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2021年6月12日(土)

主張

土地利用規制法案

無限定の監視・人権侵害許すな

 菅義偉政権は、米軍や自衛隊の基地周辺などに暮らす住民を調査・監視し、必要があれば土地・建物の利用を制限する土地利用規制法案を15日にも参院内閣委員会で採決し、16日の国会会期末までの成立を狙っています。しかし、これまでの審議で、憲法が保障するプライバシー権や財産権などの基本的人権を侵害する法案の危険性がいよいよ明らかになっています。採決など到底許されません。

すべてが政府の判断任せ

 法案の重大な問題は、誰が、誰を対象に、どんな情報を、いつ、どこで、どういう方法で調査するのか、土地・建物の利用規制の勧告・命令の対象となる「機能阻害行為」とはどういった行為なのかなど、核心部分をすべて政府の判断に任せていることです。

 法案によると、内閣総理大臣は安全保障上重要とみなす「重要施設」の周囲約1キロと国境にある離島を「注視区域」に指定します。「重要施設」とは、米軍・自衛隊基地、海上保安庁施設、「生活関連施設」(重要インフラ)とされます。政府は「生活関連施設」として自衛隊との共用空港、原発を挙げていますが、法案上は限定がありません。法案が規定する5年後の見直しで、周囲約1キロという範囲の拡大も対象になるとしています。

 内閣総理大臣(実際は内閣府に新設される部局)は、注視区域を指定した上で、区域内の土地・建物の「利用状況調査」を行います。政府は「(同調査を定めた)条文には利用者の定義を置いていない」としており、土地・建物を利用するあらゆる人が対象になり得ます。調査の期間は「継続的」「複数回」になることを認めています。

 政府は調査の内容について、利用者の職業や収入、家族・交友関係、活動歴、SNSでの発信なども含まれるのかとの質問に対し「それが土地の利用と直接関係なければ対象にはならない」としています。しかし、関係するかどうかを判断するには、実際に調査してみなければ分かりません。

 法案は、内閣総理大臣は、「関係行政機関の長」などに対し「利用者その他の関係者に関する情報」のうち「政令で定めるものの提供を求めることができる」としています。政府は、「関係行政機関」に、市民を日常的に監視している警察や公安調査庁、自衛隊の情報保全隊が含まれることについて「条文上は排除されない」としています。提供を求める情報も利用者のものだけでなく「その他の関係者」も含み、内容も「政令で定める」と政府の裁量次第です。

 内閣総理大臣は調査の結果、「重要施設」などの「機能を阻害する行為」やその「明らかなおそれ」を認めた時は、土地・建物の利用中止などを勧告・命令します。しかし、何が具体的に「機能阻害行為」に当たるのか、法案には何も書かれていません。基地への抗議行動などを弾圧する手段として使われるのではないかと懸念が上がっているのは当然です。

歴史の教訓踏まえ廃案に

 政府は5年後の見直しで、土地の利用規制だけではなく、収用も検討するとしています。

 法案は、国民が軍事施設周辺でスケッチや写真撮影をしただけでスパイ扱いされ罰せられた戦前・戦中の治安立法を思い起こさせるものです。歴史の教訓も踏まえ、違憲の法案は廃案にすべきです。


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