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2020年10月29日(木)

主張

学術会議 首相答弁

開き直りとすり替え許されぬ

 菅義偉首相の所信表明演説に対する各党代表質問が衆院本会議で始まりました。所信表明で日本学術会議への人事介入について一切説明しなかった首相は、答弁の中で任命拒否に触れました。しかし、総合的・俯瞰(ふかん)的な活動を確保するためなどと繰り返し、国民が求めている任命拒否の経過や理由の説明は拒みました。さらに、学術会議の推薦通りに任命しなかった日本学術会議法に反した行為を正当化し、任命拒否を撤回する意思はないことを表明しました。開き直りという他ありません。違法・違憲の暴挙に全く反省のない菅政権の姿勢は重大です。

勝手な基準を持ち出して

 学術会議の会員6人を任命しなかった問題で、菅首相が国会で言及したのは初めてです。ところが、6人を排除した理由については「人事に関することであり、お答えは差し控える」としか言いませんでした。国民の圧倒的多数が「説明が不十分」と世論調査で回答しているのに、その声に耳を貸そうとしない許し難い態度です。

 同時に首相は、「広い視野に立って、バランスのとれた活動」のためとか、「民間出身者や若手が少なく、出身や大学に偏りが見られる」などと、学術会議のあり方を踏まえて判断したと主張しました。とんでもない問題のすり替えであり、任命されなかった6人に対する侮辱です。6人を会員に任命したら、なぜ「バランス」が失われるのか―。そのことを一切語らず、一方的に非難の言葉を投げつける首相の姿勢は大問題です。

 学術会議の梶田隆章会長は16日、首相との面会で、現在の会員選考方式だからこそジェンダーや地域のバランスを考慮し、多様な意見をくみ上げることができる構成になっていると伝えています。その点でも首相の言い分はとても通用するものではありません。

 日本学術会議法は会員推薦の基準を「優れた研究又は業績がある科学者」(17条)と定めています。そして会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と明記しています。首相の任命は「形式的なもの」というのは、1983年の中曽根康弘元首相の国会答弁などで確定された政府解釈です。どんな理由を持ち出そうとも、菅首相の任命拒否が法律を踏みにじり、国会答弁を覆した違法行為である事実はごまかせません。

 ましてや、首相が「バランス」とか「民間」だとか勝手な基準を自分でつくって法律を無視して人事に手を突っ込んできたら、「法による支配」は崩壊し、「人による支配」の国になってしまいます。国の最高権力者が理由もなく、意に沿わない人物を排除する事態は、まさに独裁国家へとつながります。絶対に許してはなりません。

任命拒否は撤回しかない

 法律にも憲法にも反する任命拒否をあくまで「変更しない」と言い張る菅首相の強権ぶりは、安倍政権以上の危険性をいよいよ際立たせています。この政権を一日も早く終わらせることが必要です。

 憲法が基本的人権の大きな柱として保障する学問の自由への攻撃は、科学者・研究者にとどまらず、国民全体への攻撃です。

 違法・違憲の任命拒否をなんとしても撤回させるために、幅広い国民が立場の違いを超えて力を合わせることが重要です。


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