しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年8月5日(木)

主張

コロナ「入院制限」

命置き去りの方針許されない

 菅義偉政権がコロナ患者の入院について重症患者や重症化リスクの高い人に重点化する方針を突然打ち出し、国民の厳しい批判を浴びています。これまで入院で対応してきた中等症患者や、宿泊療養を原則にしていた軽症患者を「自宅療養を基本」にするという重大な方針転換です。症状が急変しやすい特徴があるコロナ患者の入院に制限をかけることは、治療の遅れにより自宅で死亡する人を続出させかねません。命を置き去りにした方針は撤回しかありません。

専門家に相談しないまま

 入院制限方針は2日、菅首相がコロナに関する関係閣僚会議で表明しました。感染急拡大の地域で、入院患者を絞り込み、重症患者や高リスク患者に「必要な病床を確保する」ためと強調しました。

 感染力の強いデルタ株で感染が広がるスピードが速まっているのに、菅政権の後手の対応によって必要な病床が確保できない恐れが現実になりつつあることを示しています。病床不足を打開するためには、医療機関の減収補填(ほてん)など財政支援を抜本的に拡充し、医療提供体制の一層の強化を図ることこそが必要です。

 ところが、首相の今度の方針は、入院や施設療養を制限し、命を危険にさらすことを国民に強いる本末転倒のやり方です。方針を決める際、専門家にも相談していません。命に直結する問題での方針変更を、専門家を交えた検討や議論も経ないで独断で決めたこと自体、極めて乱暴です。

 中等症患者のうち酸素投与が必要な人や基礎疾患のある人は入院の対象になると説明します。しかし、この方針では呼吸困難や肺炎があっても酸素投与をしていない中等症患者は在宅療養とみなされます。入院が一部に限定されることは必至です。

 デルタ株では無症状者や軽症者も短期間で悪化するケースもあるとされます。自覚症状が顕著に表れなくても病状が進行している場合も少なくありません。血液中の酸素の濃度を測るパルスオキシメーターを配布して健康管理をするなどとしていますが、本人が必ずしも適切に判断できるとは限りません。「第3波」「第4波」の際、在宅死が相次いだ悲劇を繰り返すことは許されません。

 急変時に「すぐに入院できる体制」をとるといっても、実効性は不確かです。そもそも必要な病床数確保が追い付いていません。すでに東京では自宅療養者は1万人を超えています。対応する保健所は濃厚接触者の調査などにも追われ、自宅療養者にきちんと連絡を取ることが限界に達しています。医療機関による在宅患者への往診も、すぐに体制をとれる地域は限られています。

 安心して自宅療養できる仕組みを万全に整えないまま、「入院制限」を持ち出すのはあまりに無責任です。このような政権では、国民の命と安全は守れません。

重大局面の今こそ国会を

 いま日本は、感染の爆発的拡大の中で、政権自らが事実上「医療崩壊」の危機を認めざるをえない重大局面を迎えています。

 東京五輪を続けている場合ではありません。菅政権の無為無策をこれ以上続けさせてはなりません。臨時国会を直ちに召集し、各党が英知を集めてコロナ危機を乗り切る時です。


pageup