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2021年3月31日(水)

日本共産党の予算委論戦

 新型コロナウイルス感染の拡大と、それに伴う国民の命とくらしの危機が深刻化するなか行われた衆参予算委員会。国民の苦難軽減にむけて、日本共産党国会議員団が展開した論戦を振り返ります。


コロナ対策(1)

くらし・営業守る補償迫る

 11都府県に新型コロナの緊急事態宣言が発令されるなかで開会した今国会。営業時間の短縮要請を受けてきた飲食店をはじめとする「もうもたない」の悲鳴をよそに、菅政権の補償策は、昨年と変わらず不十分なままでした。

 日本共産党の小池晃書記局長は、時短要請に応じた飲食店への1日6万円の協力金と、その取引先への最大40万円の一時金について、「固定費すらまかなえないところが確実に出てくる」と批判。売り上げの75%を補償するドイツの例を示し、「規模に応じた支援を」と迫りました。

 菅義偉首相は「大規模店などは足りないとの声がある」と認めながら、是正には応じませんでした。(1月28日、参院予算委員会)

 笠井亮議員は、持続化給付金と家賃支援給付金の申請打ち切り(2月15日)を批判(1月26日、2月19日、衆院予算委)。共産党と立憲民主党は3月19日、持続化給付金を再支給する法案を衆院に共同提出しました。

 休業支援金(事業主から休業時の補償を受けられない労働者への支援)をめぐっては、シフト制で働く大企業の非正規労働者への差別が問題に。勤務先が中小企業か大企業かで分け、給付期間・額を制限する措置について、藤野保史、宮本徹の両議員は当事者の悲痛な声を示し、是正を求めました。

 山下芳生副委員長は、勤務条件の不利益変更が横行するなど、使用者に都合よく、労働者が弱い立場におかれるシフト制労働の根本矛盾を追及。賃金を保障する最低限の労働時間数などを明示するよう定めた「EU指令」を紹介し、「労働者保護のルールを突き崩す悪用を防ぐ新ルールを」と迫りました。(3月19日、参院予算委)

 吉良よし子議員は、文化芸術活動への支援制度で、審査中だった8600件中6000件が、3月になって一気に不交付とされた問題を追及。萩生田光一文部科学相は、事務局体制の不備を認め、「遡及(そきゅう)してでも救済したい」と表明しました。(3月15、22日、参院予算委・同文教科学委)

コロナ対策(2)

大規模検査で封じ込めへ

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(写真)西村康稔経済再生担当相(右)に緊急要請する志位和夫委員長(中央)と田村智子政策委員長=12日、内閣府

 新型コロナ対策の緊急事態宣言が全面解除され各地で感染再拡大(リバウンド)の恐れが強まる中、コロナ封じ込めのための大規模検査が急務になっています。

 日本共産党の志位和夫委員長は12日、菅義偉首相に緊急要請を行い、(1)社会的検査を高齢者施設、医療機関などにも広げ、職員に頻回・定期的に行う(2)モニタリング検査を「1日10万」の桁で行う(3)変異株の疑いを確認する検査の割合の大幅引き上げ―を要求。これを受け日本共産党は、参院予算委や同中央公聴会で要請項目の実現をめざして質疑に立ちました。

 「1回だけやるというのはほとんど意味がない。定期的に続けてやるのが極めて重要だ」―。16日の参院予算委員会公聴会で、小池晃書記局長が緊急要請を示しての質問に、政府・新型コロナ対策分科会の尾身茂会長はこう答えました。尾身氏は、感染拡大の予兆をつかむモニタリング検査についても「今、検査のキャパシティー(能力)を格段に増やす絶好の機会だ」とのべました。

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(写真)公述人に質問する小池晃書記局長=16日、参院予算委公聴会

 19日の参院予算委員会で山下芳生副委員長が、社会的検査を「頻回に」という尾身氏の見解を示し、定期検査の基準と予算を要求。また感染拡大の予兆をつかむため、1日10万件規模へのモニタリング検査の実施を迫るとともに、変異株を確認するスクリーニング検査の大幅拡大を主張しました。

 菅首相が「方向性はほぼ一緒だ。ただ量が違う」と答えたのに対して、山下氏は「ぜひ量の拡大を」と迫りました。

コロナ対策(3)

医療破壊止め体制強化を

 新型コロナ患者に対応する人員・病床の確保と通常医療の維持のためには、地域全体の医療体制の強化が必要です。党国会議員団は「最も迅速に医療従事者の人件費を保障し、医療機関の経営を支える施策が減収補填(ほてん)だ」(1月8日の政府要望)と政府に何度も迫りました。

 衆院予算委員会では、藤野保史議員(2月5日)、宮本徹議員(2月13日)が医療機関の深刻な実態を突き付け、減収補填の実施を要求。立憲民主党とともに2021年度予算組み替え案を提出しました。

 参院予算委員会では田村智子副委員長が、緊急包括支援交付金などで“約3兆円の医療支援を行っている”という政府の従来答弁に対し、費用補填に限定するなど使い勝手が悪いため、3兆円の相当部分が“見せ金”に終わる危険性を告発。4割超の病院が冬のボーナスを減額せざるをえなかったという医療団体の調査を示し、「医療崩壊の反省がない」とただしました。(3月4日)

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(写真)質問する田村智子議員=25日、参院予算委

 政府与党は減収補填に背を向けたうえ、医療破壊2法案の早期成立を狙っています。

 衆院予算委員会では高橋千鶴子議員が、自宅療養中に亡くなるコロナ患者が相次ぐなかで提出された「病床削減推進法案」を批判(2月9日)。参院予算委員会では田村氏が、「高齢者医療費2倍化法案」に対し、高齢者の窓口負担額はいまでも現役世代より圧倒的に多いのに、2倍化すれば85歳以上の人は月1万円超の負担になると告発。現役世代の負担軽減も1人あたり年350円にすぎないと指摘しました。法案では国民健康保険料(税)の値上げも求めているため、受診控えや生活費の節約で「高齢者にも現役世代にも健康悪化をもたらす」と撤回を求めました。(3月25日)

ジェンダー平等

構造的な矛盾に切り込む

 コロナ禍のもと多くの女性が困難に陥っています。田村智子副委員長はその実態を取り上げ、ジェンダーギャップを「当たり前」とする社会の構造的矛盾をただすよう迫りました(4日の予算委員会)。

 昨年4月の雇用者数の減少幅は男性に比べ女性は2倍以上。女性の割合が高い非正規雇用の減少が特に激しく、困難が続いています。

 田村氏は「バスガイドや事務職など、女性が多く担う業務が正規雇用から非正規雇用に置き換えられてきた」と指摘。正規雇用でも女性労働者の多い看護師や介護士、保育士などの「ケア労働」は、補助的業務・女性の家庭労働の延長だとして評価されず、低賃金に置かれていると告発しました。

 菅首相は構造的な問題には踏み込まない答弁に終始。田村氏は「女性が置かれている構造的な問題を本気で変える政治が必要だ」と主張しました。

 同性同士の結婚を認めないのは憲法の「法の下の平等」に反し違憲だとした札幌地裁判決(17日)。山添拓参院議員は判決を受け止め、同性婚を法制化するよう求めました(22日の法務委員会)。

 民法や戸籍法が同性婚を認めていないのに対し、判決は、異性同士と区別するのは「合理的根拠を欠く」と断じています。山添氏は、判決は異性愛者と同性愛者の違いを「性的指向の差異でしかない」と繰り返していると強調。野党が2019年に共同提出した、同性婚の法制化を求める「婚姻平等法案」を「前に進めるべきだ」と求めました。

接待

行政ゆがめた疑惑を追及

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(写真)質問する山添拓議員=26日、参院予算委

 総務、農林水産、文部科学3省の政務三役、幹部官僚が、利害関係にあたる業界から“接待漬け”にされ、行政がゆがめられていたのではないかという疑惑が、今国会が始まると相次ぎ発覚しました。

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤務する放送関連会社「東北新社」による総務省幹部への接待では、塩川鉄也、藤野保史両議員が質問(3月1日、16日、衆院予算委員会)し、同社に有利になるよう同省検討会に影響を与えたのではないかと追及。NTTからの度重なる接待では、武田良太総務相も会食を認めました。山添拓議員は18日の参院予算委で、同社に莫大(ばくだい)な利益をもたらすドコモ完全子会社化という政策転換について事前の議論はなかったと指摘し、追及しました。

 農水省をめぐっては吉川貴盛被告・元農水相の贈収賄事件で、同氏と大手鶏卵業者との会食に現次官をはじめ同省幹部らが同席していました。2018年の会食当時、動物福祉に基づく養鶏場での飼い方に対する規制が議論され、養鶏業界が規制に反対。田村貴昭議員は、汚職疑惑の克明な経過を示し、政策がカネでゆがめられた疑惑を追及しました。(2月10日、衆院予算委)

 さらに「赤旗」報道で、文科省への接待問題が発覚。宮崎県の学校法人「豊栄学園」が2015~19年に亀岡偉民・前文科副大臣や、文科次官を繰り返し接待していました。

 豊栄学園理事長は19年11月、宮崎県副知事が同席のもと亀岡氏と会食。同学園が県を通じて私立高校の産業教育施設を整備するための補助金を申請する直前でした。文科省は20年2月に補助金約2400万円の交付を決定。山添氏は「県も含めた贈収賄の可能性すら否定できない」と述べ、徹底解明を迫りました。(26日、参院予算委)

イージス・米軍基地

ロッキード優遇疑惑浮上

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(写真)質問する穀田恵二議員=2月9日、衆院予算委

 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」のレーダー選定で米側の圧力を受け、ロッキード・マーチン社を優遇した疑惑が浮上し、大問題になっています。

 発端となったのは日本共産党の穀田恵二衆院議員の2月9日の予算委員会の質問。与野党に大きな衝撃を与え、同24日に日本共産党や立憲民主党、国民民主党でつくる野党合同調査チームが発足。野党が協力して徹底追及しています。

 穀田氏は、選定直前に米国防総省傘下のミサイル防衛庁がロッキード社のレーダーを採用するよう圧力をかけていたとの本紙取材で得た証言をもとに追及。岸信夫防衛相は2018年7月23日にグリーブス米ミサイル防衛庁長官(当時)が「極秘来日」し、防衛省を訪問していた事実を認めました。防衛省職員と「業界関係者等」との接触が、選定中に529回に上ることも判明。選定の背景に同省とロッキード社の癒着関係がある疑いが浮き彫りになりました。

 「戦没者への冒涜(ぼうとく)だ」。赤嶺政賢衆院議員は、沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、戦没者の遺骨が眠る本島南部から埋め立て土砂を調達しようとする政府を批判し、採取計画の撤回を求めました(2月17日の予算委員会)。

 南部で犠牲者が多いのは、住民の避難を知りながら日本軍が撤退したからだとの歴史を示し、「政府が歴史的な責任を負っていることを忘れてはならない」と強調。菅義偉首相は「遺骨に十分配慮するよう求める」と述べるのみで、沖縄の歴史に敬意を払わない姿勢が浮き彫りになりました。


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