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2021年6月19日(土)

主張

コロナ禍と「骨太」

国民の願いに反する財界主導

 菅義偉内閣が同政権で初めてとなる2021年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定しました。社会保障の削減を続ける方針を示し、大企業の要求に沿う「デジタル化」やカジノ推進を掲げました。コロナ危機に便乗して「これまで進められなかった課題を一気に進めるチャンスが到来している」といいます。危機に学ばず、医療の強化や生活支援に背を向けた姿勢は国民の願いからかけ離れています。

社会保障費の削減さらに

 「骨太の方針」は次年度の政府予算案に反映されます。政府と財界代表らで構成する経済財政諮問会議が作成します。財界の要求が最優先される仕組みです。

 「団塊の世代」が22年度から75歳以上になり始めるとして、「給付と負担のバランス」の名で社会保障費のさらなる削減を打ち出しました。政府はすでに16~21年度の6年間で社会保障費の伸びを合計8300億円削減しました。「その方針を継続する」として高齢化などによる自然増分も削り込む姿勢を示しました。

 「感染症対応の医療提供体制を強化」といいますが、コロナ危機で顕在化した医療の弱体化に反省はありません。病床削減を図る「地域医療構想」や、都道府県の医療費削減を促す「医療費適正化計画」を推進します。菅政権は先の通常国会で「高齢者医療費2倍化法」と「病床削減推進法」を成立させました。これに拍車をかける方針です。保健所の増設、人員増には触れずじまいです。

 国民の暮らしについては「コロナ禍が格差の拡大・固定化につながらないよう、目配りの効いた政策運営を行っていく」としています。しかし菅政権は格差、貧困に苦しんでいる人たちには手を差し伸べようとしません。持続化給付金、家賃支援給付金を1回で打ち切り、生活困窮者への支援にも消極的です。支援を求める声に今すぐ応えるべきです。

 骨太は「賃上げを通じた経済の底上げ」に言及し、最低賃金の引き上げが不可欠と述べました。「より早期に全国加重平均1000円」をめざすというだけで、いつまでに実現するか明らかにしません。全国一律制や大幅引き上げに踏み出さなければ、消費や経済を底上げする力になりません。

 「新たな成長」の柱に掲げたのが「官民挙げたデジタル化の加速」です。マイナンバーカードを22年度末までに全国民に行き渡らせる方針です。健康保険証、運転免許証との一体化に取り組むとしています。菅政権が進める「デジタル化」は、大企業のもうけのために個人データの利活用を広げる政策です。個人情報の保護をはじめ権利を守る法規制をなおざりにすることは許されません。

暮らし主導の成長こそ

 骨太は日本経済が世界から立ち遅れていることに危機感を表明しました。日本が1990年代から低迷し続けている最大の原因は3度にわたる消費税増税や賃金抑制によって国民や中小企業が疲弊していることにあります。

 「ポストコロナの持続的な成長」をはかるために必要なのは大企業を優遇する政治から国民の暮らしをなによりも優先する政治への転換です。消費税の減税・廃止、大幅な賃上げ、社会保障の拡充こそ必要です。


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