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2020年10月23日(金)

主張

IR基本方針変更

カジノ断念し法廃止へすすめ

 カジノを中核とする統合型リゾート(IR)をめぐり、菅義偉政権がIRの制度設計の細目を示す「基本方針」案の変更を発表しました(9日)。新型コロナウイルスの世界的大流行で、IRカジノは事業の可能性を失っています。その中で、菅政権が、カジノを「成長戦略の目玉」とした安倍晋三前政権の路線を引き継ぎ、あくまでカジノ開設へ突き進もうとしていることは重大です。

「9カ月延期」の賭け

 「基本方針」案変更の中心は、IR誘致自治体が国に「区域整備計画」の認定を申請する時期を当初の「2021年1月~7月」から「同10月~22年4月」へ延期したことです。

 日本に進出しようとしていた海外のカジノ企業は、新型コロナ感染拡大の影響でカジノ収益が落ち込み、財務状況を極度に悪化させています。世界最大のカジノ企業である米ラスベガス・サンズは日本からの撤退を表明し、米ウィン・リゾーツは日本事務所を閉鎖しました。

 1施設につき100億ドル(約1兆1000億円)にもなるという日本のIRへの巨額投資ができるだけの余力のあるカジノ企業はもうありません。大阪府・市、横浜市などの誘致自治体は、カジノ企業の選定手続きをストップせざるを得なくなっています。

 菅政権は、認定申請の時期を9カ月延期すれば、カジノ企業の業績が改善し、日本に戻ってくるはずだという無謀な“賭け”にでた形です。

 世界のカジノ市場では大きな構造変化が起きています。カジノ再開後も客は戻らず、ソーシャルディスタンス(社会的距離)確保のための入場制限などで大きく落ち込んだ収益力が回復する見通しはありません。

 カジノ業界は、地上型カジノからオンラインカジノ(インターネット上で仮想的に開帳する賭博)への転換を加速させています。

 IRの収益エンジンとなる巨大な地上型カジノに客を詰め込み、24時間365日、「3密」の空間で賭博漬けにするというビジネスモデルは、完全に時代遅れです。

 安倍政権はカジノ解禁推進法(16年12月)、カジノ実施法(18年7月)を強行成立させる際、地方経済活性化、雇用創出、税収増というIRの効用を盛んに宣伝しました。ギャンブル依存症、多重債務、利権をめぐる汚職・腐敗などの問題点を指摘されても、それを上まわる「公益」が社会に還元されると言い張りました。

 その大前提は、日本にIRをつくればマカオやシンガポールなみに巨額のカジノ収益が得られ、世界のカジノは今後も成長し続けるという想定でした。それが崩壊したいま、このままカジノを推進することほど無責任な態度はありません。きっぱり断念すべきです。

検証は国会の責務

 菅政権は今回の「基本方針」案変更にあたって、9カ月延期の判断に至った根拠を何も示していません。世界のカジノ市場がどのような状況にあるのかの分析を行った形跡もありません。

 日本共産党、立憲民主党など野党は今年1月、カジノ2法廃止法案を共同で提出し、継続審議となっています。国会で、国民に開かれた徹底した議論を行い、カジノ法廃止にすすむ時です。


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