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2020年11月4日(水)

主張

「敵基地攻撃」検討

際限ない危険な軍拡許されぬ

 弾道ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とす地上配備型ミサイル防衛システムの一つ、「イージス・アショア」の配備断念を受け、菅義偉政権が代替策の検討を進めています。菅首相は国会での所信表明演説で、他国のミサイル発射拠点などを直接たたく「敵基地攻撃」能力の保有を促した安倍晋三前首相の談話を踏まえ、「イージス・アショアの代替策、抑止力の強化」について「あるべき方策を取りまとめていく」と述べています。敵基地攻撃能力保有に向けた動きは、際限のない軍拡と東アジア地域のさらなる軍事緊張をもたらす危険な企てです。

巨額な地上イージス代替

 安倍前政権が今年6月に導入断念を決定したイージス・アショアの代替策をめぐり、自民党国防議員連盟は10月30日、「新たなミサイル防衛に関する提言」を岸信夫防衛相に手渡しました。岸防衛相は「提言を踏まえて検討を進める」と答えました。

 菅首相は、イージス・アショアの代替策として「(同システムの)構成品を移動式の洋上プラットフォームに搭載する方向で検討している」(同28日、衆院本会議)と述べています。自民党国防議連の提言は、新型のイージス艦を建造するよう主張しています。

 しかし、政府が地上配備のイージス・アショア導入を決めた口実は、イージス艦では乗組員が長期の洋上勤務を繰り返し強いられるという問題点を解消し、24時間365日態勢でミサイル防衛任務に従事できるということでした。新型イージス艦という代替策については、慢性的な人員不足にある海上自衛隊の負担をさらに増大させるもので、政府の当初の口実からしても本末転倒だという批判がすでに上がっています。

 自民党国防議連の提言では、新型イージス艦を2隻取得することを想定しており、建造・運用・維持などの費用が巨額に上り、イージス・アショアを上回るという専門家の指摘もあります。

 提言で重大なのは、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力」=敵基地攻撃能力の保有について、具体的な装備を示しつつ、早急に結論を出すよう強く求めていることです。

 提言は、敵基地攻撃のための「航空機による作戦」で考慮すべき点として「有人機用スタンドオフミサイルの導入加速」を挙げ、F35ステルス戦闘機に搭載する巡航ミサイル(JSM)などの調達を急ぐよう求めています。「島しょ防衛」などの口実で導入を進めている巡航ミサイルが敵基地攻撃に転用可能であることを告白するものです。

トマホーク導入の主張も

 しかも、「既存の海自艦艇、潜水艦から発射可能な巡航ミサイル(現在開発中の新型を含む)」の活用も挙げています。自民党国防議連の勉強会では、海自トップだった前海上幕僚長から「(米海軍の)トマホークの導入が有効」で、海自基地のある広島県呉市から中国・北京を射程範囲にすることができるという指摘まで上がったといいます(佐藤正久自民党国防議連事務局長・参院議員ブログ)。

 敵基地攻撃能力の保有は、「抑止力の強化」どころか、東アジア地域の軍拡競争を激化させるのは明らかです。そうした検討は直ちにやめるべきです。


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