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2020年7月22日(水)

主張

「危機便乗」改憲

世論に逆らう悪あがきやめよ

 自民党総裁任期中(来年秋まで)の改憲実現に執念を燃やす安倍晋三首相の発言が続いています。先週末には麻生太郎副総理の派閥の政治資金パーティーにビデオメッセージを寄せ、「立党以来の悲願である憲法改正への挑戦、その歩みを止めるわけにはいかない」と主張しました。自らが描く改憲スケジュールが思い通りに進んでいないことへの焦りでもあります。国民世論に逆らう悪あがきは、もうやめるべきです。

火事場泥棒的な策動

 安倍首相の改憲の最大の狙いは9条です。2017年5月に9条に自衛隊を書き込むなどの明文改憲案を示し、20年から施行すると、議論をせき立ててきました。首相の改憲構想はその後自民党内で「条文イメージ(たたき台素案)」として固まったものの、以来3年余り、改憲案を審議する国会の憲法審査会への提示は5国会連続でできていません。

 安倍首相や自民党内から最近相次いでいるのは、新型コロナウイルスの感染拡大を口実に、憲法に緊急事態条項を盛り込む改憲論です。首相がメッセージを寄せたパーティーでも、麻生副総理がコロナ感染を持ち出して「果たして今の憲法が緊急事態に対応できるのか」と述べ、緊急事態条項の創設は「もっとも急を要するテーマだ」と主張しました。

 安倍首相は通常国会閉幕後の記者会見(6月18日)で「総裁任期の間に憲法改正を成し遂げていきたい。その決意と思いに、いまだ変わりはありません」と発言しました。その際もコロナと結びつけ、緊急事態条項を含む改憲議論の促進を呼びかけました。コロナ危機を最大限利用し、改憲の突破口にしようという意図は明白です。

 コロナは改憲の口実にはなりません。コロナで国民が苦しめられているのは、憲法に緊急事態条項がないからではなく、医療・検査体制の強化がなかなか進まないことや、補償のない休業要請など、安倍政権の失政が引き起こしたものです。憲法の緊急事態条項は、時の政府に強大な権限を集中し、人権制限も可能にする危険極まりないものです。日本は人権抑圧に使われた戦前への反省から、憲法には盛り込みませんでした。

 コロナ感染が再拡大の様相を見せているときに、意見の分かれる改憲を打ち出して国民に分断をもたらす首相らの姿勢は重大です。コロナのどさくさにまぎれた火事場泥棒的な改憲策動は許されません。いまなにより急ぐべきは感染拡大防止や暮らしと経済の立て直しです。憲法は変えるのではなく、生かして、憲法が保障する生存権や財産権を守るべきです。

国民の力で改憲阻もう

 明文改憲が首相の思い通り進まないのは、主権者である国民が、改憲を望んでいないからです。時事通信が6月下旬に配信した「憲法に関する世論調査」では、憲法9条を「改正しない方がよい」が69・0%で、「改正する方がよい」の29・9%を大きく上回りました。主権者の意思は明白です。

 憲法は主権者が権力を縛るものです。憲法の尊重擁護義務がある首相が改憲の旗を振り続けるというのはそれ自体、憲法破壊です。

 行き詰まっている改憲を進めるため、コロナまで口実にする安倍政権の策動を、国民の力で阻止することが重要です。


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