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2021年9月23日(木)

コロナ危機を乗り越え、暮らしに安心と希望を――日本共産党の新経済提言

2021年9月22日 日本共産党

 日本共産党の志位和夫委員長が22日の記者会見で発表した「コロナ危機を乗り越え、暮らしに安心と希望を――日本共産党の新経済提言」の全文は次のとおりです。

弱肉強食の新自由主義を終わらせ、命と暮らしを大切にする政治への転換を

 コロナ危機は、日本社会のさまざまな問題を浮き彫りにしています。非正規雇用で働く人たちが真っ先に仕事を奪われました。まともな補償もせずに“自粛”を押しつける政治が、中小企業、個人事業主、文化・芸術、イベント関係者を追い詰めました。「小さな政府」の名で公的部門が縮小させられ、医療や保健所が弱体化し、医療崩壊が現実になりました。自民党・公明党の政権が長年とってきた弱肉強食と自己責任おしつけの新自由主義の政治がもたらした人災にほかなりません。

 その一方で、「規制緩和」や優遇税制で富裕層や大企業の目先の利益追求は擁護され、一部の富裕層、巨大企業は、コロナ危機でも利益を増やし、巨額の資産をため込んでいます。

 国民に冷たく、富裕層にあたたかい、中小企業に厳しく、大企業は守る――新自由主義の政治は、もう終わりにして、命と暮らしを何よりも大切にする政治に切り替えましょう。

1、医療、介護、保育、障害者福祉など、ケアをささえる政治に

 自公政権は、40年にわたって社会保障削減の政治を続け、この20年間は社会保障予算の「自然増」を、毎年、数値目標を決めて削減する政治を続けてきました。こんなことをすれば、医療や公衆衛生が脆弱(ぜいじゃく)になるのも当然です。医療崩壊と保健所の機能マヒを再び起こしてはならない――これはコロナ危機の痛苦の経験を踏まえた政治の重い責任です。

■自公政権のもとで、日本の医療・公衆衛生に何が起きたのか

●医師数の抑制、病床削減、病院の統廃合を長期間、系統的に続けた

 “医者が増えると医療費が膨張する”と、自公政権が医師数の抑制を続けた結果、日本の医師数は人口1000人当たり2・4人、OECD(経済協力開発機構)加盟36カ国中32位、加盟国の平均(人口1000人当たり3・4人)に14万人少ない水準です。

 病院数は、1990年のピーク時から1796も減りました。感染症病床は半分程度に減らされ、ICU(集中治療室)の病床数も、日本はイタリアの半分以下、ドイツの6分の1です。

●全国の保健所は半分に

 自公政権は、「行革だ」といって、全国の保健所を852カ所(1992年度)から469カ所(2020年度)へと半分に減らしました。

●感染症予算は、アメリカの72分の1、中国の35分の1

 「平時の感染症関連予算」は、米国5300億円、中国2600億円、イギリス283億円に対し、日本は74億円にすぎません。国立感染症研究所など研究機関の予算・人員を削減し続けてきた結果です。

■“コロナ後”も医療削減――医療崩壊を反省しない自公政権

●公立・公的病院の削減・統廃合を推進

 政府は、高度急性期病床、急性期病床を20万床減らすことを目標に、全国の400以上もの公立・公的病院をリストアップして削減・統廃合を推進し、そのために消費税増税分を財源にした「病院削減補助金」までつくりました。

●75歳以上の医療費の窓口負担を来年10月から値上げ

●政府の「骨太方針2021」には、新興感染症の脅威に対応するための医療体制の拡充も、保健所を増やす対策もない

日本共産党は「医療・公衆衛生 再生・強化プログラム」を提案します

 長期にわたって壊されてきた医療と公衆衛生を立て直すには、中長期の展望をもって戦略的に基盤を強化していくことが必要です。日本共産党は、壊された基盤を立て直すために「医療・公衆衛生 再生・強化プログラム」を提案します。

