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2021年4月20日(火)

国立大学法人法改定案

国の支配体制 強化を狙う

学内構成員の意向 ますます排除

土井誠

 菅義偉政権が国会に提出した国立大学法人法改定案が衆議院で審議入りしました。学長選考会議の権限を強化し、学長へのチェック機能を明確化すると文科省は説明しています。しかし、法案のねらいは、国が国立大学を支配する体制を強化することにあります。

国の監視体制・監査機能を強化

 現行の法人法は、大学の達成すべき業務運営に関する中期目標(6年間)を文科相が定めるとしていますが、憲法23条に由来する大学の自治をふまえて、文科相には、法人から原案を提出させ、それに配慮する義務が課されています。大学は目標達成のための中期計画を作成し、文科相の認可を得ます。改定案は、この中期計画の記載事項に「評価指標」を追加し、計画の達成度をはかれるようにします。

 また、改定案は法人の業務を監査する監事の機能強化のために、1名以上の常勤化を定めます。監事による監査は、財務や会計にとどまらず、中期目標・中期計画に基づき実施される業務全般の達成状況や、未達成の項目の原因究明までも対象になっています。

 常勤の監事がいない大学等は42校あり(1月現在)、監事の任命権者は文科相であるため、文科省関係者が監事に天下るなど国の監視体制が強化されます。

 改定案は、「学長選考会議」を「学長選考・監察会議」と名称変更し、同会議の学長・理事に対するけん制機能を法令上に規定します。監事が学長に不正行為や法令違反があると認めたときは学長選考・監察会議に報告するようにし、報告を受けた同会議は、学長に職務の執行状況について報告を求めることができるようにします。

 文科省は、評価指標については、水準を達成したか第三者が検証可能なものとするよう求めています(「中期目標・中期計画の項目について(案)」)。

 そうなると監事が学長の業務を監視し、6年間で達成を目指す水準や評価指標に達成していないと判断した場合、「法令違反」の疑いがあるとして、学長選考・監察会議に通報し、同会議が文科相に学長解任を申し出る仕組みが完成します。学長は評価指標の達成をめざすよう法的に縛られます。

画一的中期目標計画を押し付け

 重大なのは、文科省が第4期(2023年度~)の中期目標については、大綱(素案)を示して、その枠内での選択を迫り、大学の自主的・自律的な原案作りに介入し、評価指標の内容にまで口を出していることです。国立大学協会は、記述が詳細に過ぎ、ここから選択するのでは中期目標が画一的になるとの意見を提出しています(1月27日)。大綱は、手直しして6月確定の予定です。

 素案には、大学に「戦略的経営」を強いる目標が並んでいます。

 例えば、「財務内容の改善」では「効率的な資産運用や、保有資産の積極的な活用、研究成果の活用促進のための出資等を通じて、財源の多元化」について記述することが必須となっています。

 文科省が設置した大学ファンドへの出資や、長期借入金の借り入れ、債券発行、出資対象事業の拡大、金融商品による資産運用など損失リスクを伴う事業についての目標と計画、評価指標の設定を強いています。

 定量的な評価指標として若手教員比率を例示しているのは、若手の雇用を不安定化する問題をはらんでいます。

 京都大学は任期付きの若手教員ポストを拡充していますが、監事が「若手教員も10年経(た)てばもはや若手ではなくなる」として常に若手を採用できるように任期後に常勤職を与える割合を定め、そのほかは雇い止めするように求めています(2019年6月)。

 若手教員比率には任期付き雇用もカウントされます。多くの大学で比率を上げるために、若手教員を任期付きで雇用して、任期が切れたら雇い止めする事態が広がる危険があります。

 文科省は目標・計画を押し付け、法的にその達成を強いることで大学を「戦略的経営体」に変えようとしています。学内構成員の意向はますます排除されます。

 (どい・まこと 党学術・文化委員会事務局長)


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