日本共産党

2004年4月9日(金)「しんぶん赤旗」

卑劣な拘束許せない

身を案じる家族、関係者


 米英を中心とする占領軍への反発が強まり、サマワの自衛隊宿営地を標的としたとみられる迫撃弾事件の起きたばかりのイラクで、邦人三人が拘束されたという情報が八日夜飛び込んできました。犯人グループは中東のテレビ局に三人を映したビデオテープを送り付けました。「三日以内に自衛隊を撤退させないと殺害する」。被害者は、高校を卒業したばかりの若者や女性のボランティアとジャーナリスト。「平和を願っているだけなのに」「民間人を人質にするなんて許せない」「政府はイラクに平和をもたらす努力を」――家族や関係者は不安と心配をつのらせています。


写真
今年1月中旬、北海道庁で劣化ウラン弾の被害について記者会見する今井紀明さん(左)

今井 紀明さん(18歳)

劣化ウラン弾の危険訴え

 イラクで拘束された日本人三人のうち、今井紀明さんは、一九八五年生まれの十八歳。先月、高校を卒業。昨年十二月、「NO!!小型核兵器(DU)サッポロ・プロジェクト」を設立。高校生ライターとして、平和問題などについて各種雑誌に執筆し、劣化ウラン弾の危険性を訴えてきました。

 昨年六月に、札幌市で開かれた写真家・森住卓さんの写真展の様子をインターネット新聞でリポート。記事の末尾は、「私たち若い世代が行動しなければならないと感じた。『最近の若者は…』とやゆされる私たちは、少しずつ動き始めているのだ」としています。

 紀明さんの兄、洋介さん(23)は「とにかく心配です。弟は四日に日本をたってイラクに行ったばかり。高遠さんとも知り合いで、バグダッドに向かう途中で『朝日』のカメラマンとも知り合ったといっていた。七月にはイギリスの大学にいって平和学を勉強したいといっていたのに…。劣化ウラン弾にも興味があって、その反対運動も自分で立ち上げていた。とにかく無事を祈るばかりです」と話していました。

 今井さんは、劣化ウラン弾の被害実態を絵本にして、多くの人にアピールしようと計画。イラクを訪問し、劣化ウラン弾が原因とみられる病気とたたかう子どもたちの思いに耳を傾けたいと意欲を示していました。

 今井さんが通っていた北海道江別市の立命館慶祥高校の蔭山成利教諭(38)は「いろいろ社会的な問題に興味を持ち、活発に活動する生徒だった」と話します。この日夜、たまたま学校に残っていたところ、「イラクで拘束」というニュースでマスコミから問い合わせが相次ぎ、驚いたといいます。「とても心配。情報を収集している」とかつての教え子の身を案じていました。

高遠 菜穂子さん(34歳)

ボランティア活動で

 高遠菜穂子さんは、一九七〇年生まれ。千歳市出身。主宰する「クラブウィーをつくる会」インターネットのホームページによると、「イラク支援ボランティア」として、イラクで「一人の人間としての行動」を行っているといいます。一年ほど前からイラクで活動、いったん帰国し、北海道各地で現地の状況を報告。今月初めからまたイラクに入っていました。

 千歳市の実家では弟が取材に対し「何も情報がありません。私たちもテレビで知って驚いています。外務省からの連絡をまっているところです」と語りました。

 高遠さんは知人の作家のホームページ上にイラクでのボランティア活動の様子を生き生きと報告していました。「古いアパートですが、子どもたちにシャワーを浴びせたり食事をさせたりするためには十分。マザーテレサの施設の隣の隣です」という書き出しで始まるメールは今年一月中旬のものでした。

 その中で、「ゆうべはわたしのアパートの周りの住民もかなり冷たい視線でしたが、けさは住民から“素晴らしいわ”とお褒めの言葉をちょうだいいたしました。冷たい視線が多い中、本気で協力してくれるイラク人もたくさん出てきました」と悪戦苦闘しながらも、前向きに活動に励む様子を報告していました。

郡山 総一郎さん(32歳)

フリーカメラマン

 『週刊朝日』の記者証を所持していた郡山総一郎さん(32)は、宮崎県佐土原町出身。東京・築地の朝日新聞本社には、報道陣がつめかけました。

 郡山さんは、フリーのカメラマンで、イラク、パキスタンや東南アジアなどを取材。二〇〇一年のアメリカでの「9・11同時テロ」後、パキスタン周辺に入って取材活動しました。フセイン政権の崩壊後は、バグダッド入り。『週刊朝日』(昨年5月16日号)で、復興に動き始めている街と市民の様子を写真と文でリポートしています。

 同日夜、佐土原町の郡山さんの家族は、電話で「何も話すことはありません。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」と話しました。

 東京・中央区の朝日新聞本社では八日午後十一時前から記者会見を始めました。

 冒頭、これまでの朝日と郡山さんの経緯を説明した文書を配布。それによると、八日午後六時半ごろ、カタールのアルジャジーラのムスタファと名乗る男性から電話があり、「郡山という男がイラクで拘束されている映像がある」と告げたといいます。

 今回のイラク入りについては朝日は「要請したものではない」としました。しかし、郡山さんは三月二十九日に週刊朝日編集部に顔を見せ、「近くイラクに行く。いい写真が撮れれば送ります」とあいさつしたといいます。


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