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2021年4月8日(木)

きょうの潮流

 1年間連日、放送された「おしん」、足かけ30年500回を超えた「渡る世間は鬼ばかり」。多くの人々に愛され、テレビ史に刻まれるドラマの数々を手がけた橋田寿賀子さんが亡くなりました▼俳優が格闘した台本10ページにも及ぶ長ぜりふは、橋田さんならではのもの。「私は二流でたくさん。一流の方ならひとことで済むようなせりふを私は10行かけてきた」と。丁寧な日本語にこだわり、わかりやすく伝えたいとの気持ちがこもっていました▼脚本家を志して松竹に入社。しかし10年間、脚本を書く機会はあまりなく、お茶くみ扱いでした。フリーになってテレビ局に台本を持ち込むも採用されず、目立つように赤いリボンでとじたこともありました▼25歳で母を、30歳で父を亡くし、結婚したのは41歳のとき。家族を得たことで、夫や姑(しゅうとめ)をはじめ身辺に題材を取り、ホームドラマを描き続けました。「人殺しや不倫は書かない」が信条でした▼作品の根底にあったのは自身の戦争体験。修学旅行が皇居の清掃だったような時代、米兵が上陸してきたら死ぬ覚悟だったといいます。戦闘場面ではなく、戦争の悲惨さを書く責任を痛感します。本紙日曜版のインタビューで「戦争になったら、すべてが壊れてしまう。平和っていいな」と答えていました▼「橋田文化財団」を設立、新人脚本家の発掘や放送文化の育成にも努めてきました。「渡る世間」の最新作は、コロナ禍を生きる家族の物語になると関係者の間で取りざたされていただけに残念です。


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