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2021年5月13日(木)

主張

今夏の東京五輪

首相の責任で中止を決断せよ

 開会式(7月23日)まで2カ月余となった東京五輪の中止を求める声が大きく広がっています。メディアの世論調査は「中止」の回答が多数を占め、日本弁護士連合会の宇都宮健児元会長が呼びかけた中止要求オンライン署名は30万人を突破しました。感染拡大が深刻化するコロナの対策と五輪が両立しないことは、誰の目にも明らかです。しかし、菅義偉首相は「五輪ありき」で突き進む姿勢を変えようとしません。これでは国民の命と健康をコロナから守れません。日本政府の責任で五輪中止を一刻も早く決断すべきです。

負の遺産になる可能性

 新聞・テレビの世論調査結果(10日)は、国民多数が今夏の五輪は中止しかないと考えていることを浮き彫りにしました。「読売」は「中止する」が59%にのぼりました。緊急事態宣言の対象となった6都府県の平均では6割を超えています。NHKも中止49%で、無観客23%、観客制限19%を上回りました。JNNでは「延期」「中止」を合わせて65%に達しました。

 宇都宮氏が5日に開始したオンライン署名は、わずかの期間に急速に賛同を集め、広がりを見せています。署名は「ただでさえ深刻な不足に直面している医療資源を五輪に回すことは、コロナ禍で疲弊している医療従事者の方々をさらに苦しめ、住民および参加者の命と暮らしを危険にさらす」と訴え、菅首相や小池百合子東京都知事、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長らに中止宣言をすることを求めています。

 「医療は限界 五輪やめて!」と記した立川相互病院(東京)の窓の張り紙は話題を集め、コロナ禍で医療がひっ迫する中で看護師に五輪派遣を要請する政府に対する抗議のツイッターデモも行われています。日本オリンピック委員会理事で女子柔道のメダリスト・山口香さんは、開催を強行すれば「負の遺産として残る可能性がある」とし、「結果として感染拡大につながれば、アスリートや五輪への反発につながりかねない」(「東京」12日付)と強く警告します。

 しかし、菅政権は国民の不安や批判にこたえません。10日の国会審議では、ワクチン接種の大幅な立ち遅れや、医療従事者を現場から引き離し五輪に振り向ける余裕がない問題、選手を受け入れるホストタウンの地方自治体に大きな負荷を強いることなどが取り上げられました。これに対し首相は「安全・安心の大会が実現できるように全力を尽くすことが私の責務だ」と同じ言葉を繰り返すばかりです。首相の政策アドバイザーの高橋洋一内閣官房参与がツイッターに、日本の感染拡大を「さざ波」と投稿し、五輪中止の声を揶揄(やゆ)したことも不問に付しました。首相の認識と任命責任が問われます。

主体的に判断すべきだ

 首相が、開催権限はIOCにあると自分の責任逃れを図っていることは大問題です。開催国の政府が国民の命を最優先にする立場から中止を決めた場合、IOCはそれを覆すことはできません。主権国家として日本が主体的に判断し、中止の決断をしてIOCに伝え、関係する諸団体と協議に入ることが急がれます。東京都の小池知事にも開催都市のトップとしての責任があります。国と都は五輪の中止を決断し、コロナ対策に力を集中する時です。


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