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2021年2月23日(火)

「N高政治部」 志位委員長の特別講義(3)

新型コロナ 給付金は有効か

事業が続けられる補償を

Q 今、新型コロナの影響で失業者が増加しています。国は給付金等の手当を出していますが、失業者や会社の倒産を防ぐ手段として有効な手だてだと思いますか。

写真

(写真)飲食店が集中する新宿の歌舞伎町。奥は緊急事態宣言の発令で記者会見する菅義偉首相を映す大型ビジョン=1月7日、東京都新宿区

「自粛と一体に補償を」――営業と暮らしを支える給付金を

 志位 給付金が有効かというご質問ですが、私たちは、たいへんに不十分だと考え、拡充を強く求めています。

 いま、政府は、飲食店に営業時間短縮要請をしています。それに対する協力金は、一律1日最大6万円です。これでやっていけるお店もあります。しかしちょっと規模の大きいお店は、家賃などの固定費も賄えないという苦しい状態になっています。

 私たちは、給付金は一律ではなくて、事業規模に応じたものにして、事業が続けられるだけのものを支給すべきだと求めています。現状では、とてもじゃないけどやっていけない、行政の自粛要請に従ったらつぶれてしまうというお店がたくさんあります。ヨーロッパでやっているように事業規模に応じた協力金にすべきだというのが一つです。

 それから、給付金の問題で、たいへんに大きいのは、中小企業の経営をなんとか支えてきた「二つの命綱」の問題です。持続化給付金と家賃支援給付金です。これを家賃など固定費の足しにして何とか経営をつないできていたのです。持続化給付金は、これまでに5兆円くらい支給されて、いちばん役に立つ制度でした。これらの給付金は、国民の願いにこたえて野党が頑張って要求して、つくらせた制度なのです。

 ところが、政府は、これを1回きりでやめてしまうという方針です。今年の分は出しませんよということになると、1回目はもう使ってしまっていて、足らなくなっているときに、とても事業を続けられない。緊急事態宣言は出しながら、「命綱」の給付金は切るというのは、あまりにもひどいではないか。給付金の第2弾を出せというのが野党の要求です。

 それからもう一つ、給付金で大事な問題があります。生活困窮者の方々をどう支援していくのかという問題です。

 もちろん生活保護は、憲法25条で保障された「生存権」という国民の権利にもとづくものですから、親族に対して扶養の可能性を問い合わせる「扶養照会」などをなくして、みんなが安心して使える制度にしていくことは大事なことです。

 それと同時に、私たちが提案しているのは、生活に困窮した方々に対して、新たな給付金制度を創設するということです。

 どういう制度かといいますと、いま、政府は「緊急小口資金貸付があるから使ってください」というのですが、これは基本は返済しないといけない。返済しないといけないとなると、借りるのをためらってしまう方も少なくありません。

 私たちの提案は、生活に困窮している方には、まず現金をお渡しし、後で収入が減っていることの証明があれば、それを返済不要の給付にかえる。そういう形にして使いやすい制度をつくるということです。困窮している方々に支援の手をとどけるためには、そういう新しい給付金制度がどうしても必要です。ぜひ実現したいと考えています。

 さきほどもお話ししたような、シフトが切られてしまった方とか、非正規で雇い止めにされてしまった方などで、本当に住む場所がなくなるという事態が、つぎつぎに生まれているもとで、困っている方への新しい給付金制度が必要です。

 「自粛と一体に補償をやる」という強いメッセージを政府は出し、しっかり実行することが、いま本当に必要なのです。

フリーランス――あらゆる手だてつくして支援が届くように

 志位氏の発言をうけ三浦氏が、支援を受けられないフリーランスの実態を紹介。そうしたところに対する手当も頑張ってほしいと求めました。三浦氏は志位氏に、緊急事態宣言下で「公共の福祉」を理由に私権を制限することについてどう考えるかと聞きました。

 志位 まずフリーランスのお話をされました。

 フリーランスのうち、多くの場合は、実際は労働者として働いているのに、独立した自営業者として扱われるという働き方をさせられています。つまり実態は労働者なのに、労働者の権利がまったく保障されていないのです。そういう状況のもとで、こういう方々をどうやって支援していくかは大きな問題です。

 持続化給付金など自営業者に対する給付金の対象にはなりうるわけですから、この第2弾を実現し、それを支援にあてていく。さらに、労働者の実態で働いている人には、労働者としてのさまざまな支援措置の対象にしていく。文化・芸術分野のフリーランスの方々には、独自の支援を行っていく。あらゆる手だてをつくして、支援が届くようにしていきたいと考えています。

 フリーランスについて労働者としての権利を確立することが大切です。

「公共の福祉」――一人ひとりの人権を守るために互いに調整すること

 志位 三浦さんがおっしゃった「公共の福祉」に関する論点は、とても大事な論点です。

 憲法には「公共の福祉」という言葉が何度か登場します。憲法13条には、幸福追求の権利は「公共の福祉」に反しない限り、最大の尊重がされるとあります。憲法29条には、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」とあります。

 憲法で言われている「公共の福祉」というのは何か。これは、人権と人権が衝突した場合に、相手の人権を尊重する、そのかぎりで自分の人権は一定の制約を受けるということです。それは、あくまで一人ひとりの権利を守るために人権と人権の衝突をお互いに調整するということなのです。それは、一人ひとりの人権を守ることとは別に、「公益」や「国益」のために人権を犠牲にするという話ではまったくありません。

 たとえば自粛の要請などを行うことも、それはあくまでも一人ひとりの権利を守るためのものでなくてはなりません。新型コロナ・パンデミックから、一人ひとりの権利、命、健康を守るために、一定の自粛の要請を行い、それに従うことは、他の人の権利を尊重する、そのために自分の権利が一定の制約を受けるということです。それはあくまでも、国民の一人ひとりの権利の全体を守るための措置という基本をしっかりすえて行わなければなりません。

 自粛の要請と一体に十分な補償をやらないと、一人ひとりの権利を守れないことになりますね。ましてや十分な補償もせずに罰則を科すというのは、これは私たちは強く反対していますけれども、「公益」「国益」に無理やり従えということで、二重三重に間違ったやり方です。

 憲法の考え方は、「すべて国民は、個人として尊重される」(13条)――個人の尊厳の尊重こそが、基本中の基本であって、「公共の福祉」というのは一人ひとりの人権を守るために、お互いの人権を調整することなのだということを、うんと強調したいですね。

 (つづく)


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