に使う、職員の宿舎の建設に使うということがやられています。

 これまで、国の一般会計からそういう事務費が出ていたのですが、一九九八年に施行された財政構造改革特別措置法で、そういう(流用の)仕組みをつくった。これを禁止する。

 もう一つは、国民にたいするサービスを抜本的に良くする。いま、社会保険事務所に行きますと、どの事務所でも半日ぐらい並ばせられている。こういう事態というのは異常で、スウェーデンでは「オレンジ・レター」というのが来まして、年に一回、どれだけの年金がもらえるのか、国民に情報サービスを、オレンジの封筒に入ったものをとどけるのです。そういう当たり前のことを、中身の改革をしっかりやらなければいけないと思います。

財源問題――消費税増税ではなく、「逆立ち」財政ただし、大企業に応分の負担を

 消費税増税問題で、与党側は、〇七年度をめどに「議論を煮詰めていく」(安倍氏)「社会保障制度全体の将来を考えると、消費税の引き上げは避けられない」(神崎氏)と表明。岡田氏は「(消費税増税を)街頭で話をすると、厳しいという声もあったが、少子高齢化の中で保険料方法はもたない」とのべ、消費税増税を競い合いました。

 「これからの少子高齢化を考えると、消費税を引き上げなくて済むのか」と問われ、志位氏は、次のようにのべました。

 志位 やはり、日本の税金の使い方と集め方が、ヨーロッパに比べてゆがんでいると思います。

 たとえば、使い方を見ますと、ヨーロッパでは社会保障に使っている税金が、公共事業の何倍も多い。フランスは三倍、ドイツは五倍です。

 ところが日本は逆です。この逆をただす本当の改革が必要です。

 もう一つ、集め方を見ますと、調べて驚いたんですが、十六年前には大企業などが払う法人税は(年間)二十八兆円入っていた。いまは十五兆円ですよ。不景気の影響もありますけれども、法人税を下げすぎた。

 いまヨーロッパの水準よりずっと低いですから、これを戻していく方向を考える。

 この二つをやりましたら、十八兆円ぐらいのお金がつくれます。このお金を、借金も返しながら、福祉にあてていくことによって、年金制度も削らないで充実させる道が開かれると提案しています。

 志位氏の発言にたいし、岡田氏は「歳出の改革は必要で、公共事業八兆円の三割カットをいっている。財投(財政投融資)で行われているものの財源は郵貯、簡保だから、年金に使ったら返せない」とのべました。

 志位氏は次のように反論しました。

 志位 私たちの政策を誤解されているんですけれど、私たちは年間四十兆円の公共事業費を、バブルの水準の前の二十五兆円ぐらいに戻していく必要がある(といっている)。四十兆円の全体に無駄があります。

 国、地方、財投でやっている公団(の公共事業)―たとえば東京湾横断道路などは財投ですが、全体の無駄を見直していく必要がありますが、財源のカウントをするときには、財投は入れていません。財投は当然、国民からお預かりしているお金ですから。それでも、私たちの考えでは、歳出の見直しで十兆円、歳入で八兆円はつくれるということです。

議員年金――国庫負担七割という特権を廃止する

 国会議員互助年金制度について、志位氏は次のようにのべました。

 志位 特権を廃止するというのが私たちの立場です。

 国民のみなさんが、どこに一番怒っているかというと、国庫の負担が七割も入っていることです。これが特権なんです。

 最初は、純然たる互助年金でスタートしたものが、だんだん国庫負担が増えて七割も入っている。これが、高い給付になっているわけです。この七割の国庫負担はゼロにし、特権はいっさい廃止するということをやるべきです。

 前の党首討論でその問題をいいましたら、小泉首相も「(国庫負担を)ゼロにするのはいいことだ」とたしかおっしゃったと思います。各党でまとめて、国庫負担はゼロにする。

 私たちは、純然たる互助年金でやるのは一つの方法だということで提案していますが、各党協議のなかで廃止ということになれば、それも一つの選択だと思います。

イラク復興――米軍はすみやかに撤退し、イラク国民の手での国づくりへの応援を

 イラク問題に議論が移り、自衛隊のイラク多国籍軍参加について安倍氏は「憲法が禁じているのは武力行使だ。自衛隊は人道復興支援をしている」などと強弁。志位氏は司会者から「民間やNGOの人たちではどの程度支援できるのか、という声もあるが」と問われて次のようにのべました。

 志位 結局、人道支援ということを考えた場合、いちばん有効な方法というのは、国連の組織、国際赤十字やNGO、ボランティア、こういう専門の方々がやるのが一番有効ですね。軍隊がやるというのは、非効率ですし、それ自体が危険を増大させます。有効なやり方に、どういうふうに切り替えていくかが大事だと思うんですよ。

