日本共産党

2004年7月2日(金)「しんぶん赤旗」

欧州では日本とは大違い 「定年後に幸せな生活」

安心の老後支える最低保障年金

税金の使い方は社会保障中心


 欧州では退職後の生活に不安を持っていると答えた人は20%に満たず、60%の人々が退職後の年金生活に信頼を寄せています(欧州連合=EU=が二〇〇二年末に実施した世論調査)。誰もが安心できる老後を送れる年金制度。それを支えているのが最低保障年金制度です。



フランス

最低月額7万9千円

グラフ

 フランスでは拠出制老齢年金の最低年金額が設定され、年額六千四百二ユーロ(約八十四万円)、月額約七万円が保障されています。無拠出型の保障もあり、生涯まったく年金保険料を支払ったことがないか、支払っても必要月数に満たない場合、六十五歳以上の無収入者には単身者で月五百八十八ユーロ(約七万九千円)、夫婦で千五十三ユーロ(約十四万円)を「老齢最低年金」として国から受け取ることができます。


イギリス

低所得者に生活保障

 英国では一九九七年に発足した労働党政権が貧困者への援助に力を入れています。十分な所得のない年金生活者に最低限の生活を保障する「年金クレジット法」が〇三年から実施されています。

 六十歳以上の高齢者を対象に、基準額は〇四年で週百五ポンド(約二万二千円)、夫婦で百六十・九五ポンド(約三万三千円)。貯蓄額や財産などで支給制限がありますが、年金やその他の所得を合わせてもこの基準に達しない場合、差額が支給されます。雇用年金省によると、全国で二百四十五万世帯が対象となっています。年金とは違い、保険料の支払いは不要です。

 さらに住宅費の加算、重度の障害を持つ人、要介護者への加算が行われます。


イタリア

無所得者に一律支給

写真

雨の後の公園を散歩するベルリンの老夫婦(片岡正明撮影)

 イタリアにも最低保障年金に相当する制度があります。六十五歳以上の無所得者が対象で、国から一律、月額三百十八ユーロ(約四万二千円)が支給され、七十歳になると五百三十六ユーロ(約七万円)に増額されます。夫婦では倍額になります。六十五歳以上の高齢者の6・2%に適用されています。また一般の年金でも最低額補給制度があります。


ドイツ

最低基準は月11万円

 二〇〇一年に労働組合の要求で、高齢者と障害者の最低の文化的生存権を保障するための「基礎生活保障法」が成立し、昨年から実施されています。

 対象者は六十五歳以上の高齢者と十八歳以上の障害者。その基準額は月八百五十ユーロ(約十一万円)。年金などの収入がこの額に達しない場合、差額が国から支給される制度です。日本の生活保護にあたる社会援助金とは違って、子どもなど家族の所得にかかわりなく支給されるのが特徴です。

 「高齢者が貧困の危険に陥ることがなく、公共、社会、文化的な生活に参加することが可能な、品位ある生活水準を享受できるよう保障する」(二〇〇一年十二月のEU首脳会議で決定された年金改革十一共通目標の第一項目)ことが欧州の年金制度の基本です。

 欧州でこうした制度を実施できるのは、税金の使い道が社会保障中心になっているからです。

仏の社会保障研究者の見方

 フランスの著名な社会保障研究者アンリ・アッツフェルド・ナンシー大学名誉教授はフランスの社会保障の基本的考え方を次のように説明しています。(『総合社会福祉研究』2004年3月号=河合克義・明治学院大学教授のインタビュー)。


 「70年代、80年代になると、定年退職すると非常に幸せな高齢期の生活を迎えられるという状況になりました。

 数日前、私が公園を散歩し、ベンチに座っていたとき、となりのある老人が自分の生涯を語り始めました。戦争中のこと、戦後の生活のこと、そして彼は私を見つめて『定年は本当にいいものですね』と幸せそうに話していました。

 かつて定年というのは地獄というか、年をとってどのように生活していったらいいか分からないといったものでした。それが今では定年というものがいいものであると言えるようになった。こういうところにフランスの社会保障の大きな成功があります」

 「フランスの場合は共通の基本的法律があって、これは大企業に勤める人であれ中小企業に勤める人であれ同じように適用されます。社会保障というのは大企業、中小企業、農民等に関係なくすべての人に最低限の保障をするものです」


EUの年金共通目標

 加盟国は年金制度がその社会的な目的を満たす機能を保障しなければならない。

 1、高齢者が貧困の恐れにさらされず、その国の経済的な福祉を共有し、公共、社会、文化的な生活に参加することが可能な品位のある生活水準を享受できるよう保障する。

 2、すべて個人が退職後にその生活水準を維持できる年金資格が供与される。

 3、同一世代内、異世代間の連帯を促進する。

 <欧州連合(EU)首脳会議(二〇〇一年十二月)で合意した年金制度改革の「共通目標」から>



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