日本共産党

2004年2月14日(土)「しんぶん赤旗」

学問の自由を破壊

都立4大学の強引な廃止

石原都政の「新大学」計画

大学との協議投げ捨て 「再検討を」の声広がる


 石原東京都政が都立の四つの大学(都立大学、科学技術大学、保健科学大学、都立短期大学)を廃止し、「新大学」の設置をごり押ししている問題が大きなヤマ場を迎えています。全国の大学教員・研究者、法律家など幅広い団体や個人から「学問・研究の自由を破壊する」「あまりにも強引すぎる」と、都に再検討を求める運動が大きく広がっています。(東京都・川井 亮記者)

 東京都は来年四月に新大学を開学するとして、〇四年度予算案で開学準備経費八億円を計上。「設置者権限」をふりかざして、しゃにむに準備を進めています。

 今月六日には新大学の名称を「首都大学東京」とすると発表し、学長予定者に岩手県立大学の西沢潤一学長をあてる方針を決めました。十日には、四大学の教員に、新大学への就任の最終の意思確認を求める「意思確認書」を十六日までに提出するよう強要しました。

 ところが、この都大学管理本部の文書は、就任の意思確認は文部科学省の「強い意見」だとした記述が事実と異なるもので、文部科学省も「誤解を招く」と修正を求めていたことが判明。都が虚偽の説明までして“踏み絵”を踏ませようとする、異常な振る舞いが明らかになりました。

大学変質狙う

 新大学は都市教養、都市環境、システムデザイン、保健福祉の四学部(仮称)と全寮制の「東京塾」を設置するもの。都立大の人文、法、経済、理、工各学部を解体して設ける都市教養学部については、大手予備校の河合塾に大学と学問の根幹部分となる学部全体と各コースの教育課程の設計を委託しました。

 新大学を設立するにあたって、都は昨年七月まで、四大学の代表者を加えた新大学準備委員会で協議し、六学部と大学院、法科大学院などを内容とする新大学の骨格をつくっていました。

 ところが昨年八月一日、石原慎太郎知事は記者会見で突如、この合意をくつがえし、四大学を廃止して新大学を設置する構想を発表しました。二年以上にわたる大学側との協議を強権的に投げ捨てたのです。

 大学は本来、学問と真理を探求する場です。行政当局が強引に介入して、当事者である大学の意思を無視して大学の解体・再編を行うことは、教育研究の自主性を踏みにじり、学問の発展を妨げるものです。

 日本共産党の清水ひで子都議は昨年十二月都議会の文書質問で、新大学構想が独立採算制の方向を打ち出したことについて、「狙いは都の負担軽減にあることは間違いない」と指摘。大学を企業の利潤追求に奉仕させるなど、石原知事のかねてからの主張に忠実に沿ったものと追及しました。本来力を入れるべき基礎研究から外部資金の多い研究にシフトせざるを得なくなるなど、「大学の変質、後退を招きかねない危険を持つ」と批判しました。

 石原都政の一方的な介入に対し、今年一月二十一日には、四大学の過半数の教員四百三十二人が連名で、一方的な「新大学」準備を見直し、大学関係者を含む開かれた協議を求める声明を発表。二十七日には都立大学の意思決定機関である評議会が大学の責任と権限をふまえた協議を都に要望しました。

28日に集会

 同大学の学生自治会が行った学生アンケートでは、九割近くが都の「改革」案に反対。院生会、学科・クラスの有志が相次いで計画の撤回、学生の声の反映を求める声明を出しました。

 全国の大学教員、研究者千三百人が一月二十六日、都の構想は「学問の自由を破壊」し「日本社会における学術振興を妨害」するものだとして、河村建夫文部科学相に都への適切な指導を求める要望書を提出しました。

 大学関係者や都民でつくる「都立の大学を考える都民の会」は二十八日(土)午後三時半から、東京・霞が関の日比谷公会堂で、新大学の問題点など石原都政の教育「改革」の問題点を問う集会を開きます。


「都立の大学を考える都民の会」の連絡先は080(3435)0548(2月末まで)。

 インターネットURLはhttp://www.geocities.co.jp/CollegeLife−Lounge/3113/index.html


大学の自主性を無視

 「都立の大学を考える都民の会」呼びかけ人の一人、金子ハルオ・東京都立大学名誉教授 都の新大学計画は、やり方の点でも内容の点でも、大学の自治と自主性を踏みにじる多くの問題を含んでいます。

 都は昨夏、大学と二年半もかけて協議し、詰めてきた改革案を一方的に廃棄し、都の権限で四大学を廃止し、別の大学を新設する計画を問答無用で押しつけてきました。教育・研究の主体である教員の声を無視するこんなやり方では、立派な大学ができるとは思えません。

 新大学計画では既存の学部はすべて廃止し、都市教養学部など四学部を設置するとしていますが、カリキュラムなどその内容の作成は河合塾に委託され、大学院の設置は先延ばしとなり、長年積み上げてきた教育・研究の蓄積が引き継がれないのではと危ぐされます。

 理事会による教員の任免、教員の任期制など教員の自由で自主的な研究をかえって委縮させるのではないかと心配です。


研究の質 低下させる

 全国の研究者千3百人連名の文科相あて要望書を呼びかけた鬼界彰夫・筑波大学助教授 東京都の新大学計画は、研究・教育機関としての大学の理念を大きく逸脱し、単に都立大のみでなく、日本の学術研究全体に計り知れない損害をもたらすものです。

 予備校による高校生のアンケートに基づいて新設学部のカリキュラムを作るやり方に象徴されているように、石原構想では、本来長い期間をかけて磨かれていく学術研究が、短期的な社会的需要に左右されることになり、研究の質そのものの低下につながります。

 石原知事は大学人を「保身」などと罵倒(ばとう)していますが、今回の計画はむしろ知事自身が学術研究と大学の責務に、あまりにも無知であることを示すものです。


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