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2020年9月28日(月)

主張

敵基地攻撃能力

日本に戦火を招く危険許すな

 菅義偉政権が、日本に向けて撃たれるミサイルの発射拠点などを直接たたく「敵基地攻撃」能力の保有について検討を進めています。重大なのは、集団的自衛権の行使を認めた安保法制=戦争法の下で、自衛隊がそうした能力を持てば、日本が攻撃を受けていないのに、同盟国である米国を守るためとして、他国を攻撃することが可能になることです。「『日本を守る』どころか、相手国による反撃を呼びおこし、日本に戦火を呼び込む」(日本共産党の志位和夫委員長、19日)ような事態を許してはなりません。

しらみつぶしにたたく

 敵基地攻撃能力の保有は、迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備断念を受け、安倍晋三前政権が検討を本格化しました。菅政権もこれを引き継ぎ、同能力保有の是非を含め「ミサイル阻止に関する新たな方針」を年末までに策定しようとしています。

 敵基地攻撃とは何か。河野太郎前防衛相は7月9日の参院外交防衛委員会で、日本共産党の井上哲士議員の質問に対し、次のような「一連のオペレーション(作戦)」だと答弁しています。

 ▽相手国の領域において、移動式ミサイル発射機の位置をリアルタイムに把握する。それとともに地下に隠蔽(いんぺい)されたミサイル基地の正確な位置を把握する▽防空用レーダーや対空ミサイルを攻撃して無力化し、相手国領空の制空権を一時的に確保する▽その上で、移動式ミサイル発射機や堅固な地下施設となっているミサイル基地を破壊し、発射能力を無力化する▽効果を把握した上で(不十分であれば)さらなる攻撃を行う。

 つまり、相手国の領域にまで攻め込んで、レーダーや対空ミサイル施設などの防空網を破壊し、ミサイル発射機の付いた移動用車両や地下のミサイル基地をしらみつぶしにたたくという意味です。

 政府はかつて「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない」(1959年3月19日、衆院内閣委、伊能繁次郎防衛庁長官)と答弁していました。敵基地攻撃能力の保有とは、他国に「攻撃的な脅威を与える」ものに他ならず、明白な憲法違反です。

 敵基地攻撃が安保法制に基づく集団的自衛権の行使と結び付くと、その危険性は一層深刻です。

 安倍前首相は、安保法制の国会審議の際、「我が国は敵基地攻撃を目的とした装備体系は保有しておらず、…集団的自衛権の行使として敵基地を攻撃することはそもそも想定していない」(15年8月21日、参院安保法制特別委など)と述べていました。では実際に日本が「敵基地攻撃を目的とした装備体系」を持てばどうなるのか。防衛省は、集団的自衛権の行使として敵基地を攻撃する可否を明らかにしていません(「東京」9月18日付)。

集団的自衛権行使として

 しかし、政府は、北朝鮮から米領グアムへのミサイル攻撃が、安保法制に基づく集団的自衛権行使の要件である「存立危機事態」に当たることがあるとしています。その場合、日本への攻撃がないのに自衛隊が米軍と一緒に敵基地を攻撃することになりかねません。

 敵基地攻撃能力保有の検討は直ちに中止し、安保法制を廃止することが必要です。


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