○感染症病床、救急・救命体制への国の予算を2倍にするとともに、ICU病床への支援を新設して2倍にします。

 平時から感染症対応の基盤を強化し、流行時には緊急対応・臨時的な増強ができるようにします。

――感染症病床を2倍にするために、国の補助金(現行130億円)を2倍にします。

――救急・救命体制への国の補助金を2倍(現行250億円)にし、救急用の病床を増強します。

――新しい国の補助制度(1000億円規模)をつくり、ICU病床(HCU〈高度治療室〉を含む)を2倍にします(新規1床当たり500万円の補助を2万床分。ICUは診療報酬で運営しているが多くが赤字)。

○公立・公的病院の削減・統廃合を中止します。

○医師の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続します。

 政府は、医師削減のために医学部定員を82年、97年の2回にわたって削減しました。その後、「医師不足」が大きな社会問題になり、2008年から「臨時措置」として1割程度増員しました。ところが自公政権は、この増員分を削減した上に、もっと削減するとしています。医師削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続します。自公政権が強行した、病院の勤務医に「過労死ラインの2倍」の時間外労働をおしつける法改悪を撤回し、医師の長時間・過密労働の解消をすすめます。

○来年の診療報酬改定で、看護師の配置基準と労働条件の改善、新感染症に対応した診療報酬体系などを抜本的に充実させます。

○保健所予算を2倍にして、保健所数も、職員数も大きく増やします。

 現行の保健所費は、総額2100億円です。これと同額の予算を国が支出して保健所体制を増強します。

○国立感染症研究所・地方衛生研究所の予算を拡充し、研究予算を10倍にします。

 国立感染研の基礎的研究費20億円を10倍の200億円に増やし、平時の感染症予算を280億円に増額します。

 都道府県の地方衛生研究所への国の補助金をつくり、予算規模を2倍にします(現行1カ所平均4億円を国の補助金を300億円程度投入して2倍化する)。

○感染症に対応する、政府から独立した科学者の専門機関(感染症科学者会議・仮称)を新たにつくります。

 自公政権のコロナ対応は、科学無視、専門家の意見の軽視という致命的な欠陥があります。政府から独立した科学者の専門機関をつくり、感染症についての科学的知見を、政府を通さずに、直接、国会と国民に明らかにできるようにします。

 必要な国の予算額は、総額で4000億円程度です。国の予算全体から見れば大きな額ではありません。例えば、安倍・菅政権の9年間で軍事費を6000億円増やしました。米国製兵器の“爆買い”などの結果ですが、国民の命を守るための予算、感染症流行という「有事」への備えとして、この程度の予算を医療・公衆衛生の再生・強化に充てるのは十分可能です。

ケア労働の待遇改善、社会保障の拡充を行います

○国が基準を定めている、介護・保育などケア労働の待遇を国の責任で改善します。

 介護職員や保育士の平均給与は全産業平均より「月10万円低い」など劣悪な労働条件は長らく放置され、現場は慢性的な人手不足に苦しんでいます。介護・福祉・保育職員の賃金を国の責任で引き上げ、配置基準の見直し、雇用の正規化、長時間労働の是正など、労働条件を改善します。

○命を守り、暮らしを支える社会保障を拡充します。

――すべての年金の土台である基礎年金を、今後20年にわたって減らし続けるマクロ経済スライドなど年金削減の仕組みを撤廃し、「減らない年金、頼れる年金」を実現します。そのために、高額所得者優遇の保険料を見直し1兆円規模で年金財政の収入を増やす、巨額の年金積立金を年金給付に活用する、賃上げと正社員化をすすめて保険料収入と加入者を増やす、という改革をすすめます。

――介護保険料・利用料の減免、保険給付の拡充、特養ホームなど介護施設の増設により、必要な介護が受けられる制度にします。

――障害者福祉・医療の「応益負担」を撤廃し、無料にします。

――公費を1兆円投入し、「人頭税」のような「均等割」「平等割」をなくして国民健康保険料(税)を抜本的に引き下げます。

生活に困っている人への支援を抜本的に強化します

○コロナ危機で収入が減った人、生活に困っている人に一律10万円の特別給付金を数兆円規模で支給します。

○生活保護を「生活保障制度」に改め、必要な人がすべて利用できる制度に改革します。

――自公政権が行った生活保護費削減・生活扶助費の15%カットを緊急に復元し、支給水準を生存権保障にふさわしく引き上げていきます。

――保護申請の門前払いや扶養照会をやめます。自動車保有禁止、わずかな預貯金など「資産」を理由に、保護利用を拒む運用を改めます。

――名称も「生活保障制度」に改め、権利性を明確にし、生存権保障にふさわしい制度に改革します。

○食と住居への支援をすすめます。

――「住居確保給付金」「生活福祉資金特例貸し付け」の支援の延長・拡大、返済困難な場合は「貸し付け」を給付に切り替えるなど、緊急の支援を強化します。「住まいは人権」の立場で、家賃補助や公的住宅をはじめ住居へのセーフティーネットをつくり、困窮者が住居を失わないための施策を拡充します。

