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2021年5月22日(土)

主張

愛知リコール不正

民意のねつ造を徹底解明せよ

 愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動をめぐる不正事件で、県警はリコール運動団体の田中孝博事務局長=元県議、日本維新の会前愛知5区支部長=ら4人を地方自治法違反の疑いで逮捕しました。昨年10月下旬、アルバイトらに指示して有権者の氏名を署名簿に書き写させ、署名を偽造した容疑です。首長の解職について有権者が直接意思を示すリコールは、民主主義の根幹にかかわる制度です。署名の偽造は民意のねつ造に他なりません。署名の8割以上で不正が判明した前代未聞の事件の徹底解明が急務です。

民主主義の根幹揺るがす

 リコール運動は、河村たかし名古屋市長や美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長らが推進しました。国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」で日本軍「慰安婦」を題材にした少女像や昭和天皇の写真を使った作品などが展示されたことを執拗(しつよう)に攻撃し、企画を許可した大村知事の解職をめざしました。日本の侵略戦争を美化・正当化する歴史逆行の勢力の動きのひとつです。

 昨年8~10月の運動期間中に集計された署名は約43万5000人分で、必要な法定数(約86万7000人)に届かずリコールは成立しませんでした。一方、署名集めをした人の中から、同一筆跡の署名が複数あったと告発がありました。愛知県選挙管理委員会が署名の全数調査を実施したところ、有効と認められない署名は36万人以上にのぼり、同一人によって書かれた署名、選挙人名簿に登録されていない人の署名などが次々と確認されました。すでに死去した有権者の氏名が記された名簿も数多く見つかりました。悪質極まる事態に県民の怒りは広がりました。

 リコールは、有権者の直接請求によって首長などの解職や議会の解散を迫ることができる地方自治法に基づく制度です。

 地方自治体が住民の意思に基づき運営されるよう、行政・議会を住民が監視する仕組みとして導入され、機能してきました。手続きも、自筆を原則にし、提出された署名は選管が必要数に達しているかどうかチェックするなど厳格です。違反者には懲役や罰金が科せられます。

 署名の偽造は、選挙の際の投票不正と同じです。公職にある人を辞めさせるために、そう思っていない人を含めて他人の名前を勝手に使う行為がまかり通れば、リコールの仕組みの信頼は失われ、民主主義の土台は崩れます。異常事態を二度と起こさないために、背景や動機の解明が不可欠です。

責任逃れは許されない

 大規模な偽造は、逮捕された事務局長ら4人だけで実行できるとは思えません。書き写しに使われた名簿はどこから入手したのか、アルバイトの委託などに誰が介在し、資金はどうしたのか、全てを明らかにする必要があります。

 許しがたいのは、河村市長や高須院長が自身の関与を否定するばかりで、不正を引き起こした運動を主導したことに全く反省がないことです。事実解明にも動かず、「知らなかった」ではすまされません。事務局長を衆院選の候補者にしていた日本維新の会も人ごとと決め込んでいます。リコール運動を推進した政治家らの責任逃れを許してはなりません。


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