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2020年8月6日(木)

「核兵器のない世界」にむけてどうやって進むか

NGO団体主催討論会 志位委員長の発言

 日本共産党の志位和夫委員長が5日、広島市で開かれた討論会「被爆75年、核兵器廃絶へ日本はいま何をすべきか」(主催・核兵器廃絶日本NGO連絡会)で発言した内容は以下の通りです。


写真

(写真)発言する志位和夫委員長=5日、広島市

核兵器予算を削り、医療をはじめケア、暮らし、途上国支援にあてよ

 核兵器廃絶日本NGO連絡会のみなさんが、このような討論会を企画していただいたことに心から感謝します。中満泉国連事務次長の参加を歓迎します。

 私たちは、広島・長崎の被爆75周年のこの夏を、新型コロナ・パンデミックのもとで迎えました。パンデミックが明らかにしたものの一つは、軍事力、とりわけ核兵器が、ウイルスとたたかううえで、何の意味ももたないということではないでしょうか。

 いま世界の核兵器保有9カ国の核兵器予算は、年間729億ドル=約7・6兆円といわれています。これだけのお金があれば医師・看護師など医療従事者を100万人以上増やすことができます。どちらにいま貴重な税金を投入すべきかは明らかではないでしょうか。

 軍事費、とりわけ核兵器予算を削り、医療をはじめとするケアに、暮らしに、途上国支援に、一人ひとりの命と尊厳を守るためにあてることを、まず強く求めたいと思います。

核兵器禁止条約の一日も早い発効を――草の根からの運動に全力をつくす

 被爆75周年に「核兵器のない世界」にむけてどうやって進むか。

 私は、国際社会に二つの努力が求められていると思います。

 一つは、核兵器禁止条約を一日も早く発効させることです。

 批准国はすでに40カ国に達し、あと10カ国で条約が発効します。核兵器の非人道性を厳しく告発し、この兵器を違法化し、「悪の烙印(らくいん)」をおした条約が発効するならば、核兵器保有国を、政治的・道義的に拘束し、追い詰め、核兵器廃絶に進むうえで、大きな力を発揮することは間違いありません。

 私も、2017年、この条約を採択した国連会議に参加して、人類にとって「宝物」のような条約を生み出した力が、世界の多くの国々の諸政府とともに、被爆者を先頭とした市民社会にあったことを深く実感しました。この条約を発効させ、発展させるために、「ヒバクシャ国際署名」をはじめ、草の根からの運動に全力をつくす決意を申し上げたいと思います。

NPT再検討会議――核保有国に既存の誓約を履行し、さらに前進することを迫ろう

 いま一つは、来年1月に予定されるNPT(核不拡散条約)再検討会議で前進をかちとることです。

 核兵器禁止条約を支持する17の国が5月、「NPT50周年を記念する共同コミュニケ」を発表しています。そこでは、「核兵器国に対し、NPTにおける義務の履行を加速させるために、既存の誓約を履行し、その上にさらに前進することを要請」しています。重要な動きだと思います。

 2000年のNPT再検討会議では、核保有国に「自国核兵器の完全廃絶」を約束させた最終文書を全会一致で採択しています。2010年のNPT再検討会議では、「核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別の取り組みを行う」ことを全会一致で最終文書に盛り込みました。

 来年1月のNPT再検討会議において、核保有国に対し、自らも賛成したこれらの国際的約束を履行し、「その上にさらに前進する」ことを強く迫っていくことが重要だと思います。

日本政府に、核兵器禁止条約にサインすることを真剣に検討することを強く求める

 こうした中で、唯一の戦争被爆国・日本の政府が、核兵器禁止条約に背を向けていることは、先ほどベアトリス・フィンICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)事務局長が「恥」という言葉を使いましたが、恥ずかしいことではないでしょうか。

 2017年の核兵器禁止条約の国連会議に参加したときに、印象深い出来事がありました。会議場で、不在だった日本政府席に行きますと、大きな折り鶴が置いてあり、そこには「あなたがここにいてくれたなら」と書かれていました。この折り鶴はICANのメンバーがつくったとのことでしたが、あの国連会議に参加した人々の共通の思いだったと思います。

 私は、被爆75周年にあたって、日本政府が、従来の態度をあらため、核兵器禁止条約にサインすること真剣に検討することを強く求めるものです。

 また、政府が、「黒い雨」訴訟での広島地裁の判決を重く受け止め、控訴せず、ただちに原告の救済措置を取ることを求めるものです。

討論をふまえての発言――「核兵器の非人道性」を訴えながら、核抑止力論をとなえるのは大きな矛盾

 日本政府の核兵器禁止条約に対する態度は、これに参加すると「核抑止力の正当性が損なわれる」ということだと思います。

 しかし、核抑止力とは一体何かということを突き詰めて考えてみますと、ジョージ・シュルツ(元米国務長官)氏が言ったように、いざという時には核兵器を使用する、いざという時には核のボタンを押しますよ、というのが抑止力の本質だと思います。すなわち、いざという時には、広島・長崎のような非人道的な惨禍が許されるのだという立場です。

 日本政府がともかくも「核兵器の非人道性」を訴えるなら、そういう政府が、こうした抑止力論にいつまでも縛られ続けていいのか、そこには大きな矛盾があるのではないのか。これは考えるべき大きな問題だということを最後に申し上げておきます。


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