――フードバンク、子ども食堂など民間の食料支援の取り組みに、助成や場所の提供など公的な支援を行います。

2、働く人の「使い捨て」をやめさせ、8時間働けばふつうに暮らせる社会に

■コロナ危機で、非正規雇用の労働者、とくに女性と若者に大きな犠牲

●コロナ前と比べて、非正規労働者は月平均で92万人が減少し、その58万人は女性。

●「休業者」は、昨年4月には306万人、5月には432万人も増加。その6割以上が非正規。女性も6割以上。(「休業者」…月の就労がゼロ~10日以下 総務省労働力調査)

 非正規労働者は「調整弁」にされたうえに、失業や休業に対するセーフティーネットもきわめて貧弱です。とりわけシフト制労働者は、仕事が減っても「休業」だと企業が認めないために、雇用調整助成金や休業支援金の対象からも外され、無収入となる労働者が続出しました。政府が「雇用によらない働き方」の名のもとで拡大してきたフリーランスやインターネットを介して単発・短期の仕事を請け負うギグワーカーには労働法制が及ばず、権利ゼロの働き方が強いられています。

 非正規雇用の拡大は、正社員も含めた労働者全体の賃金・労働条件を引き下げる大きな圧力になっています。とくに、長時間労働は、健康にとって重大であるだけでなく、子育てや介護などの家族的責任を果たせないなど、働く女性の非正規化とジェンダー不平等社会の大きな要因にもなっています。

○非正規から正社員への流れをつくるとともに、格差を是正する均等待遇をすすめます。

――シフト制労働者の権利を守るために、労働契約に賃金の最低保障額や休業手当の支給を明記するなどのルールをつくります。ギグワークなどの無権利な働かせ方を広げる規制緩和に反対し、権利保護のルールをつくります。

――労働者派遣法を抜本改正し、派遣は一時的・臨時的なものに限定し常用雇用の代替を防止する、正社員との均等待遇など、派遣労働者の権利を守る派遣労働者保護法をつくります。

――パート・有期雇用労働者均等待遇法の制定など、正社員との均等待遇をはかるとともに、解雇・雇い止めを規制します。

○中小企業への賃上げ支援を抜本的に強化しながら、最低賃金を引き上げます。

――最低賃金を時給1500円に引き上げ、全国一律最賃制を確立します。

――社会保険料の減免や人件費補助など、中小企業への賃上げ支援を抜本的に強化します。

○長時間労働をなくし、労働者の権利が守られる社会にします。

――異常な長時間労働を解消し、過労死を根絶します。残業時間の上限を「週15時間、月45時間、年360時間」とし、連続11時間の休息時間(勤務間インターバル制度)を確保します。長時間労働を是正し、男女ともに家族的責任を果たし、家族と過ごす時間、自分のために使える時間を持てる、本物の働き方改革をすすめます。

――高度プロフェッショナル制度を廃止し、企画業務型の廃止など裁量労働制を抜本的に見直します。

――退職強要を許さず、解雇規制法をつくります。

――職場におけるパワハラ、セクハラをなくす労働行政を強化するとともに、ILO(国際労働機関)のハラスメント禁止条約を批准します。ハラスメント禁止を法律に明記します。

3、お金の心配なく、学び、子育てできる社会に

 コロナ危機は、学生や子どもたちの学び、教育にも深刻な打撃となりました。教育に“お金をかけない政治”を根本から改める必要があります。

■日本の教育への公的支出は先進国最低水準

 OECD加盟国で比較可能な38カ国中37位。(2020年9月 OECD発表)

