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2021年2月13日(土)

主張

森氏の会長辞任

辞めただけで問題終わらない

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任を正式に表明しました。女性差別発言から9日も居座り続けるなど、あまりに遅すぎます。しかも、批判を浴びて辞任する張本人が後任を指名する動きが表面化し、さらに世論の批判を招きました。森氏と周辺が問題の根本を理解していないことは明らかです。

追い詰めた女性たちの声

 辞任表明した12日の森氏の発言も、反省と謝罪は皆無でした。「大事なことは7月のオリンピックをすること。その妨げになってはいけない」と苦渋の決断を装う一方、「意図的な報道があった」「女性蔑視と言われたが、私は女性をたたえてきたし、男性より余計に発言してもらうように進めてきた」などと述べました。

 「女性を増やす場合は発言時間の規制を促しておかないとなかなか終わらないので困る」などの発言が、民主主義の根幹にも関わる、明らかな女性蔑視、女性差別の発言であることを最後まで認識できないのは深刻です。

 SNS上でも街頭でも、女性たちの怒りが沸き起こりました。新日本婦人の会は組織委宛てに抗議文を出し、ツイッターや街頭スタンディングなど行動を広げ、NHKなどが報道しました。多様な分野の女性たちが、「どの世界にも“森さん”はいる」「私もわきまえさせられてきた」などと実感を込めて発信し、共感を広げました。

 各国大使館や国際団体の女性たちからの「沈黙しないで」とのメッセージにも激励され、日本の女性たちの行動はさらに広がりました。11日には、性暴力を許さないフラワーデモが全国で取り組まれ、「性暴力と性差別は同根だ」と、森氏の差別発言への抗議の場となりました。「沈黙は容認すること」と、アスリートや男性たちからも意見表明が相次いでいます。

 声を上げている人は共通して「辞任で一件落着とはならない」と語ります。今回の事態を、日本社会の構造的なゆがみをただし、ジェンダー平等社会をつくる契機にしていかなければなりません。

 菅義偉政権は、森氏を擁護し、続投を模索し続けました。国会で姿勢を問われた菅首相は、「公益団体のことだから」と人ごとのように述べました。しかし、首相は組織委員会の顧問会議の最高顧問・議長で、「顧問会議は当法人の運営に助言ができる」と規定されています。辞任を求めなかった責任は免れません。政権と自民党の人権無視の体質が問われます。

 新型コロナ禍の中、女性に負担と矛盾が集中しています。その支援を欠いたまま、オリンピック開催ありきで走り続ける一方で、女性蔑視を擁護した政権の姿勢は大問題です。日本はジェンダーギャップ指数で153カ国中121位、政治の分野でみると144位の低位です。意思決定の場に占める女性の割合の異常な低さが、日本社会の重しになっています。

多様な声が未来をつくる

 ネット署名を呼びかけた20代女性は、「変えようとしている人もいっぱいいることがわかった。社会をアップデートしていきたい」と語ります。今回の事態は、日本の構造的な闇を明らかにしたとともに、自分の言葉で声を出し、行動することの大事さを示しました。未来をつくるのは、まぎれもなく多様な一人ひとりの声です。


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