 それを阻んでいるのが、米軍の駐留だと思います。結局、イラクの暫定政権に主権が返された格好になったわけですけれども、しかし、米軍は駐留している。あの無法な戦争をやって、一万人を殺した。ファルージャではたくさん虐殺した。刑務所のなかでは拷問をやった。あの米軍が駐留しているわけで、それが続く限り、イラクのみなさんは主権が返ってきたなという実感がもてないですね。

 ですから私は、やはり米軍が早く、速やかに撤退する、自衛隊も撤退する、その措置をとって、そのもとでイラクの国民が本当に国づくりをすすめるという態勢を、国際社会が支援をする。そういう状況になったらアラブの国も、治安維持で必要な部隊があれば提供しましょうといっているわけですから、そういう治安維持の問題などでも中立的な国が、あるいは戦争に反対した国が手助けするような形でイラクの国づくりの応援をすべきだと思います。

 これに関連して岡田氏は「直ちに米軍が撤退すべきだとは考えていない。治安維持の責任がある」とのべました。

日米問題――国連憲章より「日米同盟」を上におく、無法な「同盟」でいいのか

 「(小泉首相の)アメリカにたいする外交姿勢は評価できない」との視聴者の声も紹介されるなか、安倍氏は「日本の安全を守っているのは自衛隊と安保条約」と発言。志位氏は司会者から「日米安保条約の廃棄をいわれているが、その後の日米関係をどういうふうに考えていますか」と問われ次のようにこたえました。

 志位 私たちは、安保条約を廃棄した後、対等平等の立場での日米友好条約をそれに代えて結ぶということを提案しています。

 それから、いまの議論ですけれど、私たちの立場はそういう立場なんですけれど、いまの日米同盟というのは同じ同盟関係を結んでいるほかの国と比べても異常だと思うんですよ。フランス、ドイツ、こういう国はNATOで軍事同盟を結んでいるわけですけれども、国連のルールを破ったイラク戦争には反対するわけですね。つまり、国連憲章を一番上においてものを考えるわけですよ。

 ところが日本の場合、国連憲章よりも「日米同盟」の方を上においている。ですから、ああいう無法な侵略戦争ですよ、イラク戦争というのは、こういうものをやってもすぐに支持する。無法な「同盟」になってしまっている。やはり国連憲章という平和のルールを一番大事にする、そういうまともな関係にならなかったら、私は同盟国のなかでも本当に異常なアメリカいいなりのものだと思いますね。

イラク戦争――「大義」はことごとく崩れた、小泉・自公政権は歴史に対する責任の自覚を

 イラク戦争を支持した小泉首相の判断について議論になり、安倍氏は外交の基軸として日米同盟と国際協調とバランスをとっているとし、戦争を支持したのは国連決議一四四一もあり、「総合的判断」だとのべました。これに対して志位氏は次のようにのべました。

 志位 バランスは全然とっていないですね。さっきいったように、「日米同盟」というものを国連憲章の上におく態度です。いま安倍さんは、一四四一決議のことをいいましたけれど、あれは(国連の)査察を継続するという決議ですよ。それだけでは足りないから、それだけでは戦争できないからこそ、米英は新しい安保理決議を求めたわけです。それが受け入れられなかった、安保理で。受け入れられないまま、戦争に入ったわけですね。

 そのときの理由にしたのは、「大量破壊兵器を持っている」と。総理も断言したわけです。しかし、出てこなかったわけですよ。この責任をどうとるのか。そのあと、「フセイン政権からの解放だ」といい出したけれども、刑務所のなかでは拷問をやっている。解放じゃないじゃないかと。

 最後にいい出したのは「テロとのたたかいだ」と。しかし、テロの巣くつにしちゃったのは、あの戦争ですよ。

 ですから、「大義」はことごとく崩れたということに対する、歴史に対する責任をもっと自覚すべきですよ。

国民の期待にこたえて――増税と改憲ストップへ、共産党のがんばりどころ

 志位委員長は最後に、「共産党への期待はどこにあるか」と問われ、次のように答えました。

 志位 私たちはやはり、いまの平和とくらしを壊すことに対して、しっかりそれを食いとめる役割を果たしてほしいという願いがあると思います。

 その点で、二〇〇七年を節目に二つの重大な問題がやられようとしている。

 一つは消費税値上げの問題です。これは与野党からその声が上がっていますが、二〇〇七年が実施の一つの節目とされている。

 もう一つは憲法改定ですね。九条を取り払うという方向での動きがおこり、衆院憲法調査会の中山太郎会長は、二〇〇七年からもう憲法改定を実施するんだと断言されている。

 私はこの増税と改憲、この道は国民は望んでいないと思います。世論調査をみましてもどちらも六割が反対です。ですから私は、その国民の声にこたえて、この道をストップさせるという草の根からの運動をおおいに進めたいと思います。共産党のがんばりどころだと思っています。


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