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2020年10月25日(日)

主張

米のグーグル提訴

巨大IT企業の規制を強めよ

 米司法省と11州がインターネット検索最大手、グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反で連邦地裁に提訴しました。ネット検索とネット広告で他社を排除し、公正な競争を妨げているとしています。欧米では巨大IT(情報技術)企業に対する規制が強化されつつあります。IT大企業による個人情報の悪用や「優越的地位の乱用」が後を絶たない日本でも規制を強めることが重要な課題です。

市場に圧倒的な支配力

 インターネットを使って事業を展開するIT産業ではグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの巨大IT4社(GAFA)が独占的な力を持っています。検索分野の世界シェアはグーグルが9割と言われます。グーグルが圧倒的な市場支配力を使って自社の検索エンジンをスマートフォンに標準搭載させていると司法省は問題視しています。

 コロナ危機のもとで巨額の利益をあげるGAFAに米政府や議会は厳しい姿勢で臨んでいます。7月には下院の公聴会に4社のトップが呼ばれ、独禁法違反の疑いで追及を受けました。

 グーグルは全面的に争う構えです。裁判は独禁法違反について争われますが、それ以外でも個人情報の扱いなどGAFAをめぐって数々の問題が起きています。

 グーグルは検索サービスの利用者から膨大な個人情報を収集し、そのデータを活用した広告で世界中の大企業から料金を集めています。同社の売上高の8割以上が広告です。フェイスブックは90%以上が広告です。

 個人情報が金もうけの主要な手段となる一方、個人情報の流出や不正な収集、利用が頻発しています。グーグルは子どもの個人情報を保護者の同意なく違法に集めたとして2019年、米当局から1億7000万ドル(約180億円)の制裁金を科されました。フェイスブックも個人情報流出で、50億ドルの制裁金を科されました。

 欧米諸国は個人情報の流出や違法な利用を厳しい罰則で取り締まっています。欧州連合(EU)は18年に個人情報保護を抜本的に強める「一般データ保護規則(GDPR)」を施行しました。

 日本の個人情報保護は遅れています。就職情報サイトを運営するリクルートキャリア社は、学生の閲覧履歴などをもとに人工知能が推計した「内定辞退率」を本人に無断で企業に販売し、政府の個人情報保護委員会から是正勧告を受けました。同委員会の命令に違反した場合の刑罰は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。欧米に比べて軽い罰則です。

「自主性」任せでなく

 IT大企業による優越的地位の乱用も深刻です。楽天はインターネット通販サイトの出店者に対する送料負担の強制で、公正取引委員会の立ち入り検査を受けました。9月10日には公取委が、アマゾンジャパンが商品納入業者に金銭を提供させていたことを公表しました。

 4月にはGAFAなどを念頭にデジタルプラットフォーム透明化・公正化法が国会で全会一致によって可決・成立しました。規制に一歩踏み出したものの企業の「自主性」が基本です。禁止行為を明記して違反を取り締まることができる実効性あるルールにしていくことが必要です。


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