日本共産党

2004年6月7日(月)「しんぶん赤旗」

ゆう Press

日本からインドネシアへ 迷惑ダム援助

私の税金で人を不幸にしたくない


 「コトパン・サポーターズ京都」(愛称・コト★古都)は、京都にある若者たちのグループ。インドネシアのスマトラ島にある巨大ダム、コトパンジャン・ダムの撤去を求める裁判の支援をしています。このダムは、日本の政府が途上国に援助するお金、ODA(政府開発援助)でつくったものです。現地の人とふれあい、活動する若者たちの思いを聞きました。和田肇記者

 「コト★古都」の本格的な活動は、昨年九月からはじまりました。中心メンバーは六―八人ほどです。メンバーの一人、稲荷明古(あきこ)さん(21)=京都精華大=がODA問題を知ったのは二〇〇二年六月。「自分たちの税金が人を不幸にすることにつながっているなんて」と衝撃を受けたといいます。

 「十九歳のときで物事をよく知らなかったんです。先進国と途上国の間のお金の流れとか。自分たちの生活の裏側に悲惨な人たちの生活があるとか」

 稲荷さんは、日本のNGO(非政府組織)などがつくった「コトパンジャン・ダム被害者住民を支援する会」を知り、支援活動に加わりました。

 「自分が生きていくのに誰かを踏みつけにしてたら胸を張れない。ODA裁判の支援が、お金の使い方を変えるきっかけにもなると思う」

★現地住民の講演

 〇二年九月の第一次提訴に先立ち、現地の住民代表三人が日本のNGOに招かれました。東京、大阪など各都市で現地の窮状を訴えるためです。

 「アタック京大グループ」(国際的NGO)に所属している山沖直樹さん(23)=京都大学=は、昨年京都大学で行われた勉強会でコトパンジャン・ダムのことを知りました。同グループは、来日した現地住民を招き講演会を企画。京都を案内した山沖さんは、現地住民が講演した内容にショックを受けました。

 ダム建設のため、約五千世帯二万三千人の人々が強制的に移住。移住先は水の便が悪く、生活の糧である農業が営めず多くの人が出稼ぎしています。子どもたちは学校に行くこともできず、補償金さえ満足に払われていませんでした。

 「ODAが援助どころか、企業の利益のために使われ、住民の生活を苦しめている。親しくなった人たちの話だったから、距離がより近くなったんです」

 「コト★古都」は支援のために署名活動をしています。末岡友行さん(21)=京都大学=は学生に署名を訴えて「考える時間をつくるのが重要」といいます。ふだん、じっくり考える余裕のない人に「ふーん」と思ってもらえるだけでも前進です。一方、「ひどいけど、こういう事例ばっかりじゃないんじゃない?」「なんで日本が訴えられなあかんの?」などの疑問も出されるといいます。

 「一気に全部知るのは無理。でも冊子を読んでもらい何か考えてもらう。その地道な積み重ねが自発的に行動する人を増やすことになると思う」

★仲間がいるから

 末岡さんは「“一緒にやってる感”がいい」といいます。仲間がいるから活動が続けられる――。メンバー全員、同じ意見でした。


コトパンジャン・ダム

 1996年に完成。高さ58メートル、堤の長さ258メートルの水力発電ダムで、水没面積は124平方キロ。発電量は当初計画の15%です。日本のコンサルタント会社の東電設計が計画。使われたODAは約312億円。ダム本体事業への230億円の貸し付けのうち、東電設計などに33億円が流れました。

 建設の結果、貯水池内の樹木が腐食して水質が悪化、魚が大量死。水没地から追い出されたスマトラゾウ、スマトラトラ、バク、クマなどはえさがなく、ほとんどが餓死したといわれています。(写真は「コト★古都」提供)


どんな裁判?

 原告住民は現在、8396人で、トラやバクなどの動物・自然環境も原告。日本政府、国際協力銀行(JBIC)、東電設計などに、ダム撤去と原状回復、損害賠償を求めています。

 援助を受けた国の住民が、援助国の政府・機関を日本の法廷で初めて訴えた裁判。また援助国の側の責任を司法の場で裁く初のODA裁判です。国はダム建設で生じる問題は一義的には相手国政府が責任を負うもので日本は資金を貸しただけ、という立場。8回目の口頭弁論は7月2日です。


コト★古都の活動

 「多くの人に気軽に参加してほしい」とメーリングリストに登録した人にイベントなどの情報を送っています。東京地裁で口頭弁論があるときは、東京まで傍聴に行きました。お金がないので深夜バスに乗っての旅です。ほかにも原告を招いての講演会、写真展、ビデオ上映、紙芝居、物品販売、署名集め、NGO(非政府組織)・政党・議員・団体へ協力の申し入れなど多彩な活動を続けてきました。今後パンフレットを作り、普及していく計画です。

「コト★古都」ホームページ

http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ka1484zu/


お悩み Hunter

就職後も親と暮らす自立できてないのか

 Qぼくは就職して二年目になります。給料はまあまあ。親は「家を出て自活しなさい」と言うのですが、部屋代や食事、洗濯などのことを考えると、もう少し親に甘えてもいいかな? しかし、「オレはまだ自立してない」とも思うのですが…。(24歳、会社員。大阪市)

「共立」の関係こそ大切

 A何を持って「自立」というのか? 難しいテーマですね。あなたの相談を読んで、「果たして私自身も本当に自立しているといえるのだろうか?」と真剣に考えてしまいました。

 自分自身のことを顧みると、私生活においては、炊事、洗濯、その他もろもろのことは、妻に頼りっぱなしになっており、恥ずかしながら、日用品がどこに納められているのかさえ知りません。また、仕事の面でも、同僚の教師や生徒たちに頼ることが多々あります。

 自立には経済的側面と精神的側面の二つがあると思いますが、私は、前者はできているとしても、後者については自信がないというのが正直なところです。

 ただ、精神的な部分では自分自身の昔とはすこし違うところもあります。以前は「誰かが何とかしてくれる」という安易さが私の中にいつもありました。しかし今は「一緒に力を合わせて何とかしよう」と絶えず思っているということです。そしてそれこそが、最も大切なことであると思えてなりません。人ひとりの力などたかが知れている。だからこそ、完璧な「自立」を目指すより、まず互いに感謝し、尊敬し合える関係での「共立」をめざしてみてはいかがでしょうか。もうあなたはおとなです。親はあなたという存在に感謝し、尊敬してくれているでしょうか。まずそこをめざして今の場所で頑張ってみてはいかがでしょうか?


 ヤンキー先生 義家 弘介さん 明治学院大学法学部卒。99年から母校北星学園余市高校教諭。テレビドラマになった「ヤンキー母校に帰る」の原作者。


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