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2020年11月27日(金)

きょうの潮流

 「秋田県の山奥にあった中学。懐かしくも楽しかったあの時代を漫画エッセーとして描きたい」。「釣りキチ三平」で人気を不動のものにしていた矢口高雄さんに、赤旗日曜版編集部の漫画担当者として、連載をお願いした時の構想です▼矢口さんは「ボクの作風では2ページ10段は必要だ」とも。題名は、♪蛍の光 窓の雪 ふみ読む月日…と重ねた「蛍雪時代」です。1991年2月24日号から2年半続けた連載は、単行本となり代表作に▼突然の訃報は次女のツイッターで知りました。「ことし5月に膵臓(すいぞう)がんが見つかり、約半年病気と闘っていました。すごく辛くて苦しかったはずだけど、涙も見せず頑張りました」と▼野山や小川で遊び、手塚治虫にあこがれる漫画少年でした。地元銀行をやめ30歳で上京し漫画家をめざすいきさつについて「自由に、自分の思ったことを堂々とコメントできるような人間になりたいとの思いもあり、『ボクには漫画がある』と辞表を出した」と日曜版のインタビューで答えています▼「漫画は芸術」が持論。卓越した画力や構成力で「自然派」という漫画世界を確立。イワナ棲(す)む清流や豊かな森林を破壊する開発を止める環境問題の講演も増えたと▼散逸する漫画家の原画の保全にも尽力しました。故郷・横手市の「まんが美術館」には40万以上の原画を所蔵。いまの「鬼滅の刃」ブームに至る漫画芸術の土台を担った矢口さん。次女の言葉にならい「ありがとうございます。そして、お疲れさまでした」。


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