日本共産党

2004年6月5日(土)「しんぶん赤旗」

参院選にのぞむ日本共産党の各分野の政策

(2)


4、安全な食料の安定供給のために、農林漁業を再生し、食料自給率の向上をはかる

 国民の食を支えるべき国内の農漁業は衰退が続き、日本は食料の6割を海外に依存するという先進国でも他に例のない状況におちいったままです。それにもかかわらず政府は、「食料・農業・農村基本法」にもとづく食料自給率の引き上げ目標(2010年度までに45%)の実現すら先送りし、目標を見直すことも検討しています。

 小泉内閣は農政「改革」の名で、農産物輸入をいっそう拡大し、輸入品との競争に耐えられない農業経営の切り捨てや、農業予算の大幅な削減に乗り出しています。その中心の米「改革」は、米のいっそうの輸入拡大を前提にして、国の安定供給責任を放棄し、米の生産や流通を全面的に市場原理にゆだねようというもので、「備蓄米」の買い入れ価格制度を廃止し、わずかに残っていた米価の下支えもなくしてしまいました。さらに、米価下落対策や転作などの補助金を大幅に削減し、廃止さえもねらっています。そのうえ、現在の170万稲作農家のうち、所得保障の対象を8万程度の大規模農家・法人(北海道10ヘクタール以上、都府県4ヘクタール以上)に限定しようとしています。これによって、圧倒的多数の中小農家は、農政の支援からしめだされてしまいます。これは、世界的に食料不足が心配されているもとで、食料・農産物価格と需給安定に対する国の責任を放棄するものです。

 日本共産党は農業を基幹的な生産部門に位置づけ、国内生産を多様に発展させる方向へ農政を転換させ、食料自給率を早期に50%台に回復することをめざします。農林漁業の再生は、地域経済振興のうえでも重要です。

価格・所得保障を農業予算の主役にし、家族経営や共同事業をささえる

 価格・所得保障が農業予算に占める割合は、英独仏では6〜7割でまさに農業予算の主役です。ところが日本では、価格・所得保障は3割弱にすぎず、それすら大幅に減らそうとしています。

 政府の米の需給と価格を安定させる役割をまもり、不要な米の輸入を削減するとともに、米「改革」を中止し、政府の100%拠出による不足払い制度を創設して、米の品質の向上を図りながらコストにみあう生産者価格(60キロあたり平均1万8000円程度)に近づけます。麦・大豆・食肉など主な農産物にも価格保障が必要です。

 3兆円を超える農林水産予算の半分を占める公共事業費を、真に必要な事業に厳選する、無数の公益法人への補助金・委託金を見なおすなど、ムダをはぶき農業予算を改革すれば、1兆円程度の価格・所得保障予算は十分確保できます。

 大規模経営だけでなく、複合経営、兼業など地域や農家の条件に応じた家族経営や、農業生産法人などの共同事業を支援します。耕作放棄地が広がらないよう、集落などでの耕作の受委託や生産組織への支援を強化します。地域の農産物と結びついた食品加工の振興を図ります。中山間地域の直接支払い制度を改善・拡充するとともに、営農による国土・環境の保全など「農業の多面的機能」を評価して、平場地域も対象に加えます。安易な株式会社による農地取得は、農地の荒廃や転用につながる恐れがあり、反対します。

食料主権を回復し、アジア諸国との多様な農業の共存と連携をめざす

 アメリカなどの輸出大国と多国籍企業の利益が拡大する一方で、日本など輸入国はもとより各国の家族経営は深刻な打撃を受けています。国内農業の維持、食料の安定確保はどの国にとっても大事な権利です。WTO交渉で、日本の米を自由化の対象から外すなど農業協定を改定させ、食料主権を回復することを強く主張します。

 二国間交渉による自由貿易協定(FTA)は、お互いの条件をよく考慮してすすめるなら、経済関係を深めることができます。しかし日本の財界がもとめ小泉内閣がすすめるFTAや経済連携協定(EPA)の交渉では、財界に都合のよい貿易や投資の「自由化」の見返りに、農産物の輸入をいっそう拡大し日本の農業を犠牲にしようとしています。どこの国であれ、国内の農業の維持・発展を考慮するのは当然です。アジア諸国との間で、「多様な農業の共存を前提とした経済連携の強化や農業協力の発展」こそめざすべきです。

