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2020年10月27日(火)

強権・無策ぶり示した所信表明

 「私が目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』です」

 菅義偉首相が所信表明演説で打ち上げたのは、新型コロナウイルス危機で行き詰まりに直面する「自己責任」を押し付け、国民の命とくらしを守るという政治の最大の責任を放棄する宣言でした。

 そもそもコロナ危機の中で、新政権発足から40日間も国会を開かず、政治所信を明らかにしてこなかったこと自体、無責任極まりない態度です。その上、所信表明演説で、菅首相自らの政治哲学を語らず、一国の宰相としての資質も疑わせるものでした。

 極めて深刻なのは、日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した問題について、一言も触れなかったことです。任命拒否は、憲法にも日本学術会議法にも違反するものであり、その説明を果たす第一義の責任は任命を拒否した首相自身にあります。

 戦前、学問への政治介入が、政府に対する異論を排除する全体主義国家への道を開きました。この反省と教訓があるからこそ、「学問の自由」が憲法に明記されたのです。

 歴史に目を閉ざす政権に未来を開くことはできません。学術会議だけでなく、広範な学者や文化人、国民が求める6人の任命拒否を撤回させるかどうかは、今後の日本の進路を左右する重大問題として、問われています。

 いま日本でも世界でも、新型コロナ、気候変動、核兵器廃絶、貧困と格差の拡大という人類的な課題の克服にむけて、どういう社会像を描いて、その実現をめざすのかが、鋭く問われています。

 所信表明演説には、これらの問題に正面から応える姿勢は見られませんでした。

 新型コロナの感染防止では、「検査能力の確保」は言うものの、決定的に重要なPCR検査には触れず、医療機関の減収補てんには言及しませんでした。雇用と事業継続でも、持続化給付金の継続は語ったものの、その他の支援策には言及せず。

 気候変動・温暖化対策も、2050年までに温室効果ガス排出のゼロを表明しましたが、世界的に問われている30年までの対策について具体策は語りませんでした。

 来年1月に発効することになった核兵器禁止条約も、貧困と格差の拡大も一切触れませんでした。

 所信表明演説が示したものは、菅首相の強権・ファッショぶりと、焦眉の課題での無策ぶりです。臨時国会は、菅政権に終止符をうち、国民の切実な願いと、深刻な実態に応える政治に転換する流れを広げる国会です。

 (国会取材団キャップ・行沢寛史)


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