しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年12月29日(火)

主張

「石綿」最高裁決定

一刻も早く被害者を救済せよ

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、健康被害を起こした首都圏の元建設労働者と遺族らが国と建材メーカーに対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は国の上告を受理しない決定(14日付)を出しました。これで、国の責任を認め、約330人に計約22億8000万円の支払いを命じた判決が確定しました。建設アスベスト訴訟は全国各地でたたかわれていますが、最高裁が国の責任を認めたのは初めてです。

確定した国の賠償責任

 首都圏の建設アスベスト訴訟は2008年に東京地裁に起こされました。一審判決(12年)は、国が通達した石綿石材の警告表示は実効性を欠いており、国が規制権限を行使しなければ石綿粉じんへの暴露は避けられなかったと指摘し、国の責任を認めました。

 18年の東京高裁の二審判決は、一審で1981年以降としていた国の責任の期間を75年以降に広げました。また企業に雇われた労働者だけでなく、いわゆる「一人親方」への賠償も認めました。この判決が確定したことは極めて重要です。全ての被害者の救済とアスベスト対策の礎にもなる決定です。

 建材メーカーの責任については、一、二審とも認めませんでした。最高裁は、建材メーカーについての弁論を来年2月25日に行うと指定しました。原告・弁護団は、二審判決が見直される可能性が高いと指摘しています。

 建設アスベスト訴訟は全国各地で相次いで起こされ、原告は1100人以上です。国は地裁・高裁レベルでは14件連続で敗訴しています。国・建材メーカー双方の責任を認めた判決も少なくありません。司法判断の流れが、被害の救済を求めていることは明白です。原告の7割以上は裁判の途中で死去しています。解決を長引かせ、原告に苦渋の日々を押し付けている国と建材メーカーの責任は極めて重大です。これ以上、原告に裁判という過酷な負担を強いることは許されません。

 原告・弁護団は早期解決に向け、▽全ての被害者に対する真摯(しんし)な謝罪▽最高裁決定で責任が確定した被害者への賠償▽継続中の訴訟の早期の和解解決▽「建設アスベスト被害補償基金制度」の創設▽建設現場での石綿粉じん暴露防止対策の強化▽石綿関連疾病医療体制の整備・治療法の研究開発を国に要求しています。

 被害補償の基金制度について、原告・弁護団は、国の下に機構を設置し、国と建材メーカーが全負担額の2分の1ずつ拠出するなどの案を提起しています。給付対象には、労働者とともに、一人親方、中小企業主として工事に参加した人も含むとしています。

補償基金制度の創設急げ

 原告は「多くの被災者が救済されることなく亡くなっている。裁判しなくても救済される基金制度の創設は切実な願い」と訴えていいます。国敗訴の最高裁決定を受け、田村憲久厚生労働相は、「責任を感じ、深くおわびする」と述べました。田村氏は原告とも面会した際、補償に向けた協議の場をつくる意向を示しました。

 アスベストによる労災認定を受けた人は年間1000人以上にのぼります。国と建材メーカーは早期全面解決の立場に立ち、被害者の完全救済、アスベスト被害根絶へ真剣に取り組むべきです。


pageup