○高い学費の値下げと本格的な給付奨学金制度をつくり、誰もがお金の心配なく学べるようにします。

 「バイトがなくなりお金がない」「1日1食」など、多くの学生が食事にも事欠くような困窮に陥りました。高い学費と劣悪な奨学金制度のために、アルバイトをしないと学生生活が成り立たない現状を、コロナ危機が直撃したのです。

 ヨーロッパの国々は、学費無償か、ごく少額であり、日本の高学費は世界でも異常です。教育を受ける権利は経済的事由で制約されてはなりません。政府は「受益者負担」と言いますが、高等教育は、学んだ学生が社会の各分野の働き手になるわけで、社会全体の力として必要不可欠なものであり、無償化こそめざすべき社会のあり方です。

――大学・短大・専門学校の学費をすみやかに半額に引き下げ、高等教育の無償化をめざします。

――入学金制度をなくします。高額の入学金を払わせ、入学しなくても返金しないというのは合理性がありません。

――「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金を75万人(現在の奨学金利用者の半数)が利用できる制度をつくり、拡充していきます。すべての奨学金を無利子にします。奨学金返済が困難になった場合の減免制度をつくります。

――学生支援緊急給付金の継続的な実施、休学や卒業延期した学生の学費補助など、コロナ対応の支援を抜本的に強化します。

○子育て、教育の負担を軽減し、家計を応援するとともに、貧困から子どもを守り教育の機会を保障します。

――私立高校の負担の軽減をすすめ、高校教育の無償化をすすめます。

――「義務教育は無償」を定めた憲法26条にそくして、学校給食の無償化をすすめます。義務教育で残されている教育費負担をなくします。

――認可保育所を30万人分増設し、保育水準を確保しながら待機児童を解消します。

――児童手当の18歳までの支給、児童扶養手当、就学援助の額と対象の拡大など、子育て世帯に向けた継続的・恒常的な現金給付を拡充します。

4、コロナ危機で困難に直面している中小企業、農林水産業を支援し、地域経済を立て直す

■まともな補償がないなかでコロナ倒産・廃業が急増

●中小企業の休廃業・解散は、2020年には5万件と14・6%増。

●「廃業を検討」……飲食店、宿泊業は3割以上、中小企業全体でも12社に1社にあたる8%にのぼる。

●コロナ前と比べて売上高は、中小企業の67・8%で減少。宿泊業や飲食業では4割超の企業が「半減以下」。(東京商工リサーチ調べ)

 “緊急事態宣言は4回、持続化給付金は1回限り”……この背景には、コロナ危機であろうが「競争に敗れた者は市場から出ていけ」という、「競争と自己責任」の新自由主義の政治があります。政府の「骨太の方針2021」では、「生産性向上等に取り組む中小企業・小規模事業者に対し思い切った支援を行う」と、中小企業を上から選別し、多くの中小企業は見捨てる方針を明確にしています。今年10月から登録が開始されるインボイス(適格請求書)によって、小さな事業者やフリーランスで働く人たちが取引や仕事から排除される危険が大きく、ここでも「淘汰(とうた)」がすすもうとしています。

 中小企業を淘汰する政治から、中小企業が、コロナ危機を乗り越え、希望がもてる政治への転換をすすめます。

○まともな補償をすみやかに行い、コロナ危機の中で必死にがんばっている中小企業・小規模事業者を応援する政治に切り替えます。

――持続化給付金や家賃支援給付金を再度支給するとともに、コロナ危機を乗り越えるまで継続的に支給します。

――協力金、支援金などの拡充と迅速化を行います。「書類不備」というだけで説明もせずに請求を「追い返す」審査を改め、事業者の立場にたった、ていねいな対応と相談体制を確立します。

――コロナ対応の緊急借り入れで積みあがった中小企業の債務をどう解決するかが大きな問題になっており、コロナ対応借入分の軽減・免除する仕組みをつくります。

――雇用調整助成金特例措置をコロナ危機を乗り越えるまで継続します。

――文化・芸術関係者に対して、新たなイベントへの支援にとどめず、「場と担い手」への支援を行うとともに、国費を数千億円単位で支出して「文化芸術復興創造基金」を抜本的に強化します。

