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2021年2月17日(水)

マイナス4.8%成長でも3万円台

実体経済と乖離した株高

図

 2月15日に内閣府が発表した国内総生産(GDP)速報値によれば、昨年10~12月期の実質成長率は年率換算で12・7%となりましたが、これはコロナ禍で4~6月が大きく落ち込んだ反動が続いているにすぎず、今年1~3月期は再びマイナスとなると予測されています。

11年ぶりの落ち込みに

 昨年1~12月を通した年間の実質成長率はマイナス4・8%で、リーマン・ショック後の09年(マイナス5・7%)以来、11年ぶりの大きな落ち込みとなりました。個人消費にいたってはマイナス5・9%で、統計上比較可能な95年以来、最大の落ち込みです。

 ところが、くしくも同じ2月15日に、東京株式市場では日経平均株価の終値が3万84円となりました。終値としては、90年8月2日(3万245円)以来30年ぶりの3万円台回復です。実体経済がコロナで低迷する中で、株価ばかりが急上昇するという、異常な状況が起きています。

金融緩和と日銀マネー

 この実体経済と乖離(かいり)した株高の原因は、大きくいって二つあります。

 一つは、世界各国の中央銀行がコロナ対策として大規模な金融緩和を実施したことです。昨年1年間に、アメリカ、日本、ヨーロッパ(ユーロ圏)の中央銀行が市場に供給したマネーの総額は740兆円を超えました。コロナ禍での企業の資金繰りなどのために金融緩和が必要なことは確かですが、格差拡大によって富が偏在しているもとでは、供給されたマネーの相当部分が大企業や富裕層の余剰資金となり、株式市場などに流れ込みます。これが、株価を引き上げたのです。

 もう一つは、日銀マネーの株式市場への直接投入です。昨年1年間だけで、日銀は上場株式投資信託(ETF)を7・1兆円も購入し、これによって株価を引き上げたのです。このような中央銀行による株価への直接介入をしている国は欧米にはなく、日本だけの異常な政策です。

 こうした株高によって恩恵を受けたのは、ごく一握りの大株主です。米誌フォーブスが毎日集計している世界のビリオネア(10億ドル以上の資産を保有する大富豪)の一覧表によれば、日本のビリオネア(現時点では42人)の資産が、コロナ禍で多くの国民が苦しんできた最近11カ月の間に、12兆円から24兆円に倍増しています。

 ビリオネアの一人、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏の場合、家族4人で保有する株式の時価が、11カ月で2・8兆円も増えています。同社の最近1年間の世界全体の連結売上額が約2兆円、連結当期純利益は1000億円程度ですから、柳井氏の資産増加額が企業実態とかけ離れたものとなっていることは明らかです。

 (垣内亮 日本共産党政策委員会)


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