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2021年6月5日(土)

裁判所も断罪した自衛隊の国民監視活動

違法が合法に

土地利用規制法案 基地周囲に「注視区域」

 「自衛隊による国民監視の被害者が犯罪者扱いされてしまうのがこの法律」。土地利用規制法案に警鐘を鳴らすのは小野寺義象(よしかた)弁護士です。4日、自由法曹団の国会要請で「今すでに自衛隊の情報保全隊が国民監視を徹底的にやっている。これを裁判所は違法と断じた。この法案は、司法の判断すら無視するものだ」と訴えています。(矢野昌弘)


写真

(写真)横田基地(東京都)に接する住宅地

 2007年に日本共産党が告発して明らかになった陸上自衛隊情報保全隊の内部文書。03年に自衛隊がイラクに派兵される際、それに反対する行動や、派兵と無関係な年金減額や消費税増税に反対する市民の行動まで監視し、まとめたものです。

 東北地方在住の監視被害者107人が仙台地裁で「自衛隊の国民監視差し止め訴訟」を起こし、小野寺弁護士は事務局長をつとめました。

 地裁と仙台高裁はいずれも情報保全隊による市民監視がプライバシー権を侵害した違法な監視だとして国に賠償を命じ、国は上告を断念しています。

 土地利用規制法案は、自衛隊基地などの「重要施設」から周囲約1キロを「注視区域」などに指定。国は、その区域内の土地建物の利用者情報を提供するよう求めることができます。また、その場所を「阻害行為」に使われないよう「勧告」や「命令」し、従わない時は刑事罰を科すこともできるというもの。

 裁判では、シンガー・ソングライターのAさんへのプライバシー侵害が認められました。保全隊の内部文書には、Aさんが駐屯地から10キロも離れているスーパーの敷地内で「イラクに自衛隊を行かせないライブ」をしていることや本名、職業などを記録していました。

 裁判で国は「(スーパーを)自衛隊員の家族が利用するなどしていたから、悪影響が生じることが考えられる」と強弁していましたが、仙台高裁は「10キロも離れているので影響があるとは考えがたい」と否定しました。

 国はAさんに賠償金を払ったものの謝罪はなく、収集した情報をどうしたのかも明らかにしていません。

 小野寺弁護士は「内部文書で明らかになった保全隊の活動をみれば、『阻害行為』を防止するためなら距離などお構いなし。土地利用規制法案は、政令に白紙委任となっており、なんとでもなるのではないか」と指摘。「保全隊の違法な活動が合法化され、被害者が犯罪者扱いされてしまう」と訴えます。

図

自衛隊の国民監視差し止め訴訟で国側が出した資料。陸上自衛隊船岡駐屯地(左)から10キロ離れたスーパーで行われたイラク派兵に反対するライブも監視対象になることを正当化したもの


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