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2020年8月6日(木)

主張

広島・長崎被爆75年

被爆者の悲願・苦難受け止めよ

 1945年8月、アメリカ軍は広島(6日)と長崎(9日)に原爆を投下しました。二つの都市は一瞬で破壊され、その年末までに20万人以上の命が奪われました。かろうじて生き延びた人は健康被害などの苦しみがいまも続きます。自らの体験を語り、核兵器廃絶を訴えてきた被爆者の高齢化は進み、平均年齢は83歳をこえました。被爆75年の節目に、「命あるうちに核兵器廃絶を」との被爆者の悲痛な願いは一層重みを増しています。

世界を動かす力となって

 「核兵器禁止条約という歴史的快挙は、被爆者と核実験被害者の長年にわたる、かけがえのない訴えなしには実現しなかったでしょう」。国際会議(2日)で開幕した原水爆禁止2020年世界大会に、アイルランドのヒギンズ大統領が寄せたメッセージの一節です。

 17年に核兵器禁止条約を成立させた国際的潮流は前進しつつあり、年内発効も見通せるようになっています。そうなれば核兵器は、法的に違法化され、廃絶をめざす流れは新たな段階に入ります。国際政治を動かしている被爆者の力は極めて大きなものがあります。

 日本でも世界でも若い世代を中心に、核軍拡を問い直し、被爆者の証言に耳を傾け、受け継ごうとする機運が高まっています。多数の人が原爆投下は必要だったとしてきたアメリカでも、若者(18~34歳)の7割が「核兵器は必要ない」と答えました(NHK調査・3日放送)。同調査では、日本でも約7割の若者が「原爆のことをもっと知りたい」としています。被爆者を先頭に、市民社会が諸国政府との共同を発展させるなら、「核兵器のない世界」への道が開かれることは明らかです。

 いま、被爆者が憤りを募らせているのが、唯一の戦争被爆国である日本政府が、核兵器廃絶の願いに逆らい続けていることです。アメリカの「核の傘」に依存する安倍晋三政権は、核兵器禁止条約への参加を拒む姿勢を変えません。

 しかも、安倍政権には被爆者の苦難に寄り添う姿勢もありません。被爆者は、地獄のような体験をへた後も、後遺症と差別、生活と健康への不安に苦しんできました。しかし、日本政府は長年にわたって、被爆の実態を過小評価し、被爆者が求める国家補償に背を向けてきました。その根本にあるのも、アメリカの核戦略に追随し、核兵器が引き起こす非人道的な被害を直視しようとしないからです。

 「黒い雨」訴訟の広島地裁判決(7月29日)は、被爆者の被害実態にそくして、内部被ばくの影響も念頭においた援護策を国に迫ったものでした。一方的な線引きで、多くの被爆者を援護の対象から外してきた日本政府のこれまでのやり方が根本から問われます。

被爆国政府にふさわしく

 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)は、原爆症認定行政の抜本的改善とともに、被爆者援護法改正による原爆被害への国家補償の実現を求めています。政府はこれらを真摯(しんし)に受け止めて、その実現をはかるべきです。

 被爆者が求めているのは、経済的補償だけではありません。日本政府が被爆国にふさわしい役割を国内外で果たすことです。そのために新しい政治が必要です。市民と野党の共闘を発展させ、被爆者の願いにこたえる政治を一日も早く実現することが求められます。


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