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2021年8月12日(木)

主張

NHK議事録開示

放送法違反の番組介入は明白

 かんぽ生命保険の不正販売を告発したNHK番組「クローズアップ現代+」(2018年4月放送)について議論したNHK経営委員会の議事録が7月、開示されました。日本郵政グループからの抗議に同調し、取材方法や番組内容を批判する発言が記録されていました。議論を主導したのは、当時の石原進経営委員長と森下俊三委員長代行(現在の経営委員長)だったことも裏付けられました。経営委員が個別の番組に介入・干渉することを放送法は禁止しています。法律に違反し、番組に圧力をかけていた森下氏に経営委員長を続ける資格はありません。

郵政をあからさまに代弁

 番組介入疑惑は19年9月、「毎日」報道で発覚しました。番組を繰り返し批判する日本郵政の意向をくんだ経営委が、当時の上田良一会長を厳重注意(18年10月)するなどしていました。放送の独立性を揺るがす事態として、国会などで大きな問題になりました。

 しかし、経営委は真相隠しに終始しました。今回の議事録開示は、公開を求める市民団体、野党、メディアからの度重なる要求を拒めなくなったためでした。

 開示されたのは、上田前会長が厳重注意された時期の3回分です。議事録によれば、森下氏は番組の取材方法について「極めて稚拙。現場を取材していない」「(郵政の)気持ちが納得していないのは取材の内容」と述べるなど、郵政の立場を露骨に代弁していました。上田氏は、厳重注意にいたる経過が明らかになれば「NHKとしては存亡の危機に立たされる」と、放送法に触れる懸念を表明したことも確認されました。違法性のあるやりとりだったことは明白です。

 経営委側は、NHKのガバナンス(組織統治)を議論する前提として番組について「意見や感想を述べあった」だけとして、放送法違反ではないと主張しています。しかし、議事録には「(郵政の)本来の不満は内容」「内容については突けないから、その手続き論の小さな瑕疵(かし)のことで攻めてきている」(村田晃嗣同志社大教授=現在の委員長代行)との発言がありました。ガバナンスをただすというのは口実にすぎず、番組制作のあり方や内容に干渉することが郵政の本音だったことを認めたものです。郵政の要求に沿って番組に介入した経営委の責任は重大です。

 経営委はNHKの最高意思決定機関です。透明性の確保のため、放送法41条は経営委員長に議事録の作成と公表を義務付けています。ところが、経営委は「非公表が前提だった」と開示を拒み、概要しか示しませんでした。NHKの第三者機関は2回にわたって全面開示を求め、概要のみの公表を「改ざんというそしりをまぬがれない」とまで批判しました。経営委の隠蔽(いんぺい)体質は許されません。

森下委員長は辞任せよ

 議事録開示後、衆参の総務委員会理事懇談会に出席した森下氏は、「放送番組に触れた議論は避けて通れない」と開き直りました。番組介入は今後もありうるという姿勢です。外部の圧力を受けて放送が左右されることは、NHKが掲げる「自主自律」の崩壊につながります。全く反省のない森下氏は経営委員長を辞任するしかありません。同氏を経営委員に再任する人事を決めた菅義偉首相の責任も問われます。


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