食の安全を確保するため、チェック体制を強化する

 膨大な輸入食品のうち、港や空港で安全検査をされるのは、7%にすぎません。輸入農産物のチェック体制の強化と原産国表示の徹底を図ります。遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証を義務づけます。牛肉輸入では、アメリカ産をはじめ輸入牛の全頭検査、危険部位である脊髄(せきずい)など神経組織の完全な除去、トレーサビリティー(生産・流通の経歴が追跡できる仕組み)が不可欠です。BSEの病原体の発見でノーベル賞を受賞したプルシナー米カリフォルニア大教授も「日本が行っているような全頭検査のみが、牛肉の安全性を確保し、消費者の信頼を回復する」と発言しています。危険部位を含む製品の輸入は基本的に禁止すべきです。

 鳥インフルエンザに感染もしくはその疑いがある鳥が出た場合には、知事への報告・届け出義務を所有者に課すべきです。鳥インフルエンザの感染の拡大を防止するための処分や出荷の停止にたいして、被害の補償を充実させます。平飼いや有精卵など手間をかけた養鶏についても、実態に合った補償をすべきです。人間と家畜の共通の感染症に対応するため、行政や法制度の一元化をはかるなど抜本的な改革を目指します。

 農薬や化学肥料へ過度に依存した生産・供給体制を改め、有機農業など生態系と調和した生産、「地産地消」や「スローフード」への取り組み、食文化の継承・発展を支援します。

林業と漁業の振興策を強化する

 山が荒れ、林業・木材産業が成り立たなくて仕事がないという山村の声は切実です。林業を活性化させ、森林の多面的な機能を発揮させるためにも、緊急を要する除伐、間伐を治山・治水事業の一環として位置づけて国が責任をもってすすめます。木材価格の暴落は、民有林の多くの経営を立ち行かなくさせています。造林経費控除を経費全額に引き上げるなど、価格暴落のもとでの林業の税負担を軽減します。地元の公共事業での国産木材・木製品の利用を拡大し、民間でも国産材の利用への助成を実施するなど需要の拡大につとめます。林業労働者の確保と林業技術の継承を重視します。木質バイオマスによる間伐材や木くずの燃料化、バイオマス発電の推進など山村地域での新たな事業を促進します。

 日本は世界の水産物貿易の4分の1を輸入する世界最大の輸入国です。食用水産物の自給率は50%近くまで低下し、乱獲による資源の枯渇も問題になっています。漁業経営の安定のためにも、また乱獲を防いで資源を管理するためにも、政府の責任で価格安定対策を強化し、休漁・減船補償などを実施するとともに、後継者の育成のために青年漁業者支援制度を創設します。7割が公共事業という突出した公共事業偏重の水産予算を改めれば、財源はあります。諫早干拓や、中部国際空港、新たな米軍基地建設などの大規模な開発によって、干潟・藻場の破壊や埋め立て、海砂の採取、河川の汚濁などによる漁場の荒廃や破壊は深刻です。こうした開発をやめ漁場の保全や改善に計画的に取り組むべきです。有明海の豊かな漁場を取り戻すためにも、ただちに水門を開けての調査を実施すべきです。

5、ゆきづまった原発依存を転換し、自然エネルギーの開発・利用を本格的に促進する

 エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤であるにもかかわらず、日本のエネルギー自給率はわずか7・6%(2002年度)にすぎません。地球の温暖化防止のためにも、エネルギー政策は要です。

 世界は、脱原発の方向に向かっているのに、政府がすすめるエネルギー政策は、あいかわらず原発の新増設にたよっているため、地球温暖化ガスの削減に不可欠な自然エネルギーの開発やエネルギー利用の見直しは不十分なままです。

