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2020年7月31日(金)

主張

「黒い雨」勝訴判決

線引きせずに幅広い救済急げ

 原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」を浴び健康被害を受けたのに国の援護対象外にされた広島県内の84人が、県と市に被爆者健康手帳の交付申請が却下された処分の取り消しを求めた訴訟で、広島地裁は原告全員の訴えを認めた全面勝訴判決を出しました。国が決めた「黒い雨」の援護対象区域の線引きを否定し、区域外で被害を受けた人を被爆者援護法の定める被爆者と認めたことは画期的です。被爆者を幅広く救済する立場に立った判決に、原告は「英断」と声を上げました。国は被爆者援護行政を根本から見直すべきです。

区域外も被爆者と認定

 「黒い雨」被害をめぐる司法の判断は初めてです。

 これまで国は、1945年の原爆投下直後に行われた不十分な調査で、「黒い雨」の援護対象区域を線引きしてきました。区域の拡大・見直しを求める声は絶えなかったのに、国は姿勢を変えようとせず、住民の原爆被害の訴えを退けてきました。これに対し、今回の判決は、「原爆が投下された際やその後において黒い雨を直接浴びたり、降雨域で生活したりして曝露(ばくろ)した者」は、国が指定した区域外でも「被爆者援護の対象に該当する」と述べました。国が線引きした誤りが明確になりました。

 判決が、「黒い雨」を浴びたという陳述内容に不合理な点はなく、住民たちの診断書などから「原爆の影響との関連が想定される」としたことは重いものがあります。

 これまで国は、「科学的根拠」「放射線起因性」を盾に、被爆者の援護・救済の対象を狭く抑え込む姿勢を崩しませんでした。これに対し被爆者は、健康被害をはじめ、原爆がもたらした非人間的な被害実態を訴え続け、国の被爆者援護行政をただしてきました。

 国が指定した地域の外で「黒い雨」や灰を浴びた人が病気に苦しみ、亡くなっていったことは動かせない事実です。今回の判決は、国のこれまでの姿勢を否定し、健康被害を訴える被爆者の声と実態にもとづき、広く救済すべきと国に迫ったものです。国の被爆者行政の根本が厳しく問われます。

 原爆被害を過小に評価する国の態度の大本には、“戦争被害は国民が共通して耐え忍ぶ”という「受忍論」があります。原爆被害の「特別の犠牲」を強調してある程度の援護をする一方で、他の戦争被害の補償拡大につながらないように、原爆被害に対する救済範囲を恣意(しい)的に狭めてきたのです。

 今回の判決はそのような考えをとりませんでした。「身体に原子爆弾の放射能の影響をうけるような事情の下にあった者」を広く救済するという被爆者援護法本来の理念を踏まえた姿勢は重要です。

 広島県と市は、独自調査にもとづき、対象地域の拡大を国に訴えてきました。県、市は控訴せず、国とともに、ただちに原告の救済措置を取るべきです。対象区域の拡大と大幅見直しも早急に行うことが必要です。

国は真剣に応えるときだ

 広島・長崎の被爆から75年です。被爆者は高齢化し、コロナ禍のもとで新たな苦労も重ねています。国は、被爆者に訴訟を強いる態度をやめるべきです。国家補償の立場による、被爆者援護行政の抜本的改善が不可欠です。被爆者の悲願に真剣に応える時です。


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