日本共産党

2004年7月13日(火)「しんぶん赤旗」

義務教育費国庫負担制度

「三位一体改革」税源移譲で

38道県が減収の危機


表

 住んでいる地方によって教育水準に格差が出ないよう、公立小中学校の教職員給与の二分の一を国が負担する義務教育費国庫負担制度。小泉内閣の「三位一体改革」によってこの制度が廃止され、全額が税源移譲された場合、三十八道県では現行よりも収入が減り、財源不足に陥ることが、中央教育審議会(文科相の諮問機関)の作業部会の試算で、十二日までに明らかになりました。

 義務教育費国庫負担金は、都道府県ごとに、四十人学級を基準に教職員の定数を割り出し、それに一人当たりの給与(国基準)を掛け合わせた額の半額を、国が負担するものです。その額は、二〇〇三年度では全国で二兆八千億円にのぼります。小泉内閣はこの見直しを求めています。

 中教審の初等中等教育分科会教育行財政部会のもとに組織された教育条件整備に関する作業部会(主査・小川正人東京大学大学院教授)が、廃止の影響を試算しました。国庫負担金二兆八千億円が個人住民税として地方に税源移譲された場合、各都道府県への新たな配分額を算出。その結果、収入が増えるのは東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、静岡、大阪、兵庫、京都の九都府県だけ。沖縄、鹿児島など全国の80%にあたる三十八道県では、移譲後に得られる税収が、失われる現行国庫負担金を下回ることが明らかになりました。

 作業部会は、義務教育国庫負担金の一般財源化の問題として、(1)義務教育への国の責任放棄につながる(2)義務教育の無償制の維持に支障が出る(3)教職員の確保が困難になる(4)義務教育水準に地域間格差が生じる(5)義務教育水準が地方の財政状況の変動の影響を受け不安定化する(6)地方財政を圧迫し財政の硬直化を招く――の六点をあげ、「義務教育費国庫負担制度の根幹は今後とも堅持していく必要がある」と結論づけています。


予算編成困難の自治体も

地方交付3兆9千億円削減

 解説 小泉内閣が進める「三位一体改革」とは、(1)国庫補助負担金の廃止・縮減(2)地方交付税の縮小(3)地方への税源移譲(国に入っている税収を地方に移すこと)――の三つを一体に行うというものです。しかし、〇四年度予算では、地方への交付があわせて三兆九千億円も削られた一方、増えた税源はわずか四千五百億円で、予算編成が困難になった自治体も生まれています。

 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太方針)2004」では、国庫補助負担金のうち約三兆円を税源移譲することを打ち出しました。二・八兆円にのぼる義務教育費国庫負担金は、その格好の標的となっています。

 中教審の作業部会の調査によると、最も財源が減少する沖縄県では、国庫負担金の44%と半分以下に減らされます。「足りなくなる分は国からの地方交付税交付金によって穴埋めされる」という主張もありますが、地方交付税交付金は都道府県の住民生活にかかわるすべての財政需要に対する交付であり、義務教育費として確保される保障はありません。また、「三位一体改革」において地方交付税は縮小される方向にあり、義務教育費も縮小される可能性が高いと考えられます。

 坂井希記者


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