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2021年5月17日(月)

主張

公平な税への改革

法人税引き下げ競争の終結を

 コロナ危機に対応し経済回復の財源を確保するため、不公平な税制を見直す動きが各国で相次いでいます。かつて大企業減税競争の先頭に立った米国、英国政府が、公平な負担を求める声を受けて法人税率を引き上げる方向に転換しつつあることは重要です。「底辺への競争」と批判された国際的な法人税引き下げ競争を終わらせることは世界的な課題です。

再分配機能の回復こそ

 1980年代、米国のレーガン政権、英国のサッチャー政権は、大企業、富裕層の税負担を減らせば投資が増え、税収増につながるという新自由主義の主張に基づいて減税を行い、各国が追随しました。「100年に1度の危機」といわれた2008年のリーマン・ショックで大企業減税が一段と加速し、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の法人税率は1981年の48%から2020年には23%にまで下がりました。

 しかしその結果、所得を再分配する税の機能が弱まり、格差が拡大しました。大企業がため込んだ過剰な資金は設備投資や雇用、賃上げにつながらず、内部留保を膨らませただけでした。税源が浸食され、財政の悪化を招きました。公的医療や社会保障も弱体化し、パンデミックに弱い社会になっていたことがいま浮き彫りになっています。この方向を転換することが迫られています。

 世界銀行は昨年まとめた研究報告で、主要国の大企業が「過剰な企業貯蓄」を増やした要因は法人税減税だったと結論づけました。03年から17年にかけて法人実効税率を10%以上引き下げた日本、英国、イタリアでは特にこの傾向が顕著だったといいます。

 米国のバイデン大統領は4月に行った施政方針演説で、トランプ前政権による減税は大企業経営者の私腹を肥やしただけだったとして、大企業と富裕層に公平な負担を求める方針を明らかにしました。同政権は連邦法人税の増税や所得税の最高税率の引き上げを提案しています。多国間交渉で法人税の国際的最低税率を設定することも支持しています。

 英国政府は年間利益25万ポンド(約3800万円)以上の企業の法人税率を現行の19%から2023年4月に25%に引き上げることを決めています。50年ぶりの法人税増税です。利益が基準に満たない企業の税率は据え置きます。

 国際社会ではOECDが主導し約140カ国が参加して国際課税の新しいルールをつくる交渉が大詰めです。多国籍企業課税の導入と法人税率の世界的最低基準づくりが7月の合意をめざして進んでいます。

応分の負担は当然の方向

 日本の法人実効税率は安倍晋三前政権のもとで37%から29・74%へ段階的に引き下げられました。その間、大企業の内部留保は約1・4倍に膨らみました。一方で消費税率は2度の増税で5%から10%へ引き上げられました。

 コロナ危機への対応は新たな財源を必要としています。苦境にある国民、中小業者にこれ以上の負担を求めることはできません。今必要なのは消費税率を5%に引き下げることです。コロナ危機のもと、大幅に資産を増やしている富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を減税することは、税の公正にとって当然の方向です。


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