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2020年7月29日(水)

きょうの潮流

 解放直後のことでした。ソウル駅の倉庫から膨大な量の草稿が見つかりました。それは苛烈な弾圧下で民族の言語を守ろうとした人たちの結実でもありました▼「内鮮一体」の名のもとで朝鮮民族を支配した戦前の日本。皇民化は名前や言葉にもおよび、朝鮮語の辞典をつくろうとした学会も取り締まりの対象になりました。逮捕され拷問されながらも失わなかった民族の誇り。彼らの願いは後世に引き継がれました▼そのたたかいを描いた韓国映画「マルモイ」が日本で上映されています。タイトルの意味は副題にもある「ことばあつめ」。初めて試みられた朝鮮語辞典の名称でもあるといいます。女性監督のオム・ユナさんは史実をもとに熱く、笑いと涙を誘いながら▼ハングル文字は15世紀半ばに世宗(セジョン)王が学者を集め、つくらせたとされています。「訓民正音」の名で公布し、庶民に普及をはかりました(『朝鮮史』)。朝鮮の人びとにとって、ハングルは民族共通の証しです▼「言葉は民族の精神を盛った器」。映画にも出てくるセリフは、抑圧のなかでも、かけがえのない存在をつないだたたかいの意義を。こうした人たちが歴史にいた事実とともに伝えます。戦後、朝鮮語大辞典は完成に至りました▼言葉を大切にする思いは、どの民族も同じでしょう。ひるがえって、いまの日本はどうか。権力者たちの言葉の軽さ、空疎さが取りざたされています。文化や社会の土台をゆるがす偽りの言葉や意味の空洞化。歴史に無反省な人たちによって。


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