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2021年5月26日(水)

主張

東北新社接待報告

解明尽くすのは菅政権の責任

 総務省と業界の癒着の深さに改めて驚かされました。放送関連会社「東北新社」が総務省幹部への接待についての報告書を公表し、これまでの同省の発表よりも会食件数が多かったことを明らかにしました。東北新社は菅義偉首相の長男・正剛氏が勤めている会社です。接待の見返りに衛星放送事業の継続などで便宜をはかっていれば、国家公務員倫理規程に違反するだけでなく、贈収賄にも該当します。総務省は東北新社とNTTの接待についての調査結果を近く公表するとしていますが、全てを明らかにし、癒着の根を断つことが重要です。

総務省の調査より多い

 国家公務員倫理規程は利害関係者が飲食費を負担する接待を禁止しているほか、1人1万円超の飲食は割り勘であっても事前に届け出ることを義務付けています。総務省は2月の疑惑発覚後、東北新社から延べ39件の接待があったことを認め、11人の幹部を処分しました。接待が行政に及ぼした影響などについては、明らかにしていません。

 東北新社の報告書では2015年11月から20年12月までに会食は計54件で、総務省調査には含まれていない会食が20件ありました。東北新社側で接待したのは木田由紀夫前執行役員、三上義之前取締役などで、正剛氏が出席した会食は22件に上っています。

 報告書は会食について「関係構築」などが狙いで、「不当な働きかけ」を目的としたものとは認められないとする一方、「昼間の打ち合わせ等では得ることのできない情報等を取得することまでをも目的としていたとの疑念を持たれる可能性があった」と、問題があったことを認めました。

 東北新社は17年、同社のBS4K放送が放送法の外資規制違反だったことがわかり、違法状態を解消するため、子会社を設立してBS事業を継承させました。その際、同社の幹部が総務省の衛星・地域放送課長らを訪ね報告したことや、その後接待したこと、プロ野球のチケットを贈ったことなども報告書は明らかにしています。この問題で総務省側は「報告された記憶はない」と国会で答弁し、東北新社側と主張が食い違っています。報告書は、報告していたと認定する方が「合理的」としています。

 放送法では衛星放送事業者の外資比率が2割以上になると、総務省が認定を取り消さなければなりません。当時なぜ認定を取り消さず、子会社への事業継承を認めたのか。関係する総務省幹部が多くの接待を受けていることが報告書から浮かびます。当時情報流通行政局長だった山田真貴子前内閣広報官も、破格の接待を受けていました。異常な接待と事業承継との関係は追及が必要です。

総務省は「S社」と隠語

 東北新社の報告書は、総務省幹部を接待した際の同社の経理伝票は「S社」と隠語だったと記しました。接待が後ろめたいものだったことをうかがわせます。

 東北新社やNTTによる総務省幹部の接待は政官業癒着の象徴です。接待疑惑は農林水産省や文部科学省でも相次いでいます。総務省に任せるだけでなく、国会でも真相を徹底究明すべきです。総務相時代に人事権を握り、総務省に強い影響力を持つ菅首相の責任が問われます。


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