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2021年9月11日(土)

主張

9・11事件20年

戦争とテロの循環断ってこそ

 2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロから20年になります。約3000人の命を奪った憎むべき犯罪です。事件への報復として米国が始めた戦争は世界中にテロを拡散し、罪のない人々が亡くなり続けています。米国がアフガニスタンを大混乱させた末に先月、駐留軍を完全撤退せざるをえなくなったことは「対テロ戦争」の破綻をまざまざと示しました。軍事力でテロはなくせません。多大の犠牲を払って得たこの教訓をテロ根絶の取り組みに生かすことが必要です。

法による裁きを基本に

 米国は、アフガニスタンのイスラム組織タリバンの政権がテロ容疑者をかくまったとして軍事攻撃をかけ、事件の2カ月後に崩壊させました。当時ブッシュ政権は「テロを支援する国家は米国に敵対する政権とみなす」と宣言し、際限のない戦争に乗り出しました。

 米英が03年、イラクに戦争を仕掛け、フセイン政権を崩壊させたことは国際情勢の混乱を拡大しました。隣国シリアでは内戦が起き、外国が自国の支援勢力に肩入れして紛争が複雑化しています。

 米国の研究機関の推計によると、米国が対テロ戦争を行った5カ国での20年間の死者は93万人近くに上り、4割が民間人です。

 一方、テロは世界に広がり、04年のマドリード列車爆破テロ、15年のパリ同時多発テロではそれぞれ百数十人が死亡しました。シリア、イラクでは過激組織ISが一時「国家」樹立を宣言し、崩壊後もISを名乗る勢力によるテロ行為が後を絶ちません。

 各国でイスラム教徒への差別、偏見が社会の分断を広げ、それがまたテロの温床となる悪循環を生んでいます。

 米国は「テロ容疑者」とみなした人を、司法手続きもなしに米軍グアンタナモ基地に長期間拘束し、拷問や虐待を加えています。バイデン政権は閉鎖する考えを示していますが、無法な人権侵害の施設はただちに閉鎖すべきです。米国は、同国史上最長と言われるアフガン戦争が悲惨な結果をもたらしたことを反省し、対テロ戦争をすべてやめなければなりません。

 再びタリバンがアフガニスタンの実権を握ったことで人権侵害をはじめ多くの問題が懸念されています。その根本は、軍事介入によって一国の社会と政治を思い通りにしようとしたことの破綻です。

 テロ犯罪への対処は、軍事力でなく、国連を中心に国連憲章、国際法、国際人道法、基本的人権と両立する方法で法による裁きをくだすことを基本に据えることが何より重要です。

アフガン復興に責任を

 テロの根を断つためには貧困の削減や教育の改善が不可欠です。異なる文明間で対話を進め、共存を図る努力も必要です。国連の「グローバル・テロ対策戦略」もテロ拡散の温床への対処、法の支配、国際協力を柱としています。

 アフガニスタンではタリバンに対して女性たちが人権保障を求めて立ち上がっています。最貧国の一つである同国の自立的発展や人権保障を促す支援が国際社会に求められます。

 戦争で同国を苦難に陥れた米国とその同盟国は復興に重大な責任を負っています。自衛艦をインド洋に派遣し、給油作戦で参戦した日本も責任を共有すべきです。


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