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2020年7月21日(火)

主張

石炭火力政府方針

世界の流れから取り残される

 二酸化炭素(CO2)を多く排出する石炭火力発電所について、安倍晋三政権が非効率な発電所の削減を具体的に進めるため、経済産業省内の調査会で議論を開始しました。石炭火力に依存する日本政府への国内外の批判を受けた動きです。しかし、「高効率」の石炭火力は温存・推進するとし、基本的立場は変えません。国連環境計画(UNEP)は、日本に石炭火力発電所の建設をやめ、既存施設を停止する日程表をつくるよう勧告しているのに、それを無視する政府の姿勢は重大です。パリ協定が掲げる「脱炭素」の流れから日本はますます取り残されます。

「高効率」は温存・推進

 非効率な石炭火力の削減に向けた方針は3日、梶山弘志経産相が表明しました。エネルギー効率の悪い発電所を2030年までに「フェードアウト(段階的に縮小)」する新たな仕組みをつくるとしています。13日から始まった経産省の調査会では、新たな規制措置、非効率発電所の「早期退出を誘導」する仕組みづくりなどが課題に挙げられました。国内の石炭火力140基のうち非効率とされるのは114基です。経産省は、非効率の定義や地域事情も検討するとしており、メディアで報じられている「100基削減」につながる保障はありません。

 もともと非効率石炭火力の「フェードアウト」方針は、18年に安倍内閣が閣議決定したエネルギー基本計画に明記されています。その方針の具体化をようやく始めたのが実態です。基本計画は、石炭火力を「ベースロード電源」と位置づけ、30年の全発電量に占める割合を26%としています。非効率の発電所の基数が減っても、発電量割合の減少はそれほど大きくないといわれます。

 高効率の石炭火力は、稼働を継続させ、更新を含めて新たな建設も進める方針です。高効率といっても、CO2排出量は、天然ガスの火力発電所と比べると2倍にのぼります。

 梶山経産相は「エネルギーミックス」を強調し、「火力も有用な電源」と繰り返します。原発再稼働を進めることも必要という立場です。エネルギー基本計画では原発の発電量比率を20~22%にすることを目標にしています。石炭火力や原発にいつまでも固執していては、再生可能エネルギーを抜本的に増やすことはできません。

 欧州では、石炭火力の廃止の年限を決めた国が相次いでいます。フランスは22年、イギリスは25年です。石炭産業を国内に抱えるドイツでさえ38年と区切っています。日本政府は根本から姿勢を改めるべきです。現行のエネルギー基本計画は撤廃し、石炭火力全廃を掲げるとともに、再エネの飛躍的な導入・普及に全力をあげることが求められます。

輸出の公的支援やめよ

 安倍政権が「インフラ海外展開に関する新戦略の骨子」(9日決定)に盛り込んだ、石炭火力輸出への公的支援の「新基準」も従来の枠組みを維持しました。

 輸出相手国の脱炭素化方針を確認できない場合、公的支援をしないとしますが、抜け穴だらけです。主要7カ国で唯一、石炭火力の輸出支援をしている国としての批判は免れません。公的支援をきっぱりやめることが国際社会への責任です。


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