しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年9月2日(水)

主張

アベノミクス破綻

貧困・格差広げた失政の清算を

 退陣する安倍晋三首相が、経済再生の目玉政策に掲げてきたのが「アベノミクス」です。しかし、首相在任中の7年8カ月、日本経済は上向くどころか低迷を続け、貧困と格差の拡大は深刻になりました。さらに2回にわたる消費税の増税と新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本経済は危機的な落ち込みに直面しています。いま必要なのは破綻が明らかな「アベノミクス」ときっぱり決別し、国民生活を最優先する経済政策へ転換することです。

増えた「働く貧困層」

 安倍首相が2012年12月末の政権復帰直後に打ち出した「アベノミクス」は、大規模な金融緩和、積極的な財政出動、規制緩和による「成長戦略」という「3本の矢」が柱でした。13年3月には日銀総裁を黒田東彦(はるひこ)氏に交代させました。「異次元」の金融緩和を実行させるためです。日銀が市中に大量に資金を供給し、消費者物価を引き上げれば、日本経済が「デフレ」から脱却し、「好循環」するというシナリオにもとづくものです。

 金融緩和で株価は2倍に上昇しました。しかし、大企業や大資産家の利益は増えても、国民の雇用や消費は停滞が続きます。大もうけした大企業を中心に、内部留保は500兆円近くにも膨らみました。一方、実質賃金指数(月平均)は15年を100とすると12年は104・5でしたが20年1~6月では93・4に低下しました。労働者全体に占める非正規労働者の割合も上昇しました。超高額所得者が増加する一方、年収が200万円にも満たない「ワーキングプア」(働く貧困層)が増えるなど、貧困と格差の拡大が鮮明です。

 国民の暮らしの改善が進まず、批判が強まると、安倍首相は「アベノミクス」の看板に、名目GDP(国内総生産)600兆円、出生率1・8、介護離職ゼロという「新3本の矢」を加えました。しかしその新しい目標は、どれも達成できません。失政は隠しようがありません。大企業のもうけを優先させる政策では、経済は立ち行きません。

 日本経済を決定的に悪化させたのは、14年4月と昨年10月の2度にわたる消費税の増税です。大企業や大資産家向けの減税などの穴埋めのための増税は、もともと弱かった国民の消費を痛めつけ、中小零細企業を傷つけました。家計の消費支出は増税前に比べ、大幅に減少します。

 安倍首相が政権復帰以来最長の拡大が続いていると自慢していた景気も、18年10月で終わり、後退局面に入っていたことを政府も認めました。そのさなかに2度目の消費税増税を強行した責任は、厳しく問われなければなりません。

暮らし応援政治へ転換を

 消費税増税の悪影響が続く中で、新型コロナの感染拡大が追い打ちをかけ、今年4~6月期のGDPは年率で前期に比べ3割近い大幅な落ち込みでした。「アベノミクス」の行き詰まりは、首相が先月28日の辞任表明会見で一言も「アベノミクス」と言わなかったことからも明白です。

 コロナ禍の中、経済を再生するために、何より必要なのは暮らしを応援することです。消費税を増税前の5%に戻す減税は急務です。国民生活本位の経済政策への転換を求めて、力を合わせることが重要です。


pageup