○多様な中小企業の維持・発展を底支えし、地域経済の疲弊に歯止めをかけます。

――中小企業予算を1兆円規模に増額します。

――中小企業憲章と小規模企業振興基本法を生かし、「競争と淘汰」から、すべての中小企業・小規模企業を対象にする中小企業政策に転換します。

――大企業の中小企業に対する優越的地位の乱用をやめさせ、公正な取引を保障するルールをつくります。

――コンビニ本部による「もうけ本位」の“搾取システム”を改め、24時間営業の見直し、ドミナント(集中的)出店の規制など、コンビニオーナーの営業と健康を守ります。

米価の大暴落を止め、農林水産業を守る

 コロナ危機は米価大暴落や畜産、野菜、漁業など農林水産業に大きな打撃となっています。

 今年の米価は、仮払金や買い取り価格が2~4割も下落しています。自公政権は、農業にも自己責任を押し付け、2018年には、政府が生産調整から「撤退」して農業者任せにしてしまいました。そこへコロナ危機による需要減が直撃して、米価の大暴落が起きたのです。

――所得補償・価格保障など家族経営をはじめ農業経営を支援するとともに、無制限な輸入に歯止めをかけ、過去最低まで低下した食料自給率を引き上げます。

――緊急の米価大暴落対策として、政府による米の緊急買い入れを実施し、過剰在庫を市場から隔離します。政府が買い入れた米は、生活困窮者、学生、子ども食堂などに供給します。国内市場を圧迫している海外産のミニマムアクセス米の買い入れを中止します。

――コロナ危機での木材輸送の世界的な減少や米中の需要急増による「ウッドショック」(木材の不足・価格高騰)が深刻です。国が国内流通状況を調査し、便乗値上げ・買い占めを監視します。入荷の遅れなどの被害は、コロナ危機の被害として支援します。輸入材依存を是正し、木材自給率を高めるために、国内材の公的事業での使用拡大、民間の利用拡大への支援など、林業の再生に力を入れます。

――魚価の低迷や、海水温の上昇、海流の変化などによる不漁で経営困難に陥っている漁業者への魚価の補償、経営支援を行います。

5、税金の不公平をただす――消費税減税、富裕層・大企業への優遇をなくす

■コロナ危機でも税収が2・4兆円も増えた不思議……“コロナ直前”の消費税増税で

●2020年度の税収――2・4兆円増。消費税10%増税の結果、大不況でも消費税収だけで3・2兆円も増収。国民は“コロナ危機と増税”のダブルパンチ。

●大企業の税の実質負担率は中小企業より低い。所得1億円を超えると税負担率が下がる。

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 自公政権が2019年10月に強行した消費税増税は、コロナ危機で苦闘する中小企業者にも、仕事がなく生活が苦しい非正規労働者にも、重くのしかかりました。

 一方、大企業は、コロナ危機でも内部留保を7兆円も増やしました(2020年度)が、大企業の税負担は、さまざまな税制の優遇によって、実質負担率10%という中小企業よりはるかに低くなっています。株価の上昇で大株主などの富裕層は、資産を倍に増やしました。ところが、株の値上がりの利益への税率は20%という、欧米の富裕層への税率に比べても低い税率になっているため、株の利益が所得の大半を占める年間所得1億円超の富裕層では、所得が増えるほど税負担率が下がるという逆立ち現象が起きています。

 コロナ危機のもとでも浮き彫りになった、不公平税制をただします。

○消費税率を5%に引き下げ、インボイス制度の導入を中止します。

――消費税率を自公政権が2度にわたって引き上げる前の5%に引き下げます。

――コロナ危機で納税困難に陥っている事業者に消費税を減免します。

――政府が導入を予定しているインボイス制度は、零細業者やフリーランスに納税義務を広げ、負担と格差をさらに拡大するものであり、ただちに中止します。

○大企業と富裕層に応分の負担を求めます。

――租税特別措置や連結納税など、大企業優遇税制を廃止・縮小します。

――法人税率を、中小企業を除いて安倍政権以前の28%に戻します。

――富裕層の株取引への税率を欧米並みの水準に引き上げます。株の配当や譲渡益が分離課税とされ、住民税を含めても20%と国際的にも低い税率になっている現状を改めます。譲渡所得には、高額部分には欧米なみの30%の税率を適用します。株式配当には、少額の場合を除いて分離課税を認めず、総合累進課税を義務づけます。これによって富裕層の配当所得には所得税・住民税の最高税率が適用されます。

