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2020年9月3日(木)

主張

コロナ禍の住まい

居住困難者の願いにこたえよ

 新型コロナウイルス感染拡大の影響による収入減少や失職で生活が困窮し、住まいを確保できなくなる人たちが相次いでいます。しかし、政府のいまの対策は、現行制度の一定の改善がはかられたものの、住まいの困難を抱えた人の切実な声に十分こたえていません。住居の保障は、感染の抑止にとっても不可欠の課題です。

失業と収入減の深刻化で

 厚生労働省のまとめではコロナ関連の解雇や雇い止めが、非正規雇用で働く人を中心に5万人を超えました。仕事を失ったとたん会社の寮に住めなくなる場合が少なくありません。そんなケースが2008年のリーマン・ショック後に続発したため、住居確保給付金制度がつくられました。しかし対象者は、▽65歳未満で離職から2年以内▽常用雇用の意欲があり、ハローワークへの求職申込者―などに限定されていました。

 コロナ危機の広がりの中、住まいの貧困解決に取り組む団体が改善を求めたことで、「休業等により収入が減少し、住居を失うおそれのある方」も対象に加えられ、「65歳未満」や「求職の申し込み」などの条件は外されました。学生にも適用されました。

 その結果、4~6月の支給決定件数は6万2000件を超えました。リーマン後の1年分を上回る件数と報じられています。コロナ禍で仕事と住まいを同時になくし、苦境に立つ人がいかに多いかを浮き彫りにしています。

 同制度はまだ不十分で、賃貸住宅を借りる際の敷金・礼金など初期費用についての支援もありません。生活困窮者支援の民間の基金が、これらの費用を提供する動きも出ています。政府は、一層の制度改善を検討すべきです。

 コロナ禍で、公的住宅の家賃滞納も増加しています。国土交通省は自治体と地方の住宅供給公社に「収入が減少し、やむを得ず家賃が支払えない状況にある者に対しても、家賃減免の適用等」を要請しました。ところが、UR都市機構に対しては、法律(都市再生機構法)に減免条項があるにもかかわらず、その活用を求めるのでなく、「分割支払いの協議」という要請にとどまっています。家賃の減免を求めるUR住宅居住者の願いに背を向けるものです。

 URは家賃を3カ月滞納すると明け渡しを求め、強制退去をさせています。16年度は約4300件、17年度は約3800件、18年度は約3000件にのぼっています。こんな機械的な対応をとってはなりません。公的住宅で、家賃の減免や徴収猶予の制度が積極的に活用できるようにするとともに、滞納者の“追い出し”を禁止することが重要になっています。

長期的な視点に立って

 収入減で住宅ローンが払えなくなった人の声にも政府はまともにこたえていません。「市場重視」「住宅は自己責任」を基本にしている現在の政策では、安心の住宅を国民に保障できないことを示しています。

 コロナ禍は、日本の住宅政策の脆弱(ぜいじゃく)性と貧困な実態を改めて露呈させました。緊急対応が必要な政策を進めるとともに、すでにヨーロッパなど諸外国で実施されている家賃補助制度の創設、公的賃貸住宅の供給など長期的視点に立った住宅政策を国として実行することが求められます。


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