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2021年1月20日(水)

きょうの潮流

 中国で細菌戦や人体実験を行った日本陸軍731部隊を率いた軍医の石井四郎。近年、作家の宮本百合子の自伝的長編『道標』に、ドイツ留学中の石井をモデルとした人物が描かれていることがわかりました。作家の岩崎明日香さんの発見です▼その登場人物は毒ガスを研究している軍医の津山。津山は主人公の伸子に日本はドイツの再軍備に学ぶべきだと力説します。伸子は右翼テロリストと通じるものを感じ、「医学博士という彼の科学の力」で何をするだろうと「気分をわるく」します▼1929年のベルリンで百合子は石井に実際に会って、危惧を持ったのでしょう。その後の石井の戦争犯罪は、彼女の心配をはるかに超えました。日本の科学者がこのような過ちを二度と繰り返さないと誓って出発したのが日本学術会議です▼安倍政権の軍事研究推進に対しても、学術会議は反対の声明を出しました。菅首相の会員の任命拒否は、科学者を再び政府の意のままにしようというものです▼実は38年に百合子も数人の作家・評論家と一緒に、理由も示されずに執筆禁止にあいました。ほかの作家からまともな抗議はなく、萎縮だけが広がりました。「剛毅(ごうき)な文学の精神は、日本の当時に存在しなかった」(百合子)▼幸い今は違います。菅首相の任命拒否には1349の学会・団体から抗議が上がりました。あす21日は宮本百合子の没後70年。「あってならないことは、絶対にありえない条件を確保しよう」。現代に通じる彼女の呼びかけです。


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