――所得税・住民税の最高税率を現行の55%から65%に引き上げます。

――富裕層の資産に毎年低率で課税する富裕税や、為替取引額に応じて低率の課税を行うなど、新たな税制を創設します。

――厚生年金や健康保険、介護保険など、サラリーマンの社会保険料は標準報酬に上限があるため、企業役員など高所得者の負担が低くなっており、上限を引き上げるなど応能負担の改革を行います。

応能負担の税制改革で、暮らし・社会保障の財源は確保できます

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 消費税が導入されてから33年間に、消費税の税収は448兆円ですが、ほぼ同じ時期に法人3税は323兆円、所得税・住民税は286兆円も減りました。「社会保障のため」といって行われた消費税の増税は、実際には、法人税や所得税の減収の穴埋めに消えたのです。

 大企業や富裕層に応分の負担を求める税制改革で「税収の穴」をふさぎ、社会保障や暮らしの予算を確保します。同時に、歳出のムダも聖域なく削減します。

6、気候危機打開と一体に、災害に強い社会をつくる

 気候危機が災害の危険を増大させ、豪雨や土砂災害など災害の頻度と規模が増大しています。日本共産党は、「気候危機を打開する2030戦略」を発表しています。気候危機打開と一体に、災害に備え、被災者を救済し、安全と安心を保障することは、政治の大きな責任です。

――被災者生活再建支援法の支援金を300万円から500万円に引き上げるとともに、対象を「一部損壊」まで広げます。

――乱開発を規制し、盛り土の崩壊やがけ崩れ、堤防決壊、液状化被害などの危険箇所の点検と対策を実施します。必要な防災施設を整備し、災害に強いまちづくりをすすめます。

――ダムに偏重した治水対策を転換し、河道や堤防の整備、浸水時に対応した土地利用計画の樹立など、流域住民の参加と合意による流域の一体的な管理をすすめます。

提言実行のための財源――緊急の対応は国債で、恒久施策は税財政の民主的改革で

 この提言を実行するための財源は、次の考え方でつくります。

 ①コロナ危機への対応など、緊急かつ臨時的に必要となる対策は、この提言では20兆円をこえる規模となりますが、その財源は、あくまで臨時的・一時的な支出であり、国債の増発によって賄います。命と暮らしを大災害から守るためには、必要な財政支出は当然です。

 ②消費税減税や社会保障の拡充、教育費負担の軽減など、コロナ収束後も恒常的に必要となる施策の財源は、恒久的な財源を確保する必要があります。この提言では19兆円程度になります。

 大企業優遇税制の見直し、法人税率を中小企業を除いて安倍政権以前の水準(28%)に戻すことで8兆円、富裕層への税負担の見直しで約3兆円、富裕税や為替取引税の創設で約3兆円、軍事費や大型開発の浪費の削減などで約5兆円――あわせて19兆円を確保することで、恒久的な財源を賄います。

暮らしと家計応援の政治こそ、コロナ危機からの経済立て直しの大道です

 コロナ感染による経済危機は、日本経済の主役が個人消費=家計消費であることを、改めて示しました。大企業が利益や内部留保を増やしても、いくら株価が上昇しても、コロナ危機で個人消費が落ち込んだために、日本経済はリーマン・ショックを上回る大打撃を受けました。暮らしと家計を応援する政治は、コロナ危機から日本経済を立て直すうえでも大切です。

 世界でも新自由主義からの転換をめざす動きが広がっています。コロナ危機のもとで消費税(付加価値税)を減税した国は62カ国にのぼり、大企業、富裕層への課税強化の流れが起きています。バイデン米大統領も富裕層と大企業への増税、最低賃金引き上げを提起し、“大企業が利益を増やせば国民にも滴り落ちる”というトリクルダウン経済からの決別を宣言しています。

 目先の利益さえ増やせば「あとは野となれ山となれ」という新自由主義が、日本でも、世界でも、貧困と格差を拡大してきました。そして、地球規模での気候危機という人類の未来にとって重大な問題をもたらしました。

 新自由主義の政治から転換し、国民の命と暮らしを最優先にする政治に切り替えましょう。


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