 安全優先のエネルギー体制と自給率の引き上げを重視して、エネルギー政策の根本的な転換をはかります。

プルサーマル計画の中止、既存原発の総点検と計画的縮小をすすめる

 原発という未確立な技術にたよったエネルギー政策は、深刻なゆきづまりに直面しています。損傷隠しによる東電の全原発停止と昨年の夏場の電力供給への不安、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)に関する国の設置許可無効の判決、東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発にたいする地震研究者の警告などが示すように、政府の原発拡大政策は無謀です。政府は地球温暖化防止という名目で、2010年までに9〜12基の原子力発電所の運転を新たに開始する計画でしたが、住民の反対運動のたかまりによって、電力会社は2010年度までに運転を開始する予定があるのは5基だけだとしており、政府の計画はすでに破綻しています。安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとらせます。原発の危険性を増幅するだけのプルサーマル計画の中止、核燃料サイクル施設の総点検と計画の中止をはかり、既存原発の計画的縮小をすすめます。

風力や水力、太陽光・熱、地熱、小水力、バイオマスなど自然エネルギーの開発を促進する

 エネルギーの自給率を引き上げ、また地球温暖化対策を進めるためには、エネルギー効率の徹底した向上とともに、環境に配慮した自然エネルギー源の開発・活用に本格的に取り組む必要があります。風力や太陽光・熱、地熱、小水力、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。地域では、こうして得られる電気やガスを販売することで新たな収入が生まれ、地域経済の活性化にも貢献します。また、事業の成果や副産物を地元に還元し、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出す可能性をもっています。

 イギリスは長期的な目標として二酸化炭素を1990年比で2050年に60%削減する目標を打ち出し(「エネルギー白書」)、またドイツの再生可能エネルギー法は、2030年までに電力の50%を、さらに長期には自然エネルギー源で100%の電力供給を達成することを目指しています。

 自然エネルギーの普及のためにも、以下のような取り組みをすすめます。

 「新エネ利用特別措置法」を改正する……自然エネルギーの普及に取り組んでいる人たちの声を反映させ、意欲の出る制度に改善して、自然エネルギーの取り組みを活性化させます。

 そのためには、導入目標を大幅に引き上げることが必要です。「新エネ利用特別措置法」では電力会社に、新エネルギーによる一定量の発電を義務付けていますが、その目標は、2010年でわずか1・35%にすぎません。同年までに、ドイツは10・3%、イギリスは9・3%、EU全体では12・5%を、アメリカのカリフォルニア州では20%を目標としています。日本でも、発電量の10%程度をまかなう目標に引き上げるべきです。

 固定価格による電力の買い取りも必要です。固定価格での買い取りは、デンマークやドイツ、スペインで実施されており、自然エネルギー普及に大きな効果があります。ところが、日本では価格競争にまかされ、自然エネルギーを利用した発電事業に取り組もうとしても、採算の見通しがたたず、事業化の障害になっています。初期の投資がかさむだけに、採算面で長期的な見通しがたってこそ、普及の意欲を引き出すことができます。また、廃棄物発電は、林業の廃材や加工くずなどに限定し、廃プラスチックなどを大量に燃やすやり方は対象外にすることが必要です。

 日本の現状にあった研究開発を促進する……自然エネルギーの利用を普及するには、まだまだ多くの技術開発が必要です。欧米で先行している風力発電でも、温帯モンスーン地域に位置する日本では風の強さや向きの変化が激しく、台風や強力な落雷にそなえた強度を要するなど、日本の自然の特徴に合わせた技術開発が求められています。小型水力発電でも効率のよい発電機の開発が続けられています。また小規模・分散型という特徴をもつ自然エネルギーを利用して発電した電力を、既存の電力供給システムに組み込んでいく系統連携のやり方なども、研究や施設整備を必要としています。

 エネルギー予算のゆがみをただして財源を確保する……設備の設置への補助を手厚くし、発電量に応じた助成の創設を求めます。原子力関係予算(2004年度)は4718億円にものぼる一方、新エネルギー関連予算(1613億円)はその3割程度にすぎません。原子力のためにその8割以上(予算ベースで3200億円)を注ぎ込んでいる電源開発促進税や、石油関係諸税などの税制を見直し、CO2排出量に応じた環境税の導入によって、自然エネルギー促進のための財源の充実を図ります。

6、21世紀の持続可能な経済・社会のために、環境問題に真剣に取り組む

 持続可能な経済・社会のために、温暖化ガス削減を実現する対策など地球環境の保全とともに、国内の大気汚染対策など環境保全に真剣に取り組む必要があります。

 将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守る取り組みを強化します。各地で起きている環境汚染の問題解決には、少なくとも(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3)住民参加、(4)徹底した情報公開――の視点が欠かせません。その立場で、つぎのような取り組みを強めます。

地球温暖化対策での国際的公約を果たす

 今年は、政府の温暖化防止大綱が示した第一ステップ(2002〜2004年)の最終年にあたり、大綱の見直しが予定されています。イギリスは長期的な目標として二酸化炭素を1990年比で2050年に60%削減する目標を打ち出し、ドイツは2020年までに45%を、デンマークは2030年までに50%削減するという目標を掲げています。日本でも長期的な見通しを持った計画が必要です。

 日本の温暖化ガス排出は、その94%がエネルギーの消費にともなうものです。また部門別でみると8割が企業・公共部門であり、家庭関連は2割です。アメリカ、ドイツ、イギリスと比較すると、日本は家庭ではずば抜けてエネルギー効率がよいのに、従来、効率がよいとされていた製造業が優位を失いつつあります。京都議定書にもとづく温暖化ガスの削減目標(90年比で6%減)の達成は、日本が世界にたいしておこなった国際的約束ですが、2001年度の総排出量は逆に5・2%増加しており、2012年までに11%削減しなければなりません。ところが、産業界が「自主的な取り組みの尊重」と言い張り、地球温暖化防止大綱の産業部門の7%削減を約束していないとしているために、目標の達成が危ぶまれています。EU諸国で削減のため導入されている政府と産業界との協定制度を日本でも導入し、地球環境の分野でも企業の社会的責任を果たすべきです。

大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任を果たさせる

 自動車排ガスと健康被害との因果関係を、あいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。公害健康被害補償法(公健法)で認定されていなかった被害者の健康被害が認められた以上、国は、1988年以降、被害者の認定を打ち切った姿勢を転換し、新たな措置も含めてすべての被害者の早期・迅速な救済にあたるべきです。また判決が、健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化を進めたことなど、自動車メーカーの対応に社会的責任上、問題があったと指摘したことは重要です。使用中のディーゼル車の汚染物質除去装置の実用化など、メーカーが社会的責任を果たすよう求めます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化します。

ごみの“焼却中心主義”からの脱却を図り、ごみを出さないシステムを製造段階から確立する

 大型焼却炉によるごみの“焼却中心主義”からの脱却を図ります。ごみの発生を設計・生産段階から削減するために、OECDも勧告している「拡大生産者責任制度」にたって、自治体と住民に負担を押しつける現行のリサイクルシステムを抜本的に見直すことが必要です。政府がダイオキシン対策として導入を急いだ処理システムでの爆発事故やトラブルに、自治体は安全性と費用負担で頭を痛めています。国は安易に促進する姿勢を転換し、責任をもって改善と補償をメーカーに指導すべきです。

 廃棄物の不法投棄に歯止めをかけるため、徹底した立ち入り検査を実施し、不法投棄のルートと関与者の解明、違反者はもちろん排出者の責任による撤去を実施させます。

化学物質の有害性にかんする研究と規制を強める

 各地の工場跡地や茨城県神栖町の旧日本軍の毒ガスが原因とみられる井戸水のヒ素汚染など有害物質による環境汚染がひろがっています。住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度など、早急な調査と対策が必要です。

 化学物質による環境汚染が引き起こすとされているアトピーや化学物質過敏症、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックハウスやシックスクールなどへの健康被害の調査と安全対策を強化し、地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。

公共事業などの大型開発による環境破壊をやめさせ、生態系や住環境をまもる

 川辺川ダムや圏央道など公共事業のあり方について、司法から厳しい批判がなされています。人類生存の基盤である生態系や住環境をまもるため、環境破壊を引き起こすような大規模開発をやめさせるとともに、環境アセスメント制度を改善し、住民参加と情報公開、代替案の検討を義務づけ、事後評価を実施させます。さらに欧米で導入されている「政策の計画段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の実施を求めます。諫早干拓などをただちに中止し、自然の維持と回復の取り組みを盛り込んだ干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp