しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年6月12日(土)

社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(12)

北欧型の福祉国家

社会主義・共産主義社会とどこが違うか

 質問 共産主義社会、社会主義社会が実現した場合、北欧型の福祉国家との違いはどのようなものでしょうか。

写真

(写真)「学生オンラインゼミ」で視聴者からの質問にこたえる志位和夫委員長(右)。左は司会の中山歩美日本民主青年同盟中央副委員長=5月23日

 志位 北欧型の福祉国家といわれるものは、日本と比べると、いろいろと進んだ特徴をもっていますが、資本主義の枠内の社会です。

暮らしを守るルールという点では、さまざまな進んだ達成が

 志位 デンマーク、フィンランド、スウェーデンなどは、かなり共通した特徴があって、先ほど日本とヨーロッパとの比較表をお示ししましたが、あの比較表でみたら、国民の暮らしを守るルールという点で、多くの点で進んだ達成があります。どこかの国をモデルにするわけにはいかないけれど、北欧諸国で達成しているような暮らしと権利を守るルールある社会は、資本主義の枠内でめざすべき社会としては、日本共産党のめざすべき社会と、かなり共通点の多い社会だと思っています。

 一つ付け加えていいますと、フィンランドもデンマークもそうですけれど、日本のような競争教育がないのです。日本の教育のいちばん悪いところは、子どもたちを競争に追い立てて、順番をつける。私は、これが一番、子どもを傷つけていると思います。これでは本当の意味での学力も育たない。ところが、フィンランドにしてもデンマークにしても、日本のようなランク付けのためのテストはやらない。そうすると、子どもたちのなかにも、みんなで協力するのが大事だという価値観が育っていくんですね。

格差の拡大をはじめ、資本主義に固有の矛盾からは自由になっていない

 志位 そうしたことも含めて、私は、北欧社会には学ぶべきものがたくさんあると思っているのですけれど、それでも資本主義の枠内です。資本主義に固有の矛盾、たとえば格差がなくなっているかというと、なくなっていない。格差の拡大は続いています。そういう問題から自由になってはいないのですね。

 「利潤第一主義」という資本主義のいちばんの問題からくる矛盾は、北欧社会にもありますから、そこは北欧社会を、私たちのめざす社会主義、共産主義とイコールというわけには、もちろんいきません。

 中山 北欧社会は、すごい福祉国家の素晴らしい面をいっぱい聞くのですけれど、それでも資本主義の枠内という限界からは、逃れられないということですね。

 志位 そのとおりです。たとえば、ジェンダー平等なども、北欧社会では、達成が高いですよね。でも、性暴力がなくなっているかというと、そうはいえない。そうした面もよく見ておく必要があると思います。

メッセージ

羅針盤を持った人生こそ、生きるに甲斐ある幸福がある

 オンラインゼミの最後に、志位委員長は次のようなメッセージを送りました。


写真

(写真)学生へ向けてメッセージを発言する志位和夫委員長=23日、党本部

 志位 私から一言、若いみなさんにメッセージを送りたいと思います。

 まず今日は、たいへん楽しい対話ができて喜んでいます。みなさんの質問も本当によく考えられた、みなさんがいちばん知りたいという質問をぶつけていただいたので、私も一生懸命、お答えしたつもりです。

 最後に、みなさんにお伝えしたいのは、戦前、戦後、日本共産党のリーダーを務めて、今日の党の基礎を築いた大先輩に宮本顕治さんという方がいるのです。若いみなさんは、名前は聞いているけれども、話を聞いた方は少ないと思うのです。2007年に亡くなっています。私も書記局長になった最初の7年間は、宮本さんが議長で、同じ党の指導部で活動して、数えきれないほど多くを学んだ大先輩です。

 宮本さんは戦前、国民主権と反戦平和を貫いて弾圧され、暗黒権力によって投獄され、激しい拷問を受けるのですが、信念を貫いて、敗戦までの12年間、獄中で頑張りぬいた。あの時代に、よくぞここまでと感嘆するような、本当に理性的なたたかいを貫いた方です。妻の宮本百合子さんとの往復書簡が残っているのですけれど、そのなかで私がとても好きな一節があるので、最後に紹介したいと思います。

 1944年10月10日付の宮本百合子さんへの手紙です。

 「人生を漂流しているのでなく、確乎(かっこ)として羅針盤の示す方向へ航海しているということは、それにどんな苦労が伴おうと、確かに生きるに甲斐(かい)ある幸福だね。漂流の無気力な彷徨(ほうこう)は、生きるというに価いしない。たとい風波のために櫓(ろ)を失い、計器を流されても、尚(なお)天測によってでも航海する者は祝福されたる者哉(かな)。そして生活の香油も、そういう航海者にのみ恵まれる産物であって、その輝きによって、生存は動物でなく人間というに価する生彩と栄誉、詩と真実に満されてくるものだね」

 とても文学的な一節なんですけれども、羅針盤――確固とした科学的な指針をもって生きることにこそ、生きるに甲斐ある幸福がある、と言っている。宮本さんのこの言葉を贈りたいと思うんです。

 私は、今日、その一端をお話しした科学的社会主義の立場、日本共産党の綱領こそ、若いみなさんの生きる羅針盤となりうるものだと思っています。どうかこの機会に、科学的社会主義と日本共産党綱領を学び、若いみなさんの願いを実現する先頭に立っている日本民主青年同盟に、加盟されていない方はぜひ加盟していただきたいと、私からもお勧めしたいと思います。私も若い時分は、ずいぶんお世話になった民青同盟です。そしてまた、日本共産党に入党されていない方は、ぜひ入党されて、生きるに甲斐ある幸福をつかんでほしいと考えます。そのことを最後に訴えまして、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

 中山 志位さん、本当に2時間、ありがとうございました。以上で、今日の企画を終わります。志位さん、今日やってみてどうでしたか。

 志位 楽しかったですね。

 中山 よかったです。私もとても楽しかったです。

 志位 またやりましょうか。

 中山 ぜひ、いろんな機会でやりましょう。それでは、春のオンラインゼミを、これで終了します。ありがとうございました。(おわり)


pageup