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2021年2月19日(金)

政治的中立性なき選出

東京五輪・パラ組織委 橋本氏の会長就任

 あまりに問題多き、選出劇となりました。

 橋本聖子五輪担当相が18日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長となりました。

密室の選考

 第一の問題は、「透明性」を欠いた選考です。

 女性蔑視発言で退任を余儀なくされた森喜朗氏が、川淵三郎氏に後任の打診をしたことは密室と批判を浴びました。

 今回は検討委員会を設置したものの、当初はメンバーすら公表せず、その中身も非公開。3回の検討委での議論の説明も十分とはいえず、形を変えた密室選考でした。

 検討委員会以外の理事からも「複数候補を出した上で採決するなどが普通の流れ。検討委が決めてしまったら35人いる理事は何の意味があるのか」と異論が噴出したほどです。

 しかもその結果、選出されたのは前任の森会長と「父と娘」といい合う橋本氏でした。森氏は橋本氏に政界入りを進めた人物でもあります。組織委員会に森氏の影響力が温存される懸念がますます強まった形です。

資質の問題

 第二の問題は、橋本氏の資質にかかわります。2014年ソチ五輪の選手団長だった橋本氏が、打ち上げの席でフィギュアスケートの高橋大輔選手にキスを強要したことが写真とともに週刊誌で報じられました。

 当時、橋本氏は「強制した事実はない」と釈明しました。しかし、団長という立場での選手にたいするハラスメント行為で問題視された人が、五輪運営のトップに立つ倫理的な問題は残ります。海外からも厳しい批判が上がることは否定できません。

 最後は、政治的な中立性を著しく欠く点です。

 五輪憲章の根本原則には「オリンピック・ムーブメント(運動)におけるスポーツ団体は、…政治的に中立でなければならない」とあります。

 前任の森氏もこの点では問題がありましたが、今回の橋本氏は現職の閣僚です。今後は大臣をやめ、党籍の扱いは今後、検討するとしています。

 「疑念をもたれることはあってはならず、公平公正な立場で組織委を運営していく」と橋本氏は語りましたが、直近まで自民党の政治家だった事実は消えません。

残る不信感

 理事にも与党の国会議員、都議会議員が多く名を連ねている組織委。同時に森氏、橋本氏と組織委員会のトップがともに政権与党にかかわる人物で占められていることは異常であり、五輪の政治的中立性を著しくゆがめるものにほかなりません。

 しかも、この点は今後の五輪運営に深くかかわります。新型コロナウイルスの感染が抑え込めない中、五輪開催自体の判断が求められます。国民の8割が今夏の開催を望んでいない下、どう安全を踏まえた、科学的かつ適切な判断を下すかが問われます。

 一方、自民党は今秋までに行われる総選挙を有利に運ぶため、開催にこだわっています。そのもとで組織委員会が、政治的な思惑を排し、独自の冷静な判断を下せるのか。政治的な介入を許さない運営を貫けるのか懸念されます。

 一連の騒動で組織委員会に求められていたものは、「国民にたいする信頼回復」だったはずです。しかし、密室かつ政治的な中立性を欠く会長人事によって、国民に残ったのはさらなる不信感だったと思えてなりません。(和泉民郎)


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