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2020年11月18日(水)

卵子・精子提供の親子関係特例法案

「出自知る権利」なし

山添参院議員に聞く

丁寧に聞き、十分な審議を

 生殖補助医療の卵子・精子提供により生まれた子どもの親子関係を定める民法特例法案が、自民、公明、立憲民主などの与野党5党から共同提出されました。法案をめぐる課題について、日本共産党の山添拓参院議員に聞きました。


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 ―今回の法案には、どういう問題があるのでしょうか。

 法案は生殖補助医療、つまり第三者から卵子や精子の提供を受ける方法(非配偶者間人工授精〈AID〉)で生まれた子どもについて、民法の特例で親子関係を定めるものです。

 しかしAIDをめぐっては、医療や倫理、法律、社会的課題など多数の問題が指摘されています。

 たとえば、AIDで生まれた子どもの「出自を知る権利」の問題です。AIDで生まれた当事者には、個人情報保護として遺伝子提供者の情報が知らされておらず、遺伝子疾患の可能性や、近親婚の可能性なども抱えています。AIDで生まれたことを知った時の衝撃の大きさ、育ての親との家族関係に与える影響など、アイデンティティーを揺るがす事態が現にあります。「出自を知る権利」という「子の福祉」にとって本質的な問題を抜きにした法制化を認めるのか、極めて疑問です。

 また卵子提供者の排卵誘発や採卵の際の危険、妊娠・出産での合併症などによる妊産婦・胎児の生命の危険もあります。

 さらに重大なことは、今後の検討事項として、「代理出産」をもぐりこませ、法制化の足掛かりになる危険があることです。

 生命倫理の問題、遺伝子の選別による優生思想にもつながりかねない問題を含んでいます。

 ―今回の法案は、親子関係を確定するだけとの見方もあります。

 法案はAIDを初めて法律に書き込み、法で認めて、促進を図ろうというものです。しかし、それらをめぐる懸念は解決していません。法案では、今後「おおむね2年」をめどに検討するとしていますが、本質的な問題を後の検討に委ねて本当にいいのでしょうか。

 AIDで生まれた子どもとの親子関係は、厚生科学審議会の部会や法制審議会の部会で、それぞれ2001~03年に議論しましたが、結論を出すことができませんでした。

 この法案では、卵子提供者ではなく出産した女性が「母」になると定めます。07年の最高裁判決を法制化するものですが、実務上はすでに同様の扱いが行われています。また、夫の同意を得て第三者から精子の提供を受けて出産した場合、夫はその子どもの嫡出否認ができないとしています。ただ夫の「同意」を認定する方法は不明確で、「同意」の有無に争いが生じれば、親子関係の早期確定には至りません。

 今国会で法改定を急ぐのではなく、生殖補助医療で生まれた当事者、医療や法律の専門家など幅広い人の意見を丁寧に聞き、十分な審議を行うべきではないでしょうか。


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