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2020年10月21日(水)

きょうの潮流

 「いよいよ自分も出陣、徴兵猶予の恩典がなくなり、まさに学徒出陣の時は来た…」。77年前、1943年のきょう、「出陣学徒壮行会」が明治神宮外苑競技場で行われました。「学徒出陣」の式典です▼東京帝国大学にこの年入学した松岡欣平(きんぺい)さんは、戦没学生の手記『きけ わだつみのこえ』で、戦争の大義の肯定と否定の間で揺れる思いを綴(つづ)っています。12月には陸軍に入営し、翌年に愛知県豊橋市にあった陸軍予備士官学校に入学▼東大赤門近くにある、わだつみのこえ記念館発行の資料によれば、予備士官学校時代に『修養日誌』を残しています。上官の注意は「批判」をしたがる「学生気分」を一掃し、戦争目的の徹底に集中しています▼とくに上官が求めたのは、「淡泊」になることです。「あらゆる角度から世の中を、わが生活を政治を経済を、文学、社会をながめて綴ってみたい」といった学生時代に培った批判精神の払拭(ふっしょく)です▼松岡さんはビルマ(現ミャンマー)方面軍第33師団の連隊の見習士官として配属、45年5月末にモールメン市外で亡くなりました。無謀なインパール作戦から撤退中の戦闘のさなかでした▼豊橋の陸軍予備士官学校(第15師団司令部)の跡地には戦後、私立大学が設立されました。軍の建物が残り、筆者の学生時代には、天井の高い兵舎が学生寮として使われ、大学の自治、学問の自由をよく論じ合ったものです。多くの戦没学生たちの無念、慟哭(どうこく)を忘れず、「学問の自由」を守るたたかいに